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桜の空の下で  作者: やまはぬん


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118/147

118話

 その後、桜は自宅へと戻り、晩御飯の支度を始めた。自分の中の感情を楓に吐き出したことで今日はとても気分がいい。それを証明するかのごとく、鼻歌交じりに料理をしている。


 『今から帰るね。』


 翼からのなんの変哲もない連絡にすら心が躍る。


 こんなにもいい気分になったのはいつぶりだろうか。そんなことを考えながら、手際よく晩御飯の準備を続ける。


 「ただいま。」


 「おかえりなさい。」


 いつも通り翼を出迎えた桜だったが、迎えられた側の翼は驚いた顔をしている。


 「どうしたの?私の顔になにかついてる?」


 「いや、そういう訳じゃないけど。今日の桜、目の周りが赤いけど元気だなって思って。」


 「あら、泣けるくらいにいいことがあっただけよ。」


 桜は翼に優しい声で答える。翼の頭の中は疑問でいっぱいだったが、特に深掘りすることもなく家へと入った。


 いつものように二人で晩御飯を食べていると、桜が今日のことを少しだけ話してくれた。


 「今日、楓に私とあなたの関係のことを話したわ。」


 桜の唐突な告白に思わず箸が止まる翼。


 「別に構わないけれど、どうして急に?」


 「昨日、京子のことを話してくれたでしょ?それで私も色々と思うところがあったのよ。」


 「うん。」


 翼は桜に相槌だけを打っている。


 「私もあなたと京子の重りになっていると感じると、どうしても耐えられなくてね。大切な二人が私のせいでどうにかなる姿なんて見たくないから・・・。」


 桜が珍しく言葉を詰まらせる。それを聞いていた翼は、桜自身、自分に負い目を感じていたことに初めて気がついた。


 自分と桜の歪な関係のせいで、色々な人を巻き込んでしまったことに対する負い目だ。たかだか15歳の少女に背負い切れるはずもないと、誰もが分かっていたはずなのに。


 「大丈夫だよ、桜。僕も福井さんも桜のことを重りになんて感じてないよ。むしろ福井さんは、桜の事が大切だから行動してくれていたと思うし。」


 翼は桜の優しい口調で言う。


 「だからもっと周りを頼ってもいいんじゃないかな。その方が福井さんも冴木さんも喜ぶと思うよ。」


 「あなたはどうなの?」


 桜が今にも泣き出しそうな声で翼に聞いた。


 「もちろん僕も嬉しいよ。変な関係だけど、後ろめたい気持ちはないからさ。」


 その言葉に桜は今日2回目の涙を流した。

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