10話
翼は上着を羽織り、外にでた。4月の頭とはいえ、まだ寒い。
「どこまで行くかな。」
あてのない散歩は目的地を決めるのが一番難しい。
「温かい飲み物飲みたいな。」
目標を決め、歩き始めた。とりあえず、近くの公園に向かってみることにした。上京したての時に、自動販売機がそこそこ並んでいるのを確認していたからだ。
「ふぅー、着いた。」
軽く息を吐き、HOTと書かれた自動販売機を探していると、今日何度目かの佐々木桜が自動販売機の目の前にいた。
「こんな時間に何してるの?」」
桜は急に声をかけられ、少し飛び上がっていた。
「こんな時間に何しているの・・・?」
「ちょっと嫌なことがあって散歩しているところ。桜は?」
「私もそんな感じよ。」
心なした桜の元気がない。
「急に驚かせて悪かったし、何か買うよ。」
「いいわよ。」
「そんなんこと言わずにさ、僕も買うところだったし。」
「それじゃ、お言葉に甘えるわね。」
ガランガランと飲み物が落ちる音が二回連続でなった。そして、近くのベンチに二人並んで座った。
「もう、桜の季節も終わりかー。早いなー。」
「何言ってるのよ、当たり前じゃない。」
「僕の地元は桜が咲くのはGWだからさ。ついね。」
「そんな桜が咲くのが遅いところに住んでいたのね。」
そんな会話をしながら、二人で温かい飲み物を飲んでいた。
特に何かがあったわけではないが、それぞれの事情が変に絡み合って、まるで別れ際のカップルのような空気感になっていた。




