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13話

 桜に言われるがまま桜の家を出る。


 「土曜の朝からどこに行くの?」


 急な外出に戸惑っている翼は、桜の一歩後について歩いていく。


 「今日、行きたいところがあるのよ。」


 「学校の人に見られるかもよ?」


 「見られて困ることなんてないじゃない。付き合っているわけでもないし。」


 「そうだけど、桜は昨日、代表挨拶でみんなの前で話しているじゃん。」


 「関係ないわ。」


 そう桜は言うと、早く歩けと言わんばかりに歩く速度を早めた。


 「ここよ。」


 そう言うと、桜は住宅街の中にある喫茶店を指さした。


 「なかなかいい所だね。」


 「でしょ。」


 そう言いつつ、桜は喫茶店のドアを開けた。


 「いらっしゃいませー。」


 店内に入ると、若い女性が出迎えてくれた。


 「桜、いらっしゃいー。と、あー君前の席の東山君?だっけ?昨日ぶりー。」


 「おはよう。福井さん。ここでバイトしてるの?」


 福井京子、翼の後ろの席の女性である。


 「てかなんで、桜と東山くんの二人で来てるの?」


 「色々あってね。」


 桜は福井さんの質問に対し、躱すように席に座る。


 きちんと答えてもらえなかった福井さんは、少し顔を膨らませながら、翼に鋭い視線をむける。


 「まぁ、桜がそゆことちゃんと答えてくれないもんね。」


 「あら、なんのことかしら?」


 「はいはい、それでご注文は?」


 なんだか過去に色々あったような感じがして、翼は少し居心地が悪かった。


 「私はホットコーヒー。あなたは?」


 「えーと。それじゃあ僕も同じので。」


 「はーい。父さん、ホットコーヒー二つー。」


 福井さんは、少し奥のキッチンにいるであろう父親向かってオーダーと通した。


 「桜、なんでここに来たかったの?」


 福井さんに聞こえないように小さな声で桜に話しかける。


 その問いに桜は堂々と答える。


 「私、土曜日はここに寄るのよ。」


 「それだけ?」


 「それだけよ。」


 翼は、昨日から佐々木桜という女性に振り回されてばかりで、頭の整理が追いついていない。


 「コーヒー二つお待たせ。」


 頭の整理をしていると、福井さんが慣れた手つきで、テーブルのコーヒーを置いた。


 「東山くん、ミルクと砂糖は?」


 「大丈夫。どっちもいらないよ。」


 「お、ブラックですかー大人だねー。」


 軽くからかいながら福井さんはキッチンへと歩いていった。


 桜はコーヒーを一口飲み、翼にある提案をした。


 「あなたに提案があるわ。私と仮でいいから付き合って欲しいの。」


 「は?」


 絶叫アトラクションもビックリな提案に、翼の脳は理解が完全に追いついていなかった。


 「なんで急にそんな話に?」


 「別に、付き合うといっても真剣にじゃないわ。ただの仮の彼氏役をやってもらいたいの。数ヶ月の間だけね。」


 「私が、一人暮らししている理由の一つでもあるわ。」


 「いや、でも・・・」


 「なに?もう付き合っている人でもいるの?」


「いないけど。」


 「なら、いいじゃない。」


 意味がわからない。これが翼の今の正直な感想だ。


 急展開にまたしても頭の整理をしていると、桜がキッチンに向かって少し大きな声で福井さんを呼んだ。


 「京子、今から東山翼君とお付き合いを始めたから。」


 「え、ちょ、僕なにも返事してないけど。」


 翼の返事を聞かずに福井さんに謎の宣言をすると、テーブルの上にお金を置くと桜は、翼の手を引いた。


 「え?え?」


 困惑しながらドアへ向かっている中、ふいに福井さんの顔を見るとそこには、今にも殴りかかってきそうな顔をしている福井京子の姿があった。

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