15話
翼と桜は二人が住んでいるアパートに到着した。
「私の家で話しましょうか。」
桜の提案に翼は無言で従う。
「・・・おじゃまします。」
翼は低いトーンで最低限の礼儀を済ます。
「とりあえず、座ってて。」
そう言い、桜は飲み物を入れるためにキッチンへ向かった。
「どうぞ。」
「ありがとう。それで、なんで桜と付き合わなければならないの?」
桜から渡されたマグカップを眺めながら桜に問いかける。
「実は私ね、・・・・・・・・・・・・・・。」
どのくらい時間が経っただろうか。部屋の中は置き時計の針が進む音だけが流れる。そして、桜の『理由』を聞き、翼の中で消化した。翼自身納得はしていないが、状況的に納得せざるおえないという感情が芽生えた。
「・・・わかった。」
長い沈黙が終わり、翼が口を開いた。
「でも、僕も条件がある。」
「いいわよ。」
翼も自分の事情を桜に話した。それを聞いた桜は一見、何事もないように装っているが、少しだけ手が震えていと言うことが、桜が両手で持っているマグカップの中身が証明している。
「あなたも私も似たもの同士ね。」
自虐まじりの言葉に、翼も桜も苦笑いを浮かべていた。
「それで、これからどうする?お互いの重い事情を共有しあった訳わけだけど。てか、付き合っているふりって具体的にどうするんだ?漫画とかアニメみたいな感じでいいのか?」
落ち着いたところで当然の疑問が出でくる翼だったが、桜は呆れた顔をしている。
「普段通りでいいのよ。特別なことなんて必要じゃないんだから。」
「まぁそうだけど。福井さんはどうするのさ。」
「京子はいいのよ。」
「カフェから出る時、すごい顔してたけど。」
「京子はいつもあんな感じよ。だから放っておいていいの。月曜日に学校であっても何もしてこないわよ。学校ではね。」
不敵な笑みを浮かべる桜だが、翼としては何をされるかわからない分怖い。
「ついでだから福井さんとの関係も教えてよ。」
「ただの腐れ縁よ。」
桜は、マグカップの縁を親指で拭きながら短く答えた。




