Ep:22
今迄情報公開が一切されていなかった和国に来訪する要人についての情報がようやく流れてきた。予想した通りヘルブラム機械帝国の皇女殿下が来るそうだ。その他にもちと厄介な内容が含まれていて大なり小なり騒動が起きそうな予感がしている。面倒事は勘弁なんだけど、決まった事に今更止めますとは言えないからな。もう穏便に護衛任務が終わる事を祈るしかないよ……。
思わず溜息が漏れそうになるのを堪えつつ、眼前に居る面々を見回す。全員揃っているのを確認した後、今後の事についての説明を始めた。
「まずは俺の護衛任務について話す。護衛対象はヘルブラム機械帝国の皇女殿下で、滞在期間は一週間となっている。帝国からも侍女や護衛の者が来るらしいので、あくまで俺は護衛兼和国の案内係りみたいな立ち位置になる事が決まった。件の皇女殿下については殆ど情報が無いので実際に会うまでは判断がつかないのが痛い所だが、他国で問題を起こすようなお転婆では無い事を願う。あとは、帝位継承権争いが勃発しておりその関係で刺客や暗殺者が送り込まれる可能性が高いと向こうから情報が伝えられてるので、お前達にもその際は協力してもらおうと思っているのでそのつもりでいてくれ。それと、今回の任務は対象が女性という事もあり男の俺では何かと不都合が出る場面もあると思うので、この中から一人俺と同じ任務にあたってもらう」
最後の言葉を言った瞬間に女性陣の目の色が変わった。選ばれるのはたった一人。誰がその切符を手に入れいるのかソワソワとしている。その様子にクスッと笑いが漏れてしまうが、誰にするかはもう決めている。
「選んだのはカスミだ」
「やった!」
小さく胸の前でガッツポーズをとる姿はなんとも可愛らしい。対照的に選ばれなかった面々は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。そんな中アヤメが質問を投げかけてきた。
「カスミを選んだ理由をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?」
「構わないよ。相手が皇女という立場なので礼儀作法に始まり言葉遣い、その他諸々非常に気を使わなくてはいけない。その点カスミであれば名家出身なのでその辺りは全て習得しているし、様々な貴族や名家・旧家の人間と渡り合っているので様々な面で安心だろう。あとは俺が何かやらかしそうになった時に教えてもらいたいっていうのもある」
「成程。それでしたらカスミが適任ですね」
「んっ。理解はしても納得は出来ない感じかな?俺としても一人だけ選ぶのは心苦しんだ。そこは分かって欲しい」
「うぅ……隊長と一週間も離れ離れになるのは寂しいけど仕方ないですよね」
「スズネ、元気出して。私も同じ気持ちだけど耐えるしか無いんだよ」
「シオリ~」
これって俺が完全に悪役じゃね?いやさ、決めたのは俺だけどちょっとキツイな。特に泣きそうな顔をしているのが心に刺さる。
「あの……さ。選ばれなかった面々に対するお詫びって訳じゃないけど護衛任務が終わったら皆で温泉に行かないか?二泊三日くらいでさ」
「「「「!!!」」」」
おっ、喜色満面と言った感じで凄い喜んでいる。もうさっきまでの寂しさも、今にも泣きそうな表情もすっかり消え去っている。変わりにキャイキャイと旅行についての話をし始めているよ。
「おーい、お前達気が早いぞ。最短でも一月後くらいなんだから今からはじゃいでいたら疲れるぞ」
「だって旅行ですよ!しかも温泉。うー、今から待ち遠しいです」
「ねっ、スズネ。温泉と言えば浴衣だよね。今度のお休みに新しいの買いに行かない?」
「いいよ。可愛い柄の浴衣があるといいなぁ」
駄目だ。完全に頭が温泉旅行にシフトしている。これじゃあ俺が何を言っても碌に頭に入らないだろうしここら辺で終わるか。伝えるべき事も伝えたし大丈夫だろ。追加で情報が入ればその都度連絡すればいいだけだしな。
「ふぅ……」
「お気持ちお察しします」
「アヤメ。うん、まあ俺が居ない間大変だとは思うけど隊の事を任せたぞ」
「はい、お任せください。身命を賭して当たらせて頂きます」
「いや、そこまで重く考えなくても大丈夫だからな。――本当だからな」
「勿論です」
輝く笑顔を向けてくれるが、マジで頼むぜ。適当に隊員を見てくれていればいいだけだからなとは言えなかった。仮にも副隊長なんだ。上手くやってくれるだろう。うん。
side カスミ
今日は本当に驚く事が有りました。隊長が護衛任務を受けているのは知っていましたが、まさか追加人員が決定されそれが私になるなんて思ってもみませんでしたわ。決定理由も皇族相手を相手にしても問題ない礼儀作法やその他諸々が備わっているからという、嬉しい内容でした。この時ばかりは名家に生まれてよかったと心から感謝しました。利権争いや、後継者争い、そして分家同士での諍いなど愚にも付かない事ばかりしている馬鹿共の巣窟でも偶には役に立つのだなと少しだけ考えを改めるくらいには嬉しかったのです。嬉しいと言えば一週間もの間隊長と毎日二人っきりで過ごせるというとんでもない幸運に恵まれたのもそうでしょう。こんな機会など隊長と出会ってから初めての事ですし、緊張してしまいます。というか長い期間二人で過ごすというのは最早夫婦と言って良いのでは?――隊長と夫婦ですか。呼び方は『あなた』か『旦那様』がいいのでしょうか?う~ん、『ご主人様』の方が対外的にも良い印象を与えそうな気もしますが……。その辺りは要相談ですわね。あぁ、そうそう。夫婦となったからには住む場所も一緒じゃなきゃいけませんし、私が隊長の家に移り住む形になるから準備をしないといけませんね。ユキさんにもご挨拶をしなければいけませんし、披露宴の準備も早めにした方が後々楽ですね。もう、やる事が一杯で参ってしまいますが、心が浮き立ってどうしようもないです。
えっ?護衛の件はどうしたんだって?そんなのおまけですわよ。大体私達がやるべき内容の仕事ではありませんし、片手間でやればいいんです。多少の怪我をするくらいなら許容範囲でしょうし、死ななければ万事問題無し。そもそもの話今回の護衛任務に関してはかなりキナ臭いですし、食事会で会った帝国公爵のベルトイアが胡散臭すぎて嫌いですし隊長の御指名でなければ絶対に受けない仕事ですからね。……いっその事纏めて殺せばすべて解決するのでは?とも思いますが、それは最終手段ですね。隊長に危害が及ぶならば問答無用で帝国ごと滅ぼしますが、取り敢えずは様子見と言った所ですか。
――大まかな方針が決まった所で、次にやるべきは身だしなみを整える事ですね。普段から外見は完璧に整えていますが、隊長と二人で過ごすのですからもっともっと磨かなくてはいけないのは当然です。髪に関しては任務の前日に美容室に行って整えてもらうとして、服も新調しましょう。任務中は軍の制服を着ますが、市街に出る場合は目立ってしまいますから私服でという事になる可能性もあります。そうなった時に着古した物では格好がつきません。あぁ、それと下着も同様に新調しましょう。普段はセクシーでありながら抑え目なデザインの下着を身に着けていますが、この際可愛い系や少し派手で目のやり場に困る様なデザインの物を選んでみるのも良いかもしれませんね。いつ夜伽に呼ばれても良い様に準備は万全にしておかねばいけません。いざその時になって困るような事態は何としても避けなければいけません。それは下着だけでなく身体にも言えますね。日々肉体を磨き上げているので胸が垂れたり、形が崩れたりと言った事は一切ありませんし、無駄なく引き締まった身体を維持しているので問題は無いと思います。勿論女性らしさも備えているので欲情しないという事は……ないと……ないはずです。強いて言うならもう少し胸が大きい方が良いくらいでしょうか。大きければ出来る行為の幅が広がりますからね。
私は処女なので一切経験がありませんが、男性は処女性を殊更重要視しますし多少下手でも許容してくれるでしょう。一応それなりに知識や情報を仕入れていますし、練習もしているので何も出来ずにマグロになるという最悪の事態は避けられますしね。そして夜伽をすれば必然的に子供を孕むわけで……。隊長のお子となればさぞ可愛いのでしょうね。うふふふっ、今から楽しみで堪りませんわ~!あぁ、私は今最高に幸せです!
side カスミEND
カスミが仕事そっちのけで妄想を膨らませているなど露知らず、日々は流れいよいよ今日から護衛任務が始まる。今回の来訪は非公式なので、大々的にお迎えはせず和国皇王であるゲンパク、そしてその家臣の中から重鎮のみが迎えるという形になる。その中には当然護衛である俺とカスミを居る。こういった畏まった場は何度経験しても慣れないし、落ち着かない。しかも場所が謁見の間ということもそれに拍車を掛けているのは言うまでもない。国外の皇族をお迎えするのだから非公式とはいえそこら辺の応接室でという訳にはいかないのは分かるが、どうもね……。面には出さずにソワソワしつつ待っていると、扉からよく通る声が聞こえてきた。
「ヘルブラム機械帝国よりお越しになりました皇女殿下御一行が入場いたします」
その声が響くと同時に扉が開き一行が入ってくる。最初に現れたのは、ある意味因縁深い相手あるベルトイア氏であった。次いでお付きの者に先導される様に来たのは皇女殿下その人。初めて見たが、一言でいえば小柄で可愛らしい少女である。ただ気になるのは皇族であるにも関わらず覇気が感じられない点だ。何処となく不安そうであり、元気がない様に見える。そもこう言った場で先に言ったような態度を見せるのは皇族にあるまじき行為であり、咎められるのは確実。さらに今回は他国に赴いているので尚更有り得ないのだ。見ようによってはそこらの町娘に見えるし、本当に帝国の皇女なのか?と疑ってしまうのも仕方ないだろう。そんな感想を頂きつつ見ていると、玉座の少し手前まで来て止まり、見事なカーテシーを行った後、口を開いた。
「ヘルブラム機械帝国から来ましたヴァネッサ・オフレと申します。まずはこの度の訪問を快く受け入れて下さり誠に有難うございます。――世界で一番栄えている和国にて見聞を広める為色々と勉強をさせてもらいたいと思います。また、至らぬ点が多々あり、ご迷惑をお掛けすると思いますが、何卒ご寛恕いただければ幸いです」
「こちらこそ栄えあるヘルブラム機械帝国の皇女殿下をお迎え出来た事、心より歓迎いたします。我が国は独自の文化がありますので、きっとご満足いただけるかと思います。また、何かご要望がありましたら遠慮なく言って下さい」
「ご配慮誠に有難うございます」
ふむ。ゲンパクとのやり取りを見た所、特に問題も無さそうだな。例えば緊張して皇女として礼に失した行いをするとかあれば先の様子も納得できたのだが……。
「皇女殿下が滞在中に護衛する者を紹介いたしますね。――我が軍のCODE零所属の隊長ユノと隊員のカスミです」
「CODE零隊長のユノと申します。この度は皇女殿下の護衛という大役を任ぜられ緊張しておりますが、身命を賭して任務にあたります」
「同じくCODE零所属のカスミと申します。護衛として全力で任務にあたる所存です。また、お困りの事などがあれば遠慮なく申して下さい」
「…………CODE零という事は世界の守護者様が私の護衛にあたるのですか?」
なんか凄いキョトンとした顔をしているんだけど。事前に話を聞いていなかったのかな?ウチのお偉いさんが情報を伝えないなんて事は有り得ないし、どこかで止められていたという事か?そうなると理由が分からないな。どうせ顔合わせで判明する事なのに隠しておく意味がない。そもそもの話俺に護衛をして欲しいって要望を出してきたのは帝国側だったし意味が分からんのだけど。
「はい。事前に情報をお伝えしていたはずですが?」
「えっと……」
「申し訳ありません。それに関してはこちらの伝達ミスです」
「左様ですか。では彼等が護衛にあたるのは問題ありませんか?」
「勿論でございます。寧ろ世界最高戦力であるユノ隊長と、カスミ隊員が居て下されば万難を排する事が出来ましょう」
おっと、ここでベルトイア氏が割り込んできたぞ。伝達ミスとか言っているが、ほぼ確実に止めたのは彼の判断だな。という事は俺への護衛要望を出したのも彼と見て間違いないだろ。どういう意図があってそうしたのかは分からないし、何がしかの画策をしているのは確定だが全容が全く見えない現状では手の打ちようもない。ここは静観するしかないか。
「過分な言葉を頂き有難うございます。――では一通り挨拶や紹介もしましたし、長旅でお疲れだと思いますのでこれにて会談を終わりとしたいと思います」
皇王――ゲンパク――の言葉を最後にして会談は終わりとなった。謁見の間から去って行く帝国の人達の後を追うように俺達も部屋から立ち去った。
最初に見学するのは皇居という事で、特に別の場所に移動するという事も無く今は貴賓室にて待機している。どうやら案内してくれる人が来るらしく、それまでの間帝国から同行している護衛や侍女の方に自己紹介をしている最中だ。
「ユノ隊長のお噂はお聞きしています。お会いできて光栄です」
「こちらこそ、帝国の近衛隊長とお会いできて嬉しいです」
等と軽い会話をしつつ、お互いに挨拶を済ませていく。俺やカスミの事は他国にも知れ渡っているので、こちらは相手の事は何も知らないのに相手は知っているというちょっと気持ち悪い……座りが悪い感じがするがそう言った感情を表に出すような真似は流石にしない。というか、皇女殿下――オフレ殿下がチラチラとこちらに視線を送ってくるので、表面を取り繕わなければいけないというのもある。
という様な事を考えていると、そのオフレ殿下が俺に声を掛けてきたではないか。
「あ……あの。今更ですが本当に私の護衛をして下さって大丈夫なのでしょうか?」
「はい、問題ありません」
「ですが、ユノ隊長は妖魔討伐が主な仕事であって護衛は職務外ですよね?私共がご無理を言ったせいで引き受ける事になったのでは?」
「そんな事は御座いません。確かに帝国からの要望はございましたが、引き受けたのは私の意思ですし上層部も納得した上で任務についていますのでご心配には及びません」
「そうですか……。それなら良いのですが」
どうやら理解はしても納得はしていない様子。まあ、それもそうだろう。自身の知らない所で勝手に話が進み、決定しているのだから面白いはずがない。継承権争いをしている誰かの策謀か、将又胡散臭さ全開のベルトイアが裏で糸を引いているのかは分からないが、こちらにとっても迷惑な話であるのは間違いないし、正直そういうのは別の所でやってくれって感じだ。それとオフレ殿下についてだが、短い時間だが幾つか分かった事が有る。まず、権力はかなり小さいだろうという事。それは同行した人数でも分かるし他国にまで刺客を送られるのは、力が無いと見做されているからだろう。なまじっか容姿が良い為さっさと継承権争いから脱落して、適当な貴族にでも降嫁すれば無害だし自身に影響を及ぼす事もないのでそう言った面からも色々仕掛けているのかもな。会談の際に感じだ覇気の無さや、元気の無さは前述した要因が重なり、日々圧力を掛けられた結果と考えれば辻褄が合う。といっても俺に出来る事は何も無いが。下手に干渉でもしようものなら国際的な問題になるし、一個人が帝位に絡むあれこれに関われるわけも無いからな。触らぬ神に祟りなし、君子危うきに近寄らず等の格言通り対岸の火事として見ているのが無難だろう。――そう自身の立ち位置を決めた所で扉がノックされ予想だにしていなかった人が入ってきた。
「失礼致します。本日皇居の案内をさせて頂く龍堂院桜と申します。気軽にサクラとお呼び下さい」
「初めまして。私はヘルブラム機械帝国の第二皇女ヴァネッサ・オフレです。私の事もヴァネッサとお呼び下さい」
「分かりました。ではそう呼ばせて頂きます。――では早速ですが案内をしたいと思いますが、問題ございませんか?」
「はい、宜しくお願い致します」
おいおい、まさか案内役がサクラなんて聞いていないぞ。てか皇女が案内とかおかしいだろ。というか学校はどうしたんだ?休校という事は無いだろうし、もしかしてサボり?いや、サクラに限ってそんな事はする訳ないし皇女御一行の案内の為にわざわざ休んだのかな。うーん、そこまでしてやりたかったのだろうか?かなり面倒臭い仕事だと思うんだけど……。
「ユノお兄様にお会いしたくて、引き受けちゃいました」
サクラが自然に俺の傍まで来て耳打ちしてきた内容は、まるで俺の心を読んだかのようなものだった。
「ちゃんとゲンパクにも話は通しているんだろうな?」
「勿論です。お父様には確りと伝えてありますのでご安心ください。ふふっ、こうしてユノお兄様と会える時間が増えるのは嬉しいです」
「それは良かったが、案内の方もよろしく頼むぞ」
「了解です」
小さく敬礼しつつ『了解です』と言ってきたが敬礼は下位の者が上位の者に対して行う動作であって、俺にしてはマズいんだよな。単純に俺がサクラより上の立場って事になるからさ。……一応帝国の人達からは見えてはいないと思うけど、こういう肝が冷える行為は控えて欲しいと思う俺であった。
そうして始まった皇居見学会だが、一口に見学と言っても見せられる部分だけを見て回るとしてもかなりの時間が掛かる。それこそ一日、二日では到底足りない程だ。なのでここぞという場所をピックアップして回っているのだが、それでも半日はかかるだろう。今は晩秋なのでもっとも見てもらいたいであろう桜並木は残念ながら観賞は出来ないのが残念。あれはまさに圧巻だからなぁ。機会があれば一度は見て欲しいと思う。――とはいえ一番がそれであって他にも見どころは沢山ある。例えば千本鳥居やその先にある神社はこれぞ和国と言えるものだろう。独特な静謐と神聖さに満ちた空間というのは人によっては圧迫感を与えるが、何がしら心に訴えてくるものが必ずあるはずだ。他国で一般的な教会とは異なる様式だし、オフレ殿下も気に入るのではないかと密かに思ったりしている。あとは庭園とかだろうか。所謂和国庭園と呼ばれるもので灯籠、東屋、茶室等があり世界的に見てもとても評価が高い。皇居にはいくつかの庭園があり多種多様である。俺が特にお勧めなのは枯山水だ。知らない人に分かりやすく言うと、白砂で水の流れを表現したり、石を置いていたりするあれだ。その景色を書院から眺めるのが本当に素晴らしい。一応自宅にも似たようなものがあるが、ここと比べるべくもないくらい貧相だから皇居に赴いた際は必ず寄る場所でもある。とまあ力説した所で、当の本人であるオフレ殿下が気に入るかは分からないけどね。
……そんな俺の心配は杞憂だったみたいで、目を輝かせてあれこれサクラに質問をしている。うん、気に入ってもらえたようで何よりです。
「和国庭園の歴史は古くその始まりは約九百年前と言われています。和国の庭園様式の変遷をひもとけば、建築様式の変化、宗教や思想の影響が――」
ふむ、かなり熱が入った説明をしているな。和国は千五百年の歴史ある国であり、長い年月を掛けて培われた文化や風習、慣習、歴史等は勉強するとなると物凄く大変で実は俺もさわりだけで止めてしまったんだが、流石はサクラ。皇族として確りと勉強をしているようで淀みなく説明している。こういう姿を見ると成長したなぁ~なんてオジサン臭い感想がつい出てしまう。本人が聞けばオジサン臭いなんて事ありません!って言うだろうが、まあ……あれだ。サクラが皇女として頑張っているのはなによりです。




