Ep:30
散策は適当なお店を冷やかしたり、珍しい品を置いている店であれこれ意見を交わしたりと充実した時間を過ごせたと思う。そして、明けて翌日。
今日はオフレ殿下との話し合いがある。午前中にアポイントメントを取っているので、少し早起きをして準備をしているが、相手が皇族なので身だしなみは確りとしなければいけない。勿論プライベートで会うのでタキシード等を着る必要はないが、それなりの格好でなければ相手に恥を搔かせてしまうので割と気合を入れている。……といっても男の俺よりも女性陣の方が大変だろうが。
彼女達には苦労を掛けるなと思いつつ準備完了。このまま部屋で待つのもあれなので皆を迎えに行くとしましょうかね。まずはゴロウの部屋、そしてアヤメ、シズクの順番で行こう。
各部屋を回って順次合流した後、宿を出てオフレ殿下が住まう屋敷へと向かう。事前情報によると宮殿に住んでいる訳では無く、高級住宅街に一人で住んでいるらしい。これは政争から遠ざける為母親が取った処置と聞いている。屋敷に住んでいるのはオフレ殿下、護衛、身の回りの世話をする執事や侍女となる。ざっと調べた所働いている人達は特定の派閥に属している訳では無く、無所属という結果が出ている。……もっと深い所まで念入りに調べれば何かしらの情報は出てくるだろうが、今はそんな時間も無いしある程度で問題無い。
問題と言えばオフレ殿下が現状をどのように考え、またどこまで情報を把握しているのかだ。自身に危険が迫っている程度の認識であれば正直こちらも困った事になる。――まあ、杞憂だとは思うが。そんな気持ちが顔に出ていたのか隣を歩くシズクが声を掛けてきた。
「ユノ。浮かない顔をしているわよ」
「悪い。話し合いについて少し考えていた」
「私はオフレ殿下とは初めて会うけどどんな人なの?」
「そうだな……。頭の回転も早いし、人間性も問題無い。ただ、あまり自分を表に出さない所があって相手に強気で来られると流されてしまいそうな感じはあるな」
「ふーん。良くも悪くも箱入り娘と言った所かしら」
「その認識で間違っていない。が、芯は一本確りと通っているから自分自身がブレる事は無いだろう」
「珍しいわね。皇族の女性なら自分を押し殺して、表面上はにこやかに。内面は死んでいるも同然という人が多いのに」
「幼い頃から色々あったんだろうよ。反面教師が居たのか、母親の教育のお蔭かは知らないが」
「そうなのね。少し会うのが楽しみだわ」
シズクは基本的には誰とでも仲良く接してくれるから心配は無いか。あくまで表面上ではという話になるが。誰とでも親しく接する事が出来るのは稀有な才能だし、一見すると凄いがその実自身の中で線引きしたラインを相手が絶対に越えない、越えさせないように誘導しているからな。それが例え肉親だろうと、同じ隊の面々だろうと、俺以外のCODE零の人間だろうと例外は一切無い。誰も彼もが彼女の一線の内へと至ることは出来ない。だから知っているのも表層のみで、本当の意味で彼女がどういった人間かは知らないのだ。余りに歪で異様だがこれが彼女の性質であり、人間性である。
とは言えだ、それが悪い訳では無いし他人がとやかく言う事でもない。否定するという事は即ち彼女の人間性を認めないという事だからな。
などと考えつつ、ついシズクの顔を見てしまう。
「どうかした?」
「いや、もう少しで着くからって言おうと思って」
「そう。分かったわ」
なんとか誤魔化せた……訳無いか。俺が考えている事なんてお見通しだろうし、その上で気遣ってくれたんだろうな。まあ、本当にあと少しでオフレ殿下の家に着くんだけどさ。
十分ほど歩いた所で件の家――もとい屋敷に到着。扉に取り付けられているベルを鳴らすと、庭を突っ切る様に続いている通路の先にある玄関扉から数人の姿が見える。迎えの人だろうか。執事服や侍女服を着ていないのでもしや……と思っていたが近づいてくと確信に変わる。
「お待たせして申し訳ございません。ようこそ、我が屋敷へ」
「お久し振りです、オフレ殿下」
「こちらこそお久し振りです。立ち話もなんですしご案内致します」
そうして屋敷の中に案内されて辿り着いたのは立派な調度品が並ぶ豪奢な応接室だった。部屋は所謂成金みたいな力や財力を誇示するギラギラした品の無い物ではなく、センスがあり無駄な主張をしない考えられた品々で思わずほぉ!と感嘆する程だ。選んだのはオフレ殿下自身なのかは分からないが、見る目があるし、相手の事をよく考えている。
と室内を見回しているとオフレ殿下が申し訳なさそうに声をだす。
「申し訳ありませんが、ベルトイアの到着が少し遅れております。もう少々お待ち頂けないでしょうか」
「分かりました」
ベルトイア氏は公爵家長男であり、色々多忙だろうから仕方なし。暫し雑談でもして時間を潰すとしようかね。
その後二十分程でベルトイア氏が到着し、ようやく話し合いが始まる。
「まずは、初めて会う人も居るので自己紹介から始めさせて下さい」
目の前に居る二人から首肯を貰い横に座っている面々の紹介をする。
「まずは、CODE零所属であり副隊長のアヤメです。次に同じ隊のゴロウです。そしてこちらに座っている女性がCODE壱隊長のシズク、隣に居るのがCODE参隊長のコウとなります」
「皆様の噂は聞き及んでおります。こうしてお会いできて光栄です」
「まさか、和国最強の隊長達が勢揃いしているとは……。こんな光景滅多に見られませんね」
オフレ殿下とベルトイア氏が言葉を述べたが、二人とも興奮気味で少し心配になる。
「あー、和国ではシズク、コウと一緒に居るのは割と当たり前なんですが他国でとなるとこれが初めてかも知れませんね」
「そうだな。揃って遠征なんて無いしこれが初めてだな」
「そうか。ありがとな」
コウが回答をくれたが初めてだったか。まあ、今回の件みたいな貴族絡みの面倒臭い一件が初めてって言うのは何となくモヤモヤするがそれは一旦置いておこう。
「それでは、紹介も済んだ事ですしオフレ殿下の身の回りで何があったのか詳しくお聞かせ下さい」
「分かりました」
そう言って一つ深呼吸をしてから話し始めた。
「私が和国から帰国して一月半後くらいからでしょうか。最初は尾行や和国で何があったのか探る程度でした。対象も私のみで済んでいて不快感や気味の悪さは感じでいましたがその程度であれば我慢できるのでそこまで問題では無かったんです」
「成程。最初は探りを入れているだけだったんですね」
「はい。――それから数週間経った頃尾行対象は屋敷で働く人間まで広がり、私とお付き合いのある人達に嘘を吹聴したりと段々と過激になっていきました。そのせいで距離を置かれたり、酷い場合は交友関係を絶たれたり悪印象を持たれたりと私の立場は悪化の一途を辿っていきます」
「話を聞く限り外堀を埋めて身動きを出来ないようにしてから仕留める……と言った感じでしょうか」
「仰る通りかと思います。貴族達からの印象は帝位継承の件もあり余り良くありませんでしたが、これが決定打となり今では腫物を触る様な扱いを受けています」
「では、実行犯について心当たりはありますか?」
「はい。一人目はアドモ氏、二人目はエスピノ氏、三人目はオルト氏です。この三名は第一皇太子の派閥に属しており、帝位継承権争いにおいて邪魔な私を排除しようと以前から動いている方たちです。エスピノ氏は侯爵で非常に強い影響力を持っています。公爵との繋がりもあり彼の発言には他派閥の人間であろうと反発は容易に出来ない程立場が強く、また彼自身もかなり狡猾で強かな人間です。残りの二人は伯爵で立場としてはエスピノ氏に付き従っているという感じですね」
「ふむ。主犯はエスピノ氏で実行犯はアドモ氏、オルト氏と言った感じでしょうか。といっても実際に動いているのは自前の兵か裏の人間にだと思いますが。一つ確認なのですが件の三名は私がオフレ殿下を成人まで保護するという事は知っているんですよね?」
「知っていると思います。最初に情報収集した段階でその事は掴んでいなければ最重要情報を見逃していると訳ですし、そんな杜撰な事はしないのではないでしょうか」
「成程。エスピノ氏の性格から考えても取りこぼしは無いと考えて問題無いですね。では直近の情報を教えて下さい」
「はい。最近では私が買い物に出た時を狙い、人混みで後ろから刺されそうになりました。その時は護衛に付いていた者が気付いて未遂で終わりました。後はお茶会に誘われた際の出来事なのですが、お茶を飲もうとした際僅かに異臭がしてその場では飲まずに過ごしたのですが後日調べた所毒物が混入されていたという事もありました。毒物混入に関しては開催者を問い詰めたのですが、知らぬ存ぜぬで貫き通され何も分からず仕舞いで真相は闇の中です」
「明確な殺意を持って行動に出ていますね。和国亡命までのリミットが迫っているので相手も焦っているのでしょう。今までの様な嫌がらせでは効果が無いのであれば直接的な手段しかないですから」
「…………私はどうすればいいのでしょうか?」
「オフレ殿下は現状を維持して頂ければ問題ありません。これからに関してですがまず件の三人に関しての情報の裏付けを取ります。その後は私達が直接動いて消します。――ベルトイア氏にお聞きしたいのですが貴族が三人消えた場合どの程度混乱が起こりますか?」
「そうですね……。アドモ氏、オルト氏はさして影響力が無いので局所的な混乱は起こると思いますが問題はありません。ただし、エスピノ氏に関してはかなりマズいですね。彼が殺害されたとなれば公爵家、延いては王族までもが動き出しかねません。そうなると私でも抑える事が出来ないので国全体が揺れる事になります」
「成程。それは少し面倒ですね。では、事が済んだ後皇帝に会って話を付けましょうか。こちらの条件を飲むのであればそれで良し。もし受け入れないのであれば私と懇意にしている国々に要請して圧力を掛けてもらいます。そうすれば折れると思いますしね」
実際問題ここら辺が落とし所だと思う。仮にここまでしても相手が条件を飲まなければ最終手段として武力行使も辞さないが、はてさてどうなるか。
「おい、ユノ。それは少し甘いんじゃないか?んな回りくどい事をせずに国を半壊にすれば良いだけじゃねぇか。そうすれば嫌でも首を縦に振るだろうし」
「コウの言う通りそれが一番手っ取り早いが仮にも保護対象であるオフレ殿下が生まれ、育ってきた国だぞ。簡単だからと言って武力行使に訴えるのは早計に過ぎる。あくまでそれは最終手段だ」
「…………」
俺の言葉にコウは黙ってしまう。彼なりに思う所もあるだろうがここは俺の案を飲んでもらいたい。
「ユノが決めたんだから素直に従いなさい。それに貴方の言う通り国を半壊させたとして、世界に与える影響はどうするの?ヘルブラム機械帝国は世界で最も発達した蒸気機関技術を持っていて各国に様々な物を輸出しているけどそれが全て止まるのよ。そうなれば最悪世界恐慌になる可能性もあるんだから安易な行動は出来ないの。それくらい分かるでしょ?」
「……たくっ。分かったよ。ただ、相手の出方次第によってはそれなりにやらせてもらうからな」
「それに関しては問題無い。――シズク。俺の考えを伝えてくれてありがとな」
「そんなの当然じゃない。ユノの為に動くのが私の役目だもの」
ふふっと妖艶に微笑みながら言った言葉に嘘偽りはない。彼女は何時でも俺の為に動いてくれるし、どんな時でも味方でいてくれる。本当に掛け替えのない存在だよ。
という思いを目線に込めて送った後、話の続きを始める。
「少し話が逸れましたが、基本的な方針としては先ほど言ったような形になります。恐らく話し合いで決着は付くかと思いますがベルトイア氏はどう思いますか?」
「そうですね……。ユノさんが直接出向くのならば混乱は最小限――いや、高確率で事件は揉み消すでしょう。幾ら皇帝陛下といえどユノさん達と事を構えるなんて事は絶対にしたくないはずですから」
「では、問題はありませんね。ここまでで何か質問や疑問はありますか?」
俺の言葉に対して誰も口を開かないという事は何も無いという事でいいのかな?
「質疑は無いようなのでこれで終わりにしたいと思います。お疲れ様でした」
背凭れに寄りかかりふぅと一息つく。ずっと喋っていたから疲れたよ。気力が戻るまで暫し休んでいようかな。帰るのはそれからでもいいだろ。
「お疲れ様でした。お飲み物と軽食をご用意致しますね」
「あー、お気遣いは大変嬉しいのですが飲み物だけで結構ですよ」
「分かりました。少々お待ち下さい」
オフレ殿下――もう話し合いは終わったんだからヴァネッサでいいか――が気を使ってくれる。本来であれば軽食も頂くべきなんだが、俺達は余り食事を摂らないからなぁ。無理に食べるのも違うし、申し訳ないが断らせてもらった。
「ユノは次の食事を摂るのは何時なの?」
「え~と、一週間後かな」
「そう。じゃあその時はユノの家でご飯を食べたいわ」
「構わないが、食材の調達に調理と朝から大変だぞ?普通に外食した方が楽だろ」
「だってそれだと味気ないじゃない。久し振りにユノに会えたんだし甘えたいの。それに全部私がやるから大丈夫よ」
「それなら、今度の食事会は俺の家で開催するか。ユキも手伝うしシズクの負担も多少は減るだろ」
「ユキさんが手伝ってくれるなら百人力よ。なんなら私の出番は無いかもね」
「はははっ。確かにあり得る」
ユキは完璧超人だからなぁ。なんでも卒なく熟す上に作業も早いから一般の人では付いて行けない位だ。まあそのおかげでズボラな俺でもこうしてまともな生活が出来ているんだけどね。などとユキへの感謝を心の裡でしていると不意にヴァネッサが話しかけてきた。
「あの、ユノ様に質問があるのですが宜しいでしょうか?」
「何でも聞いて下さい」
「皆様左手の薬指に指輪をしていますが、ご結婚されているのでしょうか?」
「あー……。結婚しているのはゴロウだけです。他の面々は未婚ですよ」
「そうなのですね。……指輪のデザインが細部は違いますが似ていますよね。カスミ様も同じような指輪をしていましたし」
「実は昔俺が作った物なんです。余り手先が器用では無いので不格好で恥ずかしい限りですが」
「そんな事はありません。シンプルながら洗練されていて、私は好きです」
「有難うございます。そう言ってもらえると幾らか救われます」
「ユノ様の作った指輪ですか……羨ましいです」
「そんな羨むほどのものでは無いですよ。実際身内……というか限られた人にしか渡していませんし」
「そうなのですね。少数しか製作していないという事は希少価値が跳ね上がりますね。今までも欲しいという人は大勢いらしたのではないですか?」
「居ましたね。懇意にしている相手から要望があった時は本当に断るのに苦労しました。――指輪には特別な意味と決意が込められているのでおいそれとは譲渡できないので」
「内容をお聞きしても?」
「すみません。私の根幹にかかわる事でもあるのでお話しすることは出来ません」
「失礼しました。余りにも不躾でしたね」
「いえ、お気になさらずに」
気にしない素振りでヴァネッサが言ってくれたがやはり心苦しいな。でも俺の目的に未来ある人を巻き込む訳にはいかない。今はこれで良いんだと自分に言い聞かせて少し荒れている心の裡を治める。
少し場の空気が重くなってしまい何となく居心地が悪い。何かいい話題は無いかと頭を捏ね繰り回しているとアヤメが話しかけてきた。
「ユノさん。お茶が冷めてしまいますよ」
「んっ、ありがと」
「何か考え込んでいらっしゃいましたが、問題でもありましたか?」
「いや、特に無いよ。ただ面白い話題は無いかなって考えてたんだ」
「私はユノさんが居てくれるだけで楽しいですし、無理に話さなくても良いと思いますよ」
「私もアヤメと同意見かな。別に会話が無いと気まずくなるような関係でも無いし」
「ありがとな。少し気が楽になったよ」
こういったさり気無いフォローをしてくれるのがアヤメとシズクの良い所だ。彼女達のこういった気遣いに何度救われた事か。
「あの、私も会話が無くてもユノ様がいらっしゃるだけで心地良いので大丈夫です」
「あははっ……気を使わせてしまいましたね。――そういえばオフレ殿下が和国へ来るまで二ヶ月ほどですが準備は順調ですか?」
「はい。屋敷の引き払い手続きも終わりましたし、仲の良い人との挨拶も済ませしました。通っている学院に関してましてももう退学致しましたので問題ありません」
「それではこちらで出来るほぼ全ての準備が終わったという感じですね。後は和国に来てからの手続き等ですがそれは先になりますし」
「そうですね。とは言え家に関しては用意して貰えますし、私がやる事は少ないので助かっています」
「その辺りに関してはこちらの仕事なのでお気になさらず。――そう言えば学院はサクラと同じ所に通うとか?」
「はい。私自身の立場もありますし、身の安全の確保の為にもサクラ様と同じ学院に通った方が良いと言われましてその様になりました」
「成程。確かにあそこなら警備も確りしていますし、通っている学生も身元が確かな人達ばかりなので安心出来ますね。何より私の職場からもそこそこ近いので何かあった時はすぐに駆け付けられる言うのが大きいです」
「そうなのですね。それは初耳です」
「あー、担当者が言い忘れたのかな?どちらにしろ何があろうとオフレ殿下の事はお守りするので何も心配はいりませんよ」
俺の言葉にヴァネッサが頬を桜色に染めて俯いてしまう。変な事を言ったつもりは無いんだけど何か気に障る事でもあったんだろうか?不思議に思っているとシズクからチクリとした言葉が飛んでくる。
「もう、そういう所だと思うわよ。しかも無自覚というのがまた質が悪いんだから」
「まあ、これはユノの癖みたいなもんだし今更だろ。それにお前だって嫌いじゃないだろ?」
「んっ、まあそうだけど。でもそう言うのは私だけにして欲しいって言うか……」
「あっはははは。それは無理だろ。ユノにそんな器用な芸当は出来ないって」
シズクとコウが何やら俺に関して話しているがなんとなーく悪口を言われている気がする。
「おい、お前等。もしかして俺を馬鹿にしているのか?」
「んなわけないだろ。さっきみたいなセリフはユノらしくて良いなって話をしてたんだ」
「本当か?」
「当たり前だろ」
「んっ。ならいいけど」
腑に落ちない所もあるが今はこの辺で許してやるか。それよりもヴァネッサだがいつの間にか元に戻っていた。今はニコニコとしながらこちらの事を見ているのでさっきの件は気のせいだったのかな?あまり引き摺るのも良くないしここら辺でこの件は終わりにしよう。
――っとなんだかんだで結構時間が経っているな。そろそろいい時間だしここらでお暇しようか。
「それじゃあ、必要な事も話し合いましたし私達はこの辺りで失礼致します。何か問題がありましたら連絡いただければ即座に対処しますので」
「分かりました。その時はよろしくお願い致します。玄関までお見送りしますね」
「ありがとうございます」
こうしてヴァネッサ邸を後にした俺達は自分たちが泊る宿へと向けて歩き出す。
さて、明日から色々忙しくなるぞと心の中で算段を立てつつ夕暮れの中を進むのだった。




