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第10話 それって一体どうなのか

 さて、あっという間に土曜日。今日は冬香がウチに来る。お家デートってやつですよ!ちなみに両親は朝から2人で出掛けており、かりんも昼前には家を出るという。つまり「今日、ウチ誰もいないの…。」ってやつである。


「そわそわ…。」


「お姉ちゃん、わざとらしくそわそわし過ぎだよ。」


「なんか緊張しちゃってさ。ねぇかりん、『今日、ウチ誰もいないの…。』ってどのタイミングで言えば良いかな?」


「知るか!」


 そうこうしていると冬香からもうじき着くとメッセージが届く。私は玄関でお出迎えする。


「おはよー、わざわざ来てくれてありがとね。」


「こちらこそご招待ありがとう。…かのん、今日はかわいいコーデだね。」


 そう言って褒めてくれる冬香。ふふ、今日の私は『はじめてのお家デートコーデ』なのだ!ノースリーブの白ニットにネイビーのワイドパンツでゆったり感を演出している。髪もいつものハーフアップをサイドに寄せて違いを演出だ。たいして冬香はモスグリーンのロングワンピが大人かわいい。


「えへへ、ありがとう。ちょっと気合い入れちゃった。冬香のワンピも似合ってるよ。」


 とりあえずリビングに案内する。


「冬香ちゃん、いらっしゃーい。」


「かりんちゃん、お邪魔します。こちらつまらないものですが皆さんで召し上がってください。」


「あら、わざわざありがとうございます。今日は父母が出かけてるので後で頂きますね。」


 え、君たち女子高生だよね?なんでそんな社会人みたいなやりとりできるの?


「と、とりあえず麦茶でいいかなっ!?」


「うん、かのんありがとー。」


「かりんはどうする?」


「私はさっき飲んだから大丈夫。お姉ちゃん、冬香ちゃんが持って来てくれたこれ、冷たいやつだから冷蔵庫に入れておいて。」


「あ、ホントだ。いいところのプリンじゃん!冬香、わざわざ買って来てくれたの?ありがとー!」


「…私もちょっと気合い入っちゃったのよ。」


 そう言って少し恥ずかしそうに俯く冬香。つられて私も少し照れる。


「はーい!甘い空気は私が出かけてからにして下さいねー!」


「べべべべつに甘い空気とか出してねーしっ!普通だしっ!」


「この空気を普通と言って常に醸し出してるなら、私はお姉ちゃん達のクラスメイトに同情するよ。」


「いやクラスではホント全然だから!ちょっと私服パワーに当てられただけだし!ね、冬香!?」


 助けを求めるが冬香は真っ赤になって俯いていた。


「冬香ちゃんには自覚があるみたいだよ?この場合自覚がある分よりタチがわるい気もするけどね。」


 そう言ってイタズラっぽく笑うとかりん。私が注いだ麦茶をとりあげるとハイ、と冬香にパスをする。冬香は受け取った麦茶を一息に飲み干すと赤い顔を誤魔化すように手をパタパタ仰ぐ。


「別に照れたとかじゃないのよ?外がちょっと暑かったからそれで火照っただけなんだから。」


「ふふ、そういうことにしておいてあげるよ。…さて私はそろそろ出掛けるね。お二人さん、ごゆっくりー。」


 そう言ってパタパタとリビングを去るかりん。


 私たちは冬香の持って来てくれたプリンを頂きつつ、お互いの熱が引くのを待つ事にする。おいしそうなプリンだけど、やっぱり飲み物と合わせて頂きたいということでお気に入りのティーセットを取り出して紅茶を淹れる。こう言うところで女子力アピールを欠かさない。どや。きちんと時間を測っていれた紅茶は冬香にも褒めて貰えた。どやどや。


「それじゃあ私の部屋に行こうか。誰もいないからここでも大丈夫だけど、倒れたりするとベッドがあった方がいいし。」


「はーい。」


「あ、そうだ冬香。」


「なーに?」


「今日、ウチ誰もいないの…。」


「ブフッ!」


 冬香が盛大に噴き出した紅茶を拭き、私たちは部屋に移動した。


 

「…紅茶が冬香の服にかからなくて良かったよ。」


「誰のせいよ!」


「サテハジメマスカー。」


 冬香に椅子に座ってもらい、私はベッドに腰掛ける。


「私に魔力があるかどうかだよね?コップに葉っぱを浮かべて手をかざしたりするの?」


 む、そういうカタチから入るのも大事だったか…。今から準備しても嘘っぽいし次の機会があれば雰囲気作りも大事にしよう。


「魔力の有無だけど、ぶっちゃけちゃうと冬香にはあると思うよ。」


「そんなさらっと!?」


「感覚的な話なんだけど意識を集中させてそういうつもりで『視れ』ば、魔力があるかどうかはなんとなく分かるんだよね。冬香はあるタイプだと思う。ちなみに他の人も見たけど、私の周辺にはいなかったな。」


「学校には私とかのんしか居ないって感じ?」


「全員は見てないよ。普段から魔力を使ってる人はぱっと見で分かるけど一般人は魔力があってもほんの少しだからそれなりに集中しないと分かんないし。…とりあえずクラスメイトと担任の先生は全く無しだね。」


「意外とそこら中にいるものかと思ったけど、そうでもないんだね。」


「もしかしてこっちの世界には魔力持ちがありふれてるのかなと思ったけど、そんなことなかったね。異世界でも一般の人が魔力を持つことってすごく珍しいらしくて。両親が魔力を持っていると子供にも遺伝しやすいってことで王国の貴族なんかは魔力持ち同士で結婚するのが基本だったね。もしかして私も遺伝でウチの両親やかりんも魔力あるのかな?って視たけど全くなかったから私も珍しいパターンになるかな。

 …さて、じゃあ始めようか。」


 冬香の手を取った私はじんわりと魔力を流す。


「まずは魔力を感じとるところからかな。何か感じる?」


「あったかいとか?」


「あったかいはちょっと違うかな?まあいきなりはわからないよね。私のときは魔力を感じるのに1週間くらいかかったような気がするし。」


「そんなにかかるの?」


「最初は全く使ってない感覚を呼び起こさないといけないからね、真っ暗な部屋でじっくり瞑想しながら徐々に体内の魔力を感じていくっていう手順で知覚したんだ。その最初の魔力を知覚するってところが1番の難関でさ、そこさえできちゃえば魔力を扱うのは難しくないんだよ。」


「私も1週間ぐらいかのんの部屋に缶詰め?お泊まりの用意はしてきてないよ?」


「冬香がずっといてくれるのは魅力的ではあるんだけど、今回は裏技を使います!」


「裏技!そんなのあるの?」


「あるある。というか親が魔力持ちの場合の定番テクニック。」


「ああ、みんなが1週間かけて瞑想するわけじゃないのね?」


「そだね。むしろ瞑想で1週間は早い方らしくて普通は半年とか1年とか、才能ないと何年もかかることもあるらしいからね。私も一ヶ月やってできなかったら裏技使うって言われてたけど1週間で出来て驚かれたし。」


「かのんってもしかして天才?」


「魔術と呪術に関しては100年に1人って言われてたよ。どやどや。」


「すごいわね…そんな天才の弟子になれて私ってラッキーじゃない。」


「ふふ、だから安心してくれていいよ。」


「お願いします!」


「それで裏技なんだけどね。私が冬香と魔力的な感覚を共有して冬香の体に魔力が流れる感覚を無理矢理覚えさせちゃうの。親子だと普段のスキンシップとして自然にやっちゃうけど、大人同士だとちょっと恥ずかしいかも。」


「…えっちな感じ?」


「あー、よくある魔力を移すためにカラダを重ねて…的なね。あれ実際やろうとすると効率最悪になるから素直に手渡しが一番だと思うよ。

 今からやるのも手を繋ぐだけで大丈夫。でも魔力で繋がるから知覚した瞬間びっくりするかも?まあやってみようか。」


 私は改めて冬香の両手を取り魔力を流す。今度は自分の魔力を薄い膜にして冬香をスッポリと包み込む。全身を包んだ魔力を今度はじんわりと冬香の体内に染み込ませていき…うまくいったら冬香の体内で魔力を少しずつ循環させる。ゆっくりと体内で魔力を回し、しばらくしたら逆回転。そのまま冬香の様子を伺う。


「よし、とりあえず暴発は無いみたい。」


「私にはかのんが手を持って固まってるようにしか見えないんだけど…。」


「ちょっとずつ冬香の魔力が流れ始めてるのは感じるから、あと30分くらいはこのままかな?」


「はーい。」


 冬香は姿勢を正すと私をじっと見つめてくる。私も冬香の表情の違いを見落とさないように見つめ返す。そのまま魔力を循環させ続けると徐々に冬香の頬が紅く染まりだす。


「あ、あの。」


「きた?」


「よく分かんないんだけど、カラダの中がくすぐったいような感じがしてきたかも。でもくすぐったいのかな?って考えるとくすぐったくなくて。」


「お、いい感じ。思ってたよりだいぶ早いね。…次は身体の特定の部位に魔力を偏らせてみるから、そのくすぐったい気がすると思った場所を声に出してみて?」


 私は冬香の中の魔力を身体の一箇所に不規則に集中させて反応を見る。


「今は右手かな?…左手に移ったかも。今度はお腹。やだ、顔?」


「すっごい順調。冬香、センスあると思うよ。」


「だんだんはっきり分かるようになってきたかも…。」


 次は偏らせる魔力を少しずつ減らして、より少ない変化に対応できるか試す。これも冬香は徐々に反応していく。そんなことを10分ほど続けていくと、


「右手、左手、右手、左足、背中…ん、なんか分かりづらくなったような?ああ、左手?ん、違うかな、むしろ全体?ってなにこれやだ!ひゃうっ!」


 急に手を離しカラダを抱えて蹲る冬香。


「なんか体全体がムズムズするのに、ムズムズしない!これ気持ちいいのに気持ち悪いんだけど!?」


「きたきた!

 それが魔力が流れてる感覚だよ。今は冬香魔力を私の魔力に乗せて無理矢理全身に流してるから気持ち悪いんだと思う。あと少しだから我慢して。」


 ここまで来たらあと少し。冬香の中で循環させている魔力から少しずつ私の魔力を薄めていく。


「あ、なんかスーッとして来たかも?」


「うん、もう私の魔力は抜いたから今は冬香の魔力だけが身体の中を巡ってるよ。」


「これが魔力…?」


「今は私が流れさせてた勢いが残ってるだけだから、冬香が意識してその魔力の流れを強くしたり弱くしたり…できそう?」


「こ、こうかな?」


 冬香は目を閉じて魔力を操作し始める。あれ、ホントにできてるな。私がアシストしたとは言えいきなりコレできるか?この子もしかして天才じゃなかろうか?


「じゃあ一度魔力の流れを止めて、目を開けてもらっていい?」


「…ん。こうかな?」


「おっけー、じゃあそのままもう一回魔力を流して?」


「えっと…こう?」


「うん、できてる。ホントすごいんだけど。正直今日中にここまでいけば上出来だと思ってたのに。」


 私の想定した修得の法定速度を守らないワイルドスピード粉雪だ。


「かのんの教え方が上手なのよ…次はどうしたらいい?」


「とりあえず魔力を身体中に巡らせて慣らさないとかな。というわけでこれから1時間くらいはさっきと同じ。魔力を強くしたり弱くしたりを意識しながら、全身に行き渡らせて。」


「1時間でいいの?」


「たぶんそれくらいで魔力が尽きると思う。最初だし安全な環境で魔力切れも経験しちゃった方がいいよ。」


「はい、先生!」


 素直に従って魔力操作を始める冬香。何がすごいってこの子既に目を開けて普通にしながら魔力を操作出来ている。


「ちょっとした疑問なんだけど。」


「既に魔力操作しながら会話ができるとか。冬香、恐ろしい子!」


「なんでかのんは裏技使わないで瞑想で行こうと思ったの?」


「ああ、それは単にできる人が居なかったってだけなんだ。」


「そうなの?」


「いま私がやった方法って実力が無い人がやると危ないんだよね。流す魔力が少ないと実感できないし、多すぎると私の魔力で冬香の魔力を完全に上書きして二度と魔力が使えなくなっちゃうの。それがこの間話した『封印』に当たるんだけどね。絶妙な力加減を一発で決めるテクがいるんすよ。」


「あら、意外と綱渡りだったのね。でもさっき親子なら問題ないって言ってたような。」


「親子の場合、赤ちゃんのお腹とかマッサージするでしょ?…うん、ピンと来てないね。するんだよ、うんち出したりするのに。んでその時に手に魔力を少しだけ纏わせて全身マッサージをするの。それを毎日繰り返してるといつの間にか赤ちゃんは魔力をそこにあるものだと認識してるんだよね。大人の弱い魔力で少しずつ全身に魔力の流れを覚えさせるって事で今日私がやったことと理屈は同じだけど、これはこれで日数がかかるね。」


「じゃあかのんがやってくれたのは自己流?」


「ううん。これは大人対大人の一番手っ取り早いけど、さっきも言ったリスクがある方法として確立されてるよ。あとは赤ちゃんにやるのをもう少し大人向けにした方法もあるけど、これってつまり素手で全身を触られるんだよね。私の時はそっちは出来るって人が居たんだけど断固拒否して瞑想になったってわけ。」


「その出来る人って男の人?」


「うん。」


「そりゃあ拒否するわ…納得。」


「まあ1ヶ月も待てば国で一番の魔術師が遠征から帰ってくるからその時に今日のやり方の方でやればいいよって事でダメ元で瞑想してたんどけどね。そしたら私ってば出来ちゃったわけ。

 ちなみにその国一番の魔術師が私の師匠。」


「かのんにも師匠がいたって前に言ってたわね。」


「魔術も呪術もそれぞれ国一番の人が師匠だったね。」


「さすが救世主!VIP対応じゃん。」


「まあ一人前になったらその分ブラックに働かされたんですけどね!何せ魔王討伐ですから!」


「あー、オツカレサマデス。」


 そんな会話をしているうちになんだかんだ1時間が過ぎようとしていた。


「ん…、かのん、なんか変。」


「どんな感じか説明できる?」


「えっと…、魔力操作はできるんだけど自分の魔力が感じ辛くなって、あとちょっと脳が重いような感覚っていうのかな?実際は重くないんだけど。」


「その感覚はよく覚えておいて。魔力が尽きかけてる時の赤信号。そのまま魔力を使ってるとブラックアウトするよ。」


「もうやめた方がいい?」


「一度最後まで試そうか。限界を知っておかないといざという時にまだギリギリいけるかもって無理して意識失うパターンがあるから、落ちる直前の感覚は知っておいた方がいいよ。枕使っていいから横になって目をつぶって、ギリギリまで自分の辛さを観察して。」


「うん…わかった。」


「どんなふうに辛いか、言葉に出した方がいいかも。」


「…もう自分の魔力はほとんど感じない、名残みたいになってる。脳が重くて、意識にカーテンが、かかる…よう、な…。」


「うん。」


「あ…ダメ…。ま、りょく、わかん、ない…。」


「うん。」


「あと、きもち、わる…か…も。」


 コテン。そこで冬香が意識を失う。


「うん、優秀優秀。目を覚ますまで2時間くらいかな?せっかくの機会だし恋人の寝顔を堪能させて貰いましょうか。」


 冬香の寝顔を見つめる。特に顔色も悪くないので一安心。まつ毛長いなぁ。鼻も高くて綺麗だなぁ。こっそりチューしてもいいかなぁ。…魔力の使い方を教えている最中は真剣にやってるので意識しないのだが、こうして手持ち無沙汰な時間ができると無防備に横たわる冬香の色気にドキドキしてくる。やば、なんかムラムラしてきた。


 …その後、冬香の隣ではしたない事をした私はがっつり自己嫌悪に陥った。


「最低だ…私って…。」


 死ぬまで絶対にパロらないと思っていたネタを差し込むことは忘れない。


 

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


最後に下ネタ差し込みましたが、作者の趣味としてこのレベルの下ネタパロは今後も差し込んでいくかと思います。R15だし多少はね?


ここまでで1章の半分くらいです。1章完結までは1日2話程度のペースで投稿していきますので、気に入って頂けたらお付き合い頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冬香「こちらこそご招待ありがとう。…かりん、今日はかわいいコーデだね。」 かりん(妹)→かのん(主人公) かりんは妹さんですよね? 妹さんと出迎えたのかと一瞬思いました。
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