8話
スーパーで買い物を済ませ、家へと向かっている翼だが、少し先の信号で、信号待ちをしている佐々木がいた。
「そりゃそうかー。」
タイミング的には、弁当とお菓子で済ませた翼と、買い物途中でレジへ行った佐々木、大体スーパーから出る時間は一緒だった。
「まぁ、佐々木さんがいたからって僕には関係ないしな。」
そう言って家への帰り道を歩いていた翼だが、5分10分と歩けど、視界から佐々木が消えない。
「スーパーから家まで15分くらいなんだけど、こんなこともあるんだなー」
ぼーと考えながら、歩いていると家に着いたが、アパートの隣の部屋のドアの前に佐々木が立っていた。
「あなた・・・!」
そうなるのも当然だ、スーパーであの対応だったのだ、家の前だとこうもなる。
「やぁ、奇遇だね。もしかして、ここに住んでいるの?」
そんな事を翼が聞くものだから、佐々木の表情はすごいことになっていた。
もう、諦めがついたのか佐々木はため息を吐きながら口を開く。
「そうよ、意外だった?」
開きなった態度で言われたが、翼はいまいち状況を理解できなかった。
「別に意外じゃないよ、僕は上京してきたからだし。もしかして、佐々木さんも上京してきたの?」
「桜でいいわよ。苗字で呼ばれるの好きじゃないの。私は、生まれも育ちも東京だけど、色々あって今はここに住んでるの。」
急に名前呼びを許可され驚いている翼だったが、めんどくさそうな事情がありそうな雰囲気だったので、深堀はしないと決めた翼だった。
「ちなみに今日、スーパーで人参くらいしかカゴに入ってなかったけど、今日の晩御飯大丈夫?」
「そんなのあなたに言われなくても大丈夫よ。あなたの方こそ随分と少ない荷物だけど?」
「まぁ、色々ありまして。土日で買い込めばいいかなって。」
「ふーん。そう。ちなみに日曜なら、駅側のスーパーが一番安いわよ。」
「そうなの!ありがとう、桜さん!」
ふんっと鼻息を微かに出しながら、佐々木桜こと桜は自宅へと入っていった。