25話
気まずい空気が一生続くと思っていたが、そこに救いのチャイムが鳴った。入学式と同じように、山形先生がチャイムと同時に教室に入ってきた。
「みんなおはよう。全員遅刻しないで来て偉いな。よし、朝のHRを始めるぞ。」
山形先生が朝のHRで今日の予定を生徒たちに伝える。今日は授業が無く、校内案内やオリエンテーションがメインになるようだ。
「こんな感じが今日の予定だ。授業は明日から始まるから忘れないように。後、時間割はメールで送るから各自で確認しておくように。以上、朝のHRを終わる。」
午前中のプログラムをこなし、待ちわびた昼休みになったが、翼は桜から弁当を受け取っていないことに気がついた。
「うわー。どうしよう。」
弁当を取りに、桜がいるA組に行っていいものかと悩んでいると、教室の入口に桜が弁当を持って待っていた。
それを見た翼はガタッと椅子から立ち上がり、桜の方へ向かった。
「ありがとう、桜。朝、弁当もらい忘れてた。」
「私も私忘れていたから大丈夫よ。はい、これ。」
そう言い、桜は翼に弁当を手渡す。翼は桜から弁当を受け取ると同時に、すぐ近くの席に座っている奨の方をチラッと確認した。
どうやら、一連の流れを見ていたらしく、桜の姿が視界から消えたタイミングで奨はこれでもかというニヤついた顔で翼を引き止めた。
「これは説明してもらわないといけないですねー。」
「・・・後でな。」
「そんな事言わずに、ここ座れよ。石井は学食で食べるっで言ってたからさ。」
奨の強引な誘いを断りきれず、奨の後ろの席に座る。それと同時に弁当と一緒に180度体を回転させ、翼と向かい合わせた。
「んで、なんで佐々木さんから弁当もらったんだ?」
「これには深い事情がありまして。その、説明すると長くなるからまた今度でもいいかな?」
とりあえず後回しにしようとした翼に、奨は腕を組みながら少し考えた後に「いいぜ。」と、一言返事をした。まるでギャルゲーの親友枠みたいと思った翼だった。
「それより、早く開けようぜ。入学2日目で手作り弁当をなんて、もう一生お目にかかれないしな!」
からかい半分の奨の言葉に促されてではないが、翼もお腹が減ってたため早く開けたい気持ちは一緒だった。
2段の弁当箱を開けるとそこには、きれいに並べられたおかずが現れた。
「これが高校生が作る弁当かよ・・・。」
奨は弁当の完成度に驚いていたが、翼も声には出さなかったが驚いていた。
そこに並んでいたおかずたちは、けして珍しい物はなかったが、一つ一つが丁寧に作られていて、まるで出来立ての様な見た目をしていた。
驚きと同時に木曜日からの担当である翼は、ハードルに上がり方に震えていた。




