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第18話 ミアの決着

「ミア!ミア!」


 案内された病院の個室にお父さんとお母さんが駆け込んでくる!


「良かった…!良かったぁっ…!」


 お母さんはそのまま私に抱きついて来た。


「お母さん、苦しいよ。」


「ああ、ごめんなさい。…お父さんもお母さんも心配したのよ。」


「うん、ごめんなさい…。」


「それで、一体何があったんだ?」


「えっと…何も覚えてないの。おととい?学校から帰る途中…家の近くまで歩いてたのは覚えてるんだけど気付いたらここに寝てたんだ。」


 お父さんが聞いてくるが、私はかののんに言われたように覚えてない通す事にする。まあこの二日間の事をほとんど覚えていないのは本当で、話さないのはお父さんには信じられないであろう事だけなんだけど。


 それでも心の底から心配してくれているお父さんに嘘をつく事に胸が痛む。よくいる都合が悪い事を「記憶にございません」で通す大人たちはどんな気持ちであれを言ってるんだろうななんて考えてしまった。


「そうか…まあ、無事だっただけでも十分だ。」


 そのあと先生がやって特に外傷はなかった事を私たちに伝えてくれる。ただ2日間のあいだ何も食べていなかったせいで軽い栄養失調になっているため点滴を勧められ、あとは念のために精密検査をすると言う事で1日入院する事になった。


「じゃあ明日、また来るわね。」


 お父さんとお母さんが帰ると、見計らったかのようなタイミングでかののんからメッセージが届いた。


―ご両親には会えましたか?


 え、まさかどこかから見てたりしないよね?ちょっとビビりつつ返信する。


―うん。どうもありがとう。明日精密検査する事になったよ。


―どういたまして。内側もしっかり治ってるはずなので気楽に検査を受けて下さい。なんなら慢性的な肩こりや眼精疲労も治ってると思いますよ。


 言われてみればスマホを見ても目が擦れない気がする。回復魔法ってすごいな!


―そこまでケアしてくれたんだね。奥様にもお礼を伝えておいて下さい。


―「かのんを守ってくれたお礼」だそうですので気になさらずに。それじゃあまた明日。今日はゆっくり休んで下さいね。


 守ってもらったのは私の方なんだけどな。レイジ君をボコボコにしてる姿は阿修羅のようだったけど、本当は優しくて気を遣える子なのかもしれない。


 私はスマホを枕元に置いて横になる。すると瞼が重くなってあっという間に眠りに落ちた。




 懐かしい光景が目に入る。―これは、異世界にいた頃の夢だと思った。多分召喚されて1年くらい経った頃だったかな?


―今回は何人死んだ?


―2人だ。これで合計16人だな。


―なあ、なんで敵はこんなに強いんだよ。チートスキルで無双できるんじゃなかったのかよ!?


―知らないわよ!男子がノリノリだったから私達も勝てるって思ったのに!


 想像していた異世界転生俺TUEEEEと違い、次々と死んでいくクラスメイト達。既に1/3以上のクラスメイトが命を落としたと言う現実を突きつけられてみんなの心はバラバラになっていた。安易に戦う選択をした男子を責める女子まで出てくる始末だ。私は堪らなくなって食堂を出た。


 夜風にあたり頭を冷やしているとレイジ君がやって来た。


―神田、大丈夫か?


―上野君。


 まだ苗字で呼び合っている…付き合う前だっけ。


―ねえ、侵略国の人達ってどうしてあんな風にこの国の人達を殺せるのかな。


―さあな。心を持たない冷酷な人種なのかもしれない。


―…そうなのかな。


―特に、「紅蓮の魔女」といったか?あの炎の魔法を使うやつは間違いなく戦争を楽しんでいるんだろう。そうでも無ければあんな残酷な真似が平気で出来るわけがない。


 当時はそんなレイジ君の言葉に納得してしまった。でもかののんの話を聞いた今なら、あちらにも事情があったと分かる。


―うん、そう、だね。


―俺たちの未来のためにも、必ず勝たなければならないな。


 今思えば、ここで話し合うという選択肢を取れれば違う未来もあったのかも知れない。だけど過去の私はそれが出来なかった。


―…そうだね。勝とう。


 私はこの先に勝利が無い事を知っている。もちろんかののんの術が強いのはあったんだろうけど、それ以上に私たちには勝とうという覚悟が一人一人に足りなかった。多分そういう事なんだと思う。


 だってこの時の私はレイジ君に恋していたし、誰かがなんとかしてくれると思っていた。きっと他のみんなもそうなんだったんだろう。そんな空気では、何をおいても勝とうとする意志と覚悟を持って戦うかののんには、気持ちの面で負けていた。


 話し合おうとする意思なければ、何としても自分の力で勝とうという覚悟も無かった。そんな私達が負けたのは必然だったのかもしれない。




 目が覚めると、既に太陽は上がっていた。朝の検温に看護師さんがやってくる。朝ご飯を食べられるか聞かれたので、少しならと答えた。


 スマホを探すと、サイドテーブルの上で充電されていた。いつの間にか充電器を用意してくれたらしい。なんか至れり尽くせりだなぁ。


 なんとなくこの3日間分のニュースを見たりして時間を潰し、朝食が運ばれるのを待っていると両親とかののんからそれぞれメッセージが届く。


 両親は面会時間の午後1時ごろに来てくれるらしく、かののんは午前9時ごろに一度来るとのこと。面会時間って午後1時から7時って書いてあるけど…たぶん色々と裏工作的な事をしたんだろう。なんかすごい人達らしいし。


 運ばれて来たこれまた豪華な朝食を頂きながら、かののん…「紅蓮の魔女」について考える。


 彼女は確かに異世界でクラスメイト達を大勢殺したけれど、日本人を殺していると言う認識はなかったらしい。それでも大勢殺している事に変わりはないが、私達のクラスメイトにも侵略国の兵士を手にかけた人はいる。戦争という舞台の上では仕方がない事だった考える事が出来ればいいが、流石にそこまできれいに割り切ることも出来ない。


 とはいえ、私は日本でかののんと友達になって…彼女が異世界の事を知るために友達のフリをしていたとかだったら私の片想いになっちゃうんだけど、昨日必死になって助けてくれた事からも向こうも友達だと思ってくれていると信じたい…異世界で彼女がどんな思いで戦って来たか聞いて、既に「紅蓮の魔女」を敵だと思えなくなってしまっている。異世界で彼女に殺されたクラスメイト達が結果的には日本では生きているっていうのもあるから、直接的な恨みみたいなのが沸かないんだよね。


「レイジ君はどうなんだろう…。そういえば彼、大丈夫かな?」


 彼はこの間話しを聞いた時も紅蓮の魔女への復讐に囚われていた。それには恐らく、恋人であった私を殺されたって強い恨みがあったのだろう。でも私は今こうして生きているし、過去の記憶も戻った。レイジ君が復讐をする必要なんて無くなればいいんだけど。


「というか私を殺したのってほとんど恵比寿さんみたいなものなんだよね…。」


 彼女が粘着性の糸で落ちて来る瓦礫の下に私を固定しなければ、多分あの時死ななかった。それでも彼女の気持ちに最後まで気付けなかったという負い目もあり、恵比寿さんを憎む気持ちは湧いてこなかった。


「うーん…かののんが言う通り、私って色々とチョロいのかも知らない。」


 だとしても。誰かを憎んだり恨んだりして生きるよりは、許せる自分でありたいと思うんだ。


------------------------------


 私は渚さんと一緒にミア先輩の病室に向かっていた。


「とりあえず上野君と恵比寿ちゃんから聞ける事は聞いたから、神田ちゃんは契約の話だけでいいかな。」


「あのあとずっと取り調べしてたんですか?」


「取り調べって言うとなんか物騒な感じせん?あくまで聞き込みよ。」


「カツ丼は出ない?」


「出ない出ない。」


 ハハハと笑う渚さん。病室に着いたのでノックをする。「はいっ」とミア先輩の声が聞こえたので2人で入ると、パジャマ姿のミア先輩がベッドの上で体を起こしていた。


「かののんだけじゃなかったんだね?えっと…。」


「はじめまして。雪守渚言います。よろしくね。」


「あっ、はい。よろしくお願いします。」


「ミア先輩、体調はどうです?」


「うん。すっかり元気。朝ご飯もすごく豪華だったけど全部食べられたよ。」


「なら良かった。じゃあ今日の夕方くらいには退院出来ますね。」


「ここのご飯、おいしいでしょ?一番豪華なやつ持ってくるようにしっかりお願いしといたから。…あ、費用は気にせんでええよ。今回の入院費は全部うち(雪守)が持つから。」


「…いいんですか?」


「うん、うちの事情で入院してもらってるからね。ご両親には警察から「捜査の一環で経費で落とせました。」って伝えて貰うから怪しまれることも無いと思うし。ちなみに自費だと10万円超えるから素直に受け取っておいて。」


「わ、わかりました。…ありがとうございます。」


「さて、かのんちゃんとイチャイチャする前に、事務的な話を済ませたいんやけど…かのんちゃんからウチの事ってどこまで聞いてる?」


「渚さん!別にイチャイチャはしないですよ!?冬香の耳に入ったら変な誤解を受けるような発言はやめて下さい!」


 ほら、ミア先輩も赤くなってるじゃないですか!


「緊張を解そうと思っただけやん。」


「余計固くなってますよ。」


「おっとそれは失礼。それで、どこまで聞いたっけ?」


「…私がかののんにどこまで聞いてるかって事です。えっと、渚さんや冬香さんは白雪グループの中枢の人で、特別な力を持ってるって事ぐらいしか。」


「なるほど、ほんと最低限って感じか。じゃあ一応最初から説明するね。」


 渚さんはそういうと、白雪の歴史から現在の本家と各分家の役割について軽く説明。さらに雪守が「秩序を守る」ために魔力を持っている人たちを管理している事を伝えた。


「そんなわけで神田ちゃんも雪守として対応保留状態になるんよ。」


「対応保留?」


「そう。しょぼい力しか持ってないなら名前だけ控えて放免なんやけどね、チートスキル?それを使いこなせちゃうってなると放置はできんって事で、雪守の管理下に入ってもらわんといけないのよ。」


「そうなんですか…。」


「ちなみに上野君と恵比寿ちゃんも昨日の内に契約済やね。…そんなわけで神田ちゃんをこんな目に合わせた恵比寿ちゃん、あの子は既にうちの管理下にあるわけで神田ちゃんが今回の件の恨みを晴らしたい思ってても許容できんのよ。能力を制限する代わりに安全を保証するのが『契約』やからね。」


「あ、それは大丈夫です。あんまり恨んで無いって言うか…気にして無いってほどじゃ無いけど、仕返ししたいとまでは思ってないので。」


「そっか。なら良かった。それで、神田ちゃんにも『契約』をして欲しいんだけど、細かいことはこの紙に書いてあるんだけどまあ良くある難しくて遠回しな日本語でうちに不利にならない様に色々と条件が書いてあるんだわ。」


「…親からうっかり契約書にサインするなとは教育されています。」


「しっかりした親御さんやね。…さすがにこれで契約するのはフェアじゃ無いんで、わかりやすく噛み砕いた別紙を見ながら説明するね。」


 渚さんはミア先輩に契約について説明する。この契約を結ぶとミア先輩は雪守の傘下となる。今後雪守の許可なく魔力、つまりチートスキルを使うことは出来なくなる。またこの契約については白雪一族以外には口外出来ない。さらに今後白雪グループ以外の組織に属する事が出来ない。その代わり、雪守はミア先輩の身の安全と将来の生活を保証する…と言った内容だ。


「身の安全はなんとなく分かりましたが、将来の生活ってなんですか?」


「まあ就職先の斡旋やね。白雪グループの企業なら好きなところに就職できると思っていいよ。」


「え、すごい。」


「まあその代わり他の会社には就職出来んからね。自営業ならやっても良いけど、その場合も白雪の協力会社って形で立ち上げて貰わないとあかん。まあ普通にサラリーマンとかやるならそこまでキツい縛りじゃないんやけど、逆にやりたい事がある場合はかなり制限されるんよ。だからこそできる限り優遇はしてあげたいって事やね。」


「なるほど。…ちなみになんですが、契約を結びたく無いって言ったらどうなりますか?」


「その場合は残念やけど無理強いは出来んね。ただし雪守からは神田ちゃんは秩序を乱す恐れが高い「駆除対象」になる。」


「駆除対象…殺すって事ですか?」


「うん。秩序を守るためには仕方ない。」


「それって「雪守の管理下に入らないと殺す」って脅してるのと一緒じゃ無いですか。」


「そうだよ?だからこその優遇処置だと思ってくれて良い。」


「ミア先輩、同じクラスの新宿ユキヒロって分かりますよね?」


「新宿君?話したことはほとんど無いけど、分かるよ。」


「彼は先週末に雪守…渚さんと私に駆除されてます。」


「えっ!?」


「彼のチートスキルは『魔力付与』って名前やって上野君と恵比寿さんに聞いたけど、それで結構やりたい放題しててね。この半年、分かってるだけで彼が原因で8人が死んだ。チートスキル…魔力を使った殺人は日本の法では裁けんから、既に秩序を大きく乱した彼は早急に駆除する必要があったんよ。」


「雪守は、秩序を守るために必要だと判断すれば実際にそう言う判断をして実行するんです。実は私も最初は雪守の駆除対象だったんですよ。冬香と結婚する事でお目溢しして貰えてるんです。…まあ元々恋人同士だったので結婚できたのはむしろラッキーですけど。」


「別に契約が嫌だってわけじゃないの。…ねえ、かののんも必要なら人を殺すの?この日本で。」


「そうですね。」


「私がもし、契約しないって言ったら?」


「死ぬ気で契約させます。さっきミア先輩、必要なら殺すのかって聞きましたよね?それなら殺します。だけど、そんな事態を死ぬ気で回避するのが私の仕事です。…新宿ユキヒロは仕方なかった。愉快犯で8人殺したチートスキル持ちを、これ以上は放置出来ませんでした。」


「上野君や恵比寿さんは?」


「彼らはまだ日本では誰も殺していないのが確認できたので契約をして貰えました。」


「かのんちゃんは、昨日戦った時に彼らを殺そうと思えば殺せたんよ。実力的にも、雪守の裁定的にもね。分家時期当主の嫁やからあの状況ならその場で2人を危険人物と見なして駆除したところでお咎め無しやったし。それを殺さずに無力化しようとして、ついでに神田ちゃんを守って2人に殺人をさせないようにってしとったから、結果的に3人を守りながら戦ってたってわけよ。分かりづらいけどそれがかのんちゃん「そんな事態を死ぬ気で回避する」って言うことやね。」


「そっか…そうですね。かののんはやっぱり強いんだね。」


「まあ昨日は結果的に2人に負けちゃった訳ですけどね。都合よくミア先輩が覚醒して、ついでに助けが来てくれなければ状況がどう転んだかは分からなかったです。」


「それでも、ギリギリまでみんなを守ってくれたって事には違い無いし…。」


「そんな褒められると照れますね。よせやい。」


「フフフ、何それ。」


「それで、契約してくれる?」


「…はい、最初から断るつもりもなかったですし。」


「ありがと。ちなみにこの『契約』は私の固有スキルでね?ここで結んだ約束はお互いに破れないの。だからサインした瞬間に神田ちゃんは魔力の発動自体ができなくなるし、誰かに話そうとしたら声が出なくなる。まあうっかりで契約を破る事が無いって言えば便利だけど強制力が働くとちょっとびっくりするから気を付けてね。」


「分かりました。」


 そういうとミア先輩は渚さんが持っていた契約書にサインをする。


「オッケー、これで神田ちゃんもうちの傘下やね。進路は決まってるの?」


「はい、推薦で大学に合格してます。」


 ミア先輩が進学先の大学名を告げる。


「なるほど。じゃあ就職のお世話は4年後やね。さっきも言ったけど白雪グループだったら好きなところに行けるから。まあ専門職は資格がないとさすがになれんけどね。

 もし行きたいところが白雪かどうか分からなかったらウチかかのんちゃんに聞いてくれればいいし、なんなら白雪のコールセンターに電話して名前言ってくれたら専用の相談窓口に繋がるから。」


「本当に至れり尽くせりなんですね。」


「まあ広い意味での家族の一員やからね。…さて、やる事はやったしウチは帰るね。かのんちゃんはもう少しお話ししていくでしょ?」


「はい。渚さん、お疲れ様です。」


「うん、おつかれ。じゃあまたね。」


 私とミア先輩は去っていく渚さんに手を振った。


「さて、先輩みかんでも食べます?」


「いきなりお見舞い感出して来たな!?」


「まあ、私はお見舞いに来たので。…はいどうぞ。」


「あ、ありがと。かののんってみかん半分に割ってから剥くんだ。田舎のお婆ちゃんみたいだね。」


「こうみえて中身アラフィフですからね。」


「ああなるほど…。」


「えっ、納得しちゃうの!?そこはいやいやしっかり女子高生だよーってフォローしてくれないと!」


「面倒臭い女だな!?」


「フフフ、そうなんですよ。私って面倒な女なんです。」


「自分で言うんかーい。」


 アハハと笑い合う。


「…ねえ、かののん。一個だけ聞いていい?」


「なんなりと。」


「私達って友達だよね?」


「私の片想いで無ければ。」


「良かった!私も片想いだったらどうしようって思ってた!」


「じゃあ晴れて両想いですね!というか私は別にミア先輩との友情を疑っていなかったんですが…。」


「だってかののんと知り合ったタイミングとか、その後のなんだかんだが都合良すぎてもしかして情報を得るために私に近付いたのかな…私って都合のいい女なのかなって思ったんだもん!」


「まあチョロインなのは間違いなかったですね。…ついでだしその辺りの経緯も話しておきますか。」


 私はミア先輩に学校に潜入する事になった経緯と、ミア先輩と知り合ったのはたまたまであることを伝えた。


「…そんなわけで私の友情はガチですけど、先輩はちょっとチョロいので今後メンチカツパンを交換してくれるって人が現れてもほいほいついて行かないことをオススメしますね。もうチートスキルも使えないので。」


「ほいほいとは着いていかないよ!チートスキルも別に使えなくて構わないし。」


「異世界チートスキルで現代日本を無双!とか妄想しません?」


「うーん、それこそレイジ君や恵比寿さんみたいなスキルなら考えたかもだけど私のスキルは限定的過ぎるかな。」


「そげぶですもんね。」


「そうそう。だから無くても困らないよ。」


「あとは記憶が戻った事によるフラッシュバックとか大丈夫ですか?あんまりいい思い出じゃ無いと思うので、鬱になったりしないか心配で。」


「いまのところは平気かな?」


「それなら良かった。まあ今日からいきなり鬱でーすとはならないと思うんで、何かあったらいつでも相談して下さいね。事情を知ってる者同士で話をするだけでだいぶ楽になるので。」


「…うん、辛くなったらそうさせて貰おうかな。」


「まあ辛くなる前に気楽に呼んで下さい。上野さんとの恋の進展も気になるので。」


「ふぇ!?」


「記憶が戻った今なら元鞘余裕でしょ?」


「ああ、そうなるのか…な?」


 病室に看護師さんが入ってくる。どうやらこれから念のための精密検査となるらしい。


「じゃあ私も帰りますね。ミア先輩、退院したら遊びましょう。」


「うん、ありがとう。またね。」


 病院をでると冬香からメッセージが届く。


―終わったら学校に来てね。一緒にお昼食べましょう。


 うーん、ベストタイミング。やっぱり冬香には敵わないなあ。今から行ったら丁度お昼か。了解のスタンプを送り私は学校に向けて歩き始めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 ミア、数年後の就職先で意外な才能発揮とか^^ 上野&恵比寿の復讐者組の凹心境が後で見られるといいのですが・・・・ 次回も楽しみにしています。
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