Ep:24
初日の護衛が終わり今は帰宅の途についている。えっ、普通に帰るの?と思う人も居るかと思うが、今回の護衛任務に関しては朝~夜までと時間が決まっているのだ。二十四時間任務に就くのは不可能だし、二人なので交代でというのも難しい。それに帝国から一緒に来ている人達もいるのであくまで日中のみ護衛をするという形になっているのだ。して、カスミと二人で帰っているがこのまま家へと行く訳ではなく、話したい事もあるので酒場に向かっている。初日を終えてお互いの考えや意見を交換した上で今後について擦り合わせをしたいし、慣れない任務で息が詰まっただろうから息抜きも兼ねて誘った訳よ。勿論返事はOKで今に至るというね。
何軒かある行きつけのお店に入店し、注文した飲み物が届いた後乾杯をする。
「「乾杯」」
グラスは合わせず、軽くグラスを持ち上げてそのままお酒を飲む。一応カジュアルな場だけど、グラスをカチンッと合わせる事はしない。個人的に嫌いなのもあるし、変な癖がつくのを避ける為でもある。フォーマルな場でいつもの癖でやってしまったら白い目で見られるし、普段からそこら辺は気を付けている訳ですよ。
「ふぅ~。……慣れない任務で大変だったろ?」
「そうですね。色々と気を使う場面もありましたし、いつもとは勝手が違って少しだけ疲れました」
「だよな。しかも長時間気を張らなきゃいけない上、言葉遣いもかなり気を付けていたからもうクタクタだよ」
「今夜はぐっすりと眠れる事間違いなしですわね」
「まあね。――それはそうと、カスミから見てオフレ殿下はどうだった?」
「そうですわね……一言でいえば平凡でしょうか。皇女として十分な教育を受けているのは分かりましたし、立ち居振る舞いや知識に関しても問題はありません。ですが、特筆した要素が無いように思えます。例えばカリスマ性だったり、民に愛される容貌だったり、内政に特化した能力であったりと様々なものがありますが彼女にはどれ一つとして備わっていませんでした。言葉は悪いですが、そこら辺の上級貴族と同じ程度であり皇女としては相応しくないかと思います」
「やっぱりか」
「というと?」
「俺も同じ印象を受けたんだ。全てが平均よりも上だけど、突出した何かが無い。秀才ではあるが天才では無いって感じでさ。あとは覇気が無いのも気になったね。国の象徴たる皇帝に連なる人なのに纏っている気配は一般人と変わりないっていうのがどうもね……」
「うーん、正妻の子では無く妾腹の可能性もありますわね。――それでも余りにも普通過ぎますが」
「問題は何かしらの理由があってそうなったのか、生まれつきそうだったのかだな。必要な教育をされている以上無下には扱われていないのだろうが、気になるな。……それとこの国に来た正式な理由も未だに説明されていないし」
「以前話した推測でほぼ間違いないと思いますが、答え合わせは必要ですからね」
「あぁ。気になる点は色々あるが、それは今後探っていけば追々分かるだろうし今は焦ってもしょうがないか。それに刺客云々もあるしな」
「それですが、本当に刺客が放たれるのでしょうか?私にはどうにも皇女を狙う理由も意味も無いように感じますが」
「どうなんだろうな?帝位継承権争いでとは聞いているが」
「それでも和国で皇女が殺害となれば国際問題になりますし、帝国に向けられる目もかなり厳しくなるでしょう。そもそもの話ですが、ユノさんに多大な迷惑が掛かるわけで親交が深い国や組織は躍起になって非難しますよ。最悪数ヶ国連合で制裁を加える可能性もあります」
「そうなんだよなぁ。わざわざ俺が居る所で殺すメリットが無いんだよ。それに言っちゃ悪いが今日一日見た限りオフレ殿下は無害であり、居ても居なくても同じでそこまで価値があるわけじゃない」
そう、皇女という立場にはそれ相応の価値があるが、それでも殺す程かと言われれば首を傾げざるを得ない。人畜無害なんだから放置でも何ら問題は無いはずなのにわざわざ殺そうとするのも不可解だ。それに脅せば継承権放棄も簡単にしそうだしな。となると継承権争いに見せかけた私怨の線も有り得るのか?でも自国が多大な損害を受けてまで恨み辛みを晴らそうとはしないだろうし。その点を受け入れた上で実行すると言うならばそれは最早狂気と言うしかない。
そもそも皇女を殺せるような組織なり、人なりに伝手を持ち依頼できる人なんて限られているからそこから辿られれば自分に行きつく可能性も高い訳で。
どうにもキナ臭いんだよなぁ。軍の情報局にそれとなく依頼する事も出来るが、内容が内容だけにそこまで詳しいことは分からないと思うし。というか一軍人である俺が首を突っ込む事じゃないんだけど、どうにも気になってしまうんだよ。
「オフレ殿下が気になるのですか?」
「まさかカスミに心を読む能力があるとは思わなかった」
「ふふっ、ユノさんの考えている事なら何でも分かりますので」
ヤンデレみたいな事を言うが、正直怖いというよりもだろうなぁ~って感じが強い。人並み以上に長い付き合いだし俺もカスミや他の隊員の考えはある程度読めるから、まあお互い様だろう。
「理由は特に無いんだけど、何か気になるんだよな。――ヘルブラム機械帝国ってさ物凄く科学が発展しているだろ。そのせいで妖とかの存在は空想上のものであり、子供が夢想する程度って言う考えなんだ。でもオフレ殿下は真剣にその存在を捉えていて、熱心に勉強もしている事が慰霊塔でのサクラとの話で分かってさ。好感を持ったし、そのせいもあるんだろうか?」
「確かに、あの国はそうですわね。なんでも科学と機械で証明出来ると思い上がっていますから。そういった驕り高ぶる態度は心底腹が立ちますわ」
「俺も正直好きな国では無いな。技術の発展は世界にとって好ましいけど、そのせいで大事なものを無くしてしまっては本末転倒だし、それに気づかずに前へ進んでいるのは悲しいね」
「一度痛い目に見るか、滅ぶしかないと思います」
「とはいっても彼の国も大国としてその名を轟かせている訳だし、難しいだろ。それに帝国が輸出している機械には俺達もお世話になっている訳だしさ」
「それは……そうですが」
「カスミだって洗濯機や冷蔵庫が旧型の碌に冷えない上に、すぐ故障するのだったら嫌だろ」
「嫌ですわ!調子が悪くなるたびに叩くには大変ですし、それで良くなるのも一時的ですから面倒なんですよね」
「分かるわぁ。何回かはそれで対処できるけど、次第に反応しなくなって買い替えになるっていうね。そう言う意味では今は本当に便利になったよな」
「ですわね。数十年前を思えば考えられませんわよ」
「だろ。そう言う点でも帝国の恩恵は受けているんだし、仮に亡国になったら半世紀は逆戻りする事になるぞ。そうなると……」
「駄目ですわね。色々と思う所はありますが、帝国にはもう少し存続してもらいましょう」
「ははは。現金だな」
「もうっ、そんなこと言わないで下さいませ」
プクッと頬を膨らませながら怒る姿は、いつもの美女然とした感じではなくあどけない少女の様でとても可愛らしい。ふとした時に見せるこうした表情はズルいと思う。所謂ギャップ萌えというやつだな。あまりにもキュンキュンしたので無意識で頭を撫でようとしてしまったが寸での所で止めることが出来た。カスミなら怒らないとは思うが、妙齢の女性の頭を気安く撫でるのは如何なものかって所だしな。
「そういえばさ、カスミはここ数年帝国に行ったか?」
「いいえ、行っておりませんわ」
「そうなんだ。俺もかれこれ帝国に遊びに行ったのが百年くらい前だけど今は大分変っているのかな?」
「そこまで年月が空いているのなら、別物になっていると思いますわ。大規模な再開発を何度も行っておりますし、スラムなども一掃されたと聞いております」
「スラムを一層とかかなり強気な行動をしたんだな。追い出した住民の仕事や、住居なども用意しないといけないし、簡単な事では無いだろ」
「それが、人伝に聞いた話になりますがそう言った手当は一切せずに強引に住民を追い出して、すぐに更地にしたうえで開発に着手したみたいです」
「はぁ!?それじゃあ恨みを買うだけだろ。それに追い出された人達は犯罪者になるか、反皇帝派組織に属するか、野垂死ぬかしか道が無いじゃないか。わざわざ自分の敵を作るとか馬鹿なのか?」
「前皇帝が何を考えていたのかまでは分かりかねますが、それを踏まえてでも街を発展させたかったのではないでしょうか」
「はぁ……。大の為に小を切り捨てるって考えだな。時としてそれが必要な場合もあるけど、今回の話に限って言えば最低限の保証くらいは出来ただろうに。――なんか帝国に対して悪いイメージが付いたな」
「私もその話を聞いてから良い印象は持っていませんわ」
だろうな。この話を聞いた後でも帝国万歳とか言う奴が居たらそれはただの偏執的な愛国者か、脳味噌が足りてない奴だろう。あー、明日からオフレ殿下達を見る目が変わってしまいそうだ。勿論仕事に私情は持ち込まないつもりだし、護衛任務は確りと遂行するけどどうにもね……。
「取り合えず色々なものを胸の裡に仕舞い込む為にも飲むか」
「そうしましょう。こういう時こそお酒の力を借りるべきですから」
「普通の人みたいに泥酔出来ればいいんだが、精々がほろ酔いというこの悲しき身を今だけは恨むよ」
「それでも、気分転換になりますしこうしてお酒の席でしか話せない事も多いですから差し引きプラスではないですか?」
「うん、そうだな。――よし!明日に影響を残さない程度に飲みまくるか」
「お供致しますわ」
こうして、男女二人で飲み交わす時間は人々が眠りにつく頃合いまで続いた。
明けて翌日。前日というか日付が変わるまで飲んでいたので今日だが、二日酔いになる事もなく元気にしております。基本的に俺も含めて隊の皆は泥酔する事が無い。酒に強いという次元の話ではなく、アルコールの分解速度が常人の比では無いのでどれだけ飲もうと酷く酔うことが出来ないのだ。この体質にはメリット・デメリットが当然あるがまあそれは今は置いておこう。
――さて、本日も護衛任務にあたるわけだが今回訪れるのは工業地帯となる。帝国の人からすれば和国の工業技術がどの程度なのか知ることが出来る良い機会なのでこれを逃す手は無いだろう。視察に関しても当たり前だが帝国側からの要望があっての事だ。といっても見せられる部分しか行かないので、一般的な技術水準しか分からないだろうがそれでもある程度は推し量れると言うもの。個人的にはあまり見せたくないと思ってしまうが、上が了承しているなら従うのみ。個人の意見など通るわけも無し。
縦社会の悲しさに思いを馳せていたいが、そうもいかない。何故なら間もなく工業地帯に着くからだ。
「それでは、もう少しで到着するのでマスクの着用をお願い致します」
「分かりました」
工業地帯は蒸気の濃度が濃い為例外なくマスク着用が義務付けられている。まあ、無視する事も出来るがその場合身体に異常をきたし、病気になる確率が跳ね上がる。それでもマスクなんて着けるか!という猛者は早々いないだろう。……というかそんなバカは長い時を生きているが見た事が無い。そう言う事で皇女殿下であろうともマスクは必ず着用しなければいけない。人によって――特に女性――は化粧や髪型が崩れるので嫌がる事も多いのだが、オフレ殿下は素直に従ってくれたので安堵したのはここだけの話だ。
然程時間も掛からず到着し、外へと降りたつと白に染まった世界だった。
パイプから吐き出される煙が辺りを包み込み、白に染め上げている。そして蒸気の熱で他の街区に比べてかなり熱い。季節的には晩秋なのだが薄着でも十分なくらいの熱量があたりに漂っているので、それを踏まえて俺達の格好も夏に近い物となっている。
「お話には聞いていましたが、暑いですね」
「そうですね。工業施設が密集していますから、どうしても蒸気の熱で暑くなってしまいます。この辺りは冬でも夏服で歩ける程なんですよ」
「そうなんですか?では、夏場は信じられない位暑くなるのでしょうね」
「はい。一応街区全体を冷やす様にはしているのですが、それでも摂氏四十度を下回る日は無いです。それにマスクも街区を出るまでは常時着用なので地獄だと思います」
「それは……私ではとてもでは無いですが耐えられません。ここで働いている人達は倒れたりしないのでしょうか?」
「長期間働いている人は耐性が付くみたいで平気なのですが、働き始めたばかりの人や、用事で訪れた人等は結構な確率で熱中症で倒れて搬送されていますね。そう言う事もあって和国の人間は基本的には夏場は工業地帯には近寄らないというのが暗黙の了解となっております」
「それは賢明な判断ですね。今も少し汗ばんでいますし、動くと滝の様に流れ出すかもしれません」
「ははは。一応今回見て回るルートはある程度涼しい場所を選んでいますので大丈夫だと思いますよ」
「そうですか。一安心しました」
ふむ、昨日は大分緊張していたみたいだけど一日経って大分落ち着いたかな。冗談も言う様になったし、これは少しは心を開いてくれたと見ていいのではないだろうか?このまま帰国する日まで何事もなく過ぎれば結構仲良くなれたりして。――そうそう。仲良くと言えばサクラとも初日で意気投合したみたいだしそのまま良い関係でいてくれたらと老婆心ながら願っている。立場的にも心置きなく話せるだろうし、年齢も近いから良い友人となれそうだしね。なんて事をサクラが聞いたらオジサン臭いとか言われそうだから心の裡に仕舞っておくけどさ。
「それでは最初に案内しますのは――」
そうして始まった様々な工業施設の見学だが、特に問題も起こらずに進んでいる。見ているのは一般利用される蒸気機械の製造現場や、見せても問題無い開発現場などだ。技術的には帝国に二・三歩遅れているので驚きや新鮮さは無いだろうが、それでもこういった場所を見る機会など皇女と言えども早々ないので興味津々に辺りを見回したり、質問したりしていたのが印象深い。
特に武器の製造現場では帝国とは全く違うので俺にもかなり質問をしてきたのには驚いた。そう、こんな感じだったんだよ。
「ここでは主に武器の製造開発を行っています。民間用と軍用で製造現場は違いますが、今回ご案内するのは民間用となっています。武器と一口に言っても様々な種類がありますが、和国では近接武器が主流であり銃などの遠距離武器は民間ではあまり使われていません。軍では状況に応じて使う事もありますが、やはり主武装は近距離武器になります」
「銃をあまり使わない理由は何かあるのでしょうか?」
「そうですね……。正直なところを言わせてもらうと対妖魔戦において効果が薄いという理由です。銃で妖魔に確実に損傷を与えるには大口径で、特殊な弾頭を使用しなければなりません。ですが製造費が莫大な上、扱いが難しいので使える人が限られてしまいます。そう言った点を踏まえて銃の使用は一般的ではありません」
「成程。……近接武器――剣などでは敵に近寄るので相応のリスクを負うと思いますが、その点はどうお考えですか?」
「妖魔と戦う上で危険は切っても切り離せません。それに怯える様ならはなから戦わなければ良いだけです。最低限の覚悟も無しに戦場に出る等お話になりませんから。それと、剣に限らず近接武器であれば低クラスの妖魔ならあまり実戦経験が無い者でも十二分に戦えるという点も理由としてはあります」
「そうなのですね。それは目から鱗が落ちる思いです」
「帝国は銃がメインの武器ですから、余りこういった話は聞かないのかもしれませんね」
「はい。……我が国でも近接武器の練度を上げた方が良いのかも……」
小声でそんな事を言うオフレ殿下だが、それは難しいと思うな。帝国の銃主義は長いし、今更剣でも戦う様になんて言われて、はい、分かりました!とはならんだろう。それに銃である程度は戦えているというのもある。そうなれば現状を無暗に変える理由がないし、なにより現場が混乱してしまう。例え皇帝の鶴の一声があったとしても軍部としては猛反発するだろうし、採用はされないだろう。和国にしても今から使用する武器を変えますとか言われたらふざけんじゃねぇ!ってなって、最悪クーデターが起きてしまうからな。だからこそそう言った話を軽々にしてはいけないんだけど、オフレ殿下はその辺りを理解していない様に見える。実際、お付きの護衛の人とか苦み走った顔をしているしな。
「何はともあれ、その国ごとに特色がありますから無駄に変えると言うのは良くないと思いますよ。私も現場の人間なので今から武器を変更しろと言われたら思う所がありますし」
「そうですよね。少し軽率な発言でした。……ところで、ユノ隊長が使っていらっしゃる武器は剣では無く刀とお聞きしましたが、今携帯していらっしゃるのがそれなのでしょうか?」
「はい。これが刀ですね」
そういって軽く手を持ち上げて、袋に入った刀を見せる。
「あの、見せてもらう事は出来ますでしょうか?」
「構いませんよ」
袋から刀をスルッと取り出し、袋は横にいるカスミに手渡す。
そして両手で、見えやすいように持ち上げた。
「これは……美しいです」
「刀は和国伝統の武器でして、今は余り使われていませんがそれなりに愛好者はいるんですよ」
「これ程美しいなら美術品としての価値もありますね。それにしても、素晴らしい」
「確かに美術品として蒐集している方もいらっしゃいますが、個人的には武器なので使ってこそその真価を発揮すると思っています。……あくまで個人的な意見であり、蒐集家を否定してるわけではありませんし、刀匠によっては芸術品として生み出す人も居らっしゃるのであまり声を大にしては言えませんが」
「武器として使われるべきという思いも分かりますし、美術品・芸術品として飾りたいという思いも分かります。――難しい問題ですね」
「まあ、その辺りは所有者がどう考えるかだと思いますし、その人が思う様にするしかないんではないでしょうか」
「ですね……。ところで、お願いがあるのですが」
「なんでしょうか?」
「刀を触らせては貰えないでしょうか?」
「………………」
あー、そう来たかぁ。皇女殿下の頼みとあれば『どうぞご照覧ください』っていうのが普通なんだろうが生憎とそうは出来ない事情があるんだよな。これが普通の刀なら問題はないんだけど、そうじゃないし。俺以外の人が触れると物凄く機嫌が悪くなって、数日は尾を引くんだよ。それに相性が悪いと最悪持った瞬間に死ぬ可能性もある。俺の刀を持ったら皇女殿下が死んでしまいました、なんて笑えない。国際問題どころか帝国と和国で戦争が勃発する可能性すらあるからな。という事でここはなんとか理由を付けて断るしかないだろう。
「申し訳ございません。刀――武器は私達にとって半身であり、無暗に他人に預けることは出来ないのです。自身の命を預け、共に戦う仲間ですのでご理解いただければと思います」
「武器なのに仲間……半身なのですか?」
これはどう説明したもんかな。和国の軍人ならば理解してくれるんだけど、他国の人だと難しいか。
「一般的に武器の扱いは言葉は悪いですが使い捨てですよね。罅が入ったり、損壊してしまえば新しいものに交換する。または、予備の武器に切り替える等で対応します。ですが、CODE零に所属している人は違います。ただ一振りの刀を生涯の友として、自身の半身として扱うのです。あまり理解されない考え方だとは思いますが、それが我々の誇りであり、矜持でもあるんです」
「それは不躾な事を言ってしまいすみませんでした」
「いえ、お構いなく。この事に関しては調べても中々分かりませんからね」
「そう言ってもらえると助かります」
ふぅ、何とか切り抜けられたか。俺が言った事は半分は正解で半分は嘘だ。本当の事を明かせば眉唾物の話になるし、妖や神についてもかなり詳しく理解していなければいけないので言える訳が無いというのもある。仮に話した所で五分の一も理解できないだろうがね。
取り敢えずはこの話はここで切り上げて後は当たり障りのない感じで適当に見て回ればいいだろう。
かなり雑な感じになってしまうが、変に探られるよりマシだからな。
という感じで二日目は過ぎていった。




