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桜の空の下で  作者: やまはぬん


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113/147

113話

 その日の部活、翼は先輩たちの動きをいつもよりも注意深く観察していた。京子が言っていたように、春季大会が近づいているからか、先週よりも部活に緊張感がある。


 初心者を教えている先輩も、初心者のことよりも自分のことで忙しいような雰囲気を出している。


 「これが大会前の雰囲気か。」


 翼は独り言を呟いた。その独り言はどうやら少し大きかったようで、隣で一緒に練習していた同級生の『丸山吉伸』に聞こえていたらしい。


 「どうした?東山?そんなこと急に。」


 「あ、丸山くん。聞こえてた?」


 「それはもうバッチリ聞こえてたぞ。」


 その言葉に少し恥ずかしくなった翼だった。


 「いや、今日、福井さんと話していたんだけど、僕自身大会前だと知らなくてさ、なんだか不思議な感覚なんだよね。」


 「何を言ってるんだ?大会前にピリピリするのは当たり前だろ?むしろ競技が競技だからまだいい方だと思うけど。」


 中学の時は野球部だった丸山が言うのだからそうなのだろう。翼は今の状況でも気後れしている。


 そんな大会前の部活が終わった後、いつも通り京子と帰る翼だったが、今日の京子は何やら何かがあったようだ。


 「福井さん何かあった?」


 「やっぱり分かる?」


 「なんとなくいつもと違うかなって。」


 京子は翼に今日の部活の出来事を話すか躊躇していたが、翼から踏み込まれたため話すことにした。


 「今日、私スタメンギリギリって言ったの覚えてる?」


 「覚えてるよ。」


 「それが今日、スタメンから控えに落ちちゃってさ。春季大会は出番なさそうなんだよね。」


 「そんな急に?」


 「監督から弓に集中してないって言われちゃってね。まぁ、本当のことだからしょうがないけど・・・。」


 そう言われた翼は京子になんて声をかければいいかわからなかった。京子が部活に集中できなかった理由に自分も関係あると感じたからだ。


 京子になんて言うか迷っていたが、先に京子から口を開いた。


 「だからって東山くんのせいじゃないよ。他の人だって色々なことを考えながら、うまくバランス取りながら弓を引いている訳だし。」


 京子のその言葉はかえって翼に突き刺さった。


 夕暮れの帰り道をこんなにも暗いと感じたのはいつぶりだろうか。そこから翼と京子は分かれるまで会話は無かった。

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