32話
福井京子の誘いから、約30分がたっただろうか。見学に来た生徒たちがポツポツと帰り始める。
すでに残っている生徒は最初の半分もいないが、翼もまだ帰ってはいなかった。
「どう?少しだけ弓触ってみる?」
と、女性の先輩の一言に暇を持て余していた見学者たちは目を輝かせた。射場から少し離れたところに、台の上に巻いた藁が乗っている場所があった。
「これは見た通り、巻藁って言います。主にアップだったり射型の確認に使うものになります。後輩くんたちがもし、入部してくれたらしばらくは巻藁が練習相手になるからー。」
物腰が柔らかく、一年生たちも食い入るように話を聞いている。
「じゃあ早速、弓触ってみようか。まずは君からいってみよー。」
一番最初に指名されたのは翼だった。先輩から弓を受け取り、持ってみると長さの割に軽く、本気を出せば折れそうな感触だった。
「うちが、支えるから、引いてみようか。」
「え、でもどうやって引くんですか?」
「君が思うまま引いてごらん。体験なんだし。」
言われるがまま、引いてみる。翼が弓を引く姿は、アーチェリーみたいな感じだった。それを見た先輩は、笑顔ながらも怪我をさせないように真剣だった。
「いいねー。じゃあ交代しようか。」
代わる代わる見学者たちが弓を触っていく。各々の感想はバラバラだが、『意外と楽しそう』や『引くのに力がいる』といった感想だった。
「春ー。そろそろ練習終わるぞー。」
「うん。佑馬くんわかったー。」
春と呼ばれた先輩は一年生たちにごめんね。といい、射場へと戻っていった。




