Ep:20
「ん~、美味い!特にこのタレが最高だな。幾らでも食べられるよ」
「中々の一品ですね。下拵えも丁寧ですし、食材の持ち味を最大限にいかしています」
「これは俺の好物ランキングに入るな。惜しむらくはこう言った機会じゃないと食べられない事か」
「ユノさんのお願いであれば何時でも作ってくれるのではないでしょうか?私も気に入りましたので、機会があればまた食べたいですね」
「おっ、アヤメからの高評価頂きました。これはゲンパク――サクラでも良いが頼んでおくか」
「お手数をお掛けしてすみません」
「なに、謝る事じゃないさ。二人揃ってまた食べたいんだから頼む以外の選択肢は無いよ。――あっ、この肉も滅茶苦茶美味いな」
アヤメと話しつつモグモグと食べていると、何かに気付いたのかジッと俺の事を見てきた。
「どうした?何か気になる事でもあったか?」
「失礼します」
そう言って口元に手を伸ばしたかと思えば、ハンカチで優しく拭ってくれた。
「口の端にソースが付いていましたので、拭いておきました」
「んっ、ありがと。どうしてもこういうソースだったり汁系の料理は口の周りに付いちゃうんだよな。ユキからも何回か注意されたんだけど、どれだけ注意しても直らないんだよなぁ」
「私としては可愛らしいと思いますし、こうしてユノさんと触れ合えるので今のままでよろしいと思いますよ」
「うぅ、アヤメの優しさが胸に染みる。天使や……天使がここに居る」
「そ、その様な事を言われると照れてしまいます」
耳まで真っ赤にして照れている姿はマジで可愛い。普段はキリッとしてThe美人って感じだけど偶に見せるこういった姿は凄まじい破壊力がある。しかも上目遣いでチラチラとこちらを見てくるもんだから尚更威力があがり、最早世界を滅ぼせるくらいじゃないかな?なんて恐ろしい子!
「んっ、んん!イチャつくのも結構ですけど、ユノさんを独り占めするのはよくないですよ」
「別に独り占めしていた訳では無いわ。シオリだって今こうして話しかけてきたのだし」
「そうですが傍から見ると桃色空間でおいそれとは近づけないんです」
「そう。少し気を付けるわね」
「お願いします。――ユノさん、これはもう食べましたか?」
「いや、まだ食べてないな」
「良かったら食べてみませんか?美味しいですよ」
「シオリのおススメとあれば食わない手は無いな。早速取りに――」
「私のでよければどうぞ」
スッと自分の皿を差し出して、そんな事を言ってきた。当然シオリの食い止しではなく、俺の為に用意してくれただろう物だ。別に遠慮するような間柄でも無いのでそのままパクリといただく。
「ほうほう、少し酸味が強いけど美味いな」
「添えてある果実の汁をかけるとまた違った味になるので、そちらの方も是非試してみて下さい」
言われた通りに果汁も少し欠けて食べてみると甘みが増し、強かった酸味が薄くなって先程とは全く違う印象を与える。
「んっ、俺としてはこっちの方が好きだな」
「お口に合ったようで何よりです」
「……二人ともさっきからあまり食べていない様だけどお腹空いて無いのか?」
「周囲に沢山人も居ますし、ガツガツ食べるのもどうかなと思いまして」
「アヤメさんのもそうですけど、割とタイトな格好なのでポッコリとお腹が膨らむのは恥ずかしいなと」
「あー、まあ確かにそうだな。でも二人とも見てすぐわかる程腹が膨らむわけでも無いし、他の人もそこまで気にする必要は無いと思うぞ。ほら、皆お話に夢中だしこっちを気に掛ける人は殆どいない。こんな美味しい料理を少ししか食べなかったら後々後悔するかもよ?」
「「うっ……それは確かに」」
「だろ。仮に何か言われたとしても俺が防波堤になるからさ。思う存分食おうぜ」
「そうですね。気にし過ぎも良くないですしそうします」
「なんだかお腹が空いてきました」
ふぅ。何とか普段通りになってくれたか。確かにこういった場でマナーを守りつつとは言え延々と飯を食っているのは外聞が悪い。俺達の事情を理解している人ばかりでは無いとはいえ、他者に遠慮し過ぎるのも良くない。別に格式ばったパーティーでも無いんだし、多少多めに食べても文句を言う人はいないだろう。もしいたら『健啖家なので』とでも言っておけばいいだろう。よっし、次は魚料理にしようかな。
普段は食事の時間は大体二時間くらいかかるんだが、今回は少し急いで食べたのと腹八分目で抑えた事で一時間で終わる事が出来た。参加者との談笑や込み入った話もあるのでどうしてもいつも通りとはいかないのですよ。他の面々も似たり寄ったりで少し物足りなそうにしているから、食事会が終わったら深夜まで営業しているお店で二次会でもしようかと思う。俺自身も物足りないしね。
そんな感じで取り合えず飯を食い終わった所で、様子を伺っていたご令嬢たちがワサッと近寄ってきた。来た人達は殆ど以前話した事がある人なので、気兼ねなく会話できるのでありがたい。
「こんばんは。お元気でしたか?」
「元気にやっていたよ。最近は他国に行ったり忙しかったけど、まだまだ続きそうだよ」
「ケールカ王国に行っていたんですよね。色々と問題があったと聞いています」
「そうなんだよねぇ。平穏無事に過ごせればよかったんだけど何故かトラブルが起きるんだよ」
「それは英雄の業かもしれませんね」
「それか不幸体質なのかもね。神社で本格的にお祓いでもしてこようかな」
「でしたらそちら関係に精通している神社を探しておきましょうか?」
「それは助かる。でも、迷惑じゃないかな?」
「とんでもありません。ユノ様のお力になれるのであればどんな事でも致します」
「ありがとうございます」
なんて感じで集まった人と談笑をしている。ユキ、隊員、サクラは気を使って少し離れた所からこちらを見守っているがお前達も参加者と話した方が良いんじゃないかと老婆心ながらに思ってしまう。だって話しかけたそうにチラチラ見ている人がいるんだよ。特にサクラに関しては皇女という立場もあるし、自身の立場をより強くするためにも挨拶回りとかした方が良いと思う。――まあ、各々考えがあるんだろうし俺が言う事では無いのかもしれないが。
にしてもこうして普段会う事が無い人と久々に会って話をするのは楽しいな。他愛無い話でも笑ったり、照れたりしてそういう反応がまた新鮮で良い。仕事では話す相手は殆ど隊員だけだし、家に帰ればユキのみだから、他者と会話する機会って思った以上に少ないんだよ。だからこそ今みたいなご令嬢達と会話するときは盛り上がってしまって多少のボディタッチなんかも許してしまうんだ。時折鋭い視線が飛んで来るが気にしてはいけない。あとで注意されたり、愚痴を言われる事になろうともだ。だって美人・可愛い子から腕や胸板にさりげなく、かつ大胆に触られるんだぜ。流石に胸を押し付けたりはしてこないが、男なら誰でも鼻の下を伸ばしてしまうよね?だって男だものしょうがない。
そんなこんなで三十分ほど楽しくお話をしたあと、お別れしたんだけどそれを見計らっていたかの様に一人の男性が近づいてきた。
「すみません。お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます。私はヘルブラム機械帝国公爵家長男のアデルモ・ベルトイアと申します」
「私は和国の軍属でCODE零の隊長をしておりますユノです」
「ユノ隊長のお噂は色々と聞いております。世界で唯一クラスunknownの妖魔を討伐できる隊の隊長とこうしてお会いできて恐悦至極にございます」
「私などただの軍人に過ぎませんし、その様な大層な人間ではありませんよ」
「ご謙遜を。――ユノ隊長が住んでいる和国が羨ましい限りです。妖魔に怯える事も無く、平和と安寧を享受できるのですから」
「ヘルブラム機械帝国は大国ですし、世界で最も発達した蒸気機関技術を駆使して妖魔を討伐していますし、平和を脅かされるような事態は早々ないのでは?」
「我々に対処できるのはクラスAまでですので、それ以上の妖魔が現れた場合は対処の仕様がありません。これはどの国にも言えますが、真の平和や安寧など一国を除いて無いのですよ。常に災厄を恐れ、自分に矛が向かない様怯える日々。いくら力を持とうが所詮は人間ですから、人知を超えた怪物には勝てませんし精々できるのは無力なりに抗う事くらいでしょうか」
「ですが、滅多にクラスA以上の妖魔が現れる事もありませんし、我々人類も年月を重ねてどんどん強くなっていきました。遠い未来になるとは思いますが、必ず妖魔に怯える事なく誰しもが生きることが出来る世界がやってきますよ」
「確かにそうかもしれませんね。ですが、私は遠い未来の事よりも現在を大事にしたい。家族を、愛するものを守り平穏に暮らして生きたのです。――その為には絶対的な力を持った英傑の存在が不可欠です。単刀直入にお聞きしますが、ユノ隊長は他国に移住するつもりはございませんか?」
ベルトイアの発言に周りで話に聞き耳を立てていた人や、サクラが驚きの表情を浮かべる。翻ってユキや隊員達はいつも通りであり、俺がどう答えようがその意思に従うといった感じだ。こういった話は以前ユキと自宅で話したが、あの時の様に突っ込んだ所まで明け透けに言う訳にはいかないのでそれとなく濁した言い方で逃げるべきだろう。
「今の所は考えていません。和国は私の生まれ育った国ですので、愛着もありますし離れがたいですし」
「なるほど。今の所は……ですか。では、将来的に移り住む可能性は有るという事ですね」
「否定は出来ません。ですが未来の事は誰にも分かりません。私自身にも。なので可能性は零ではないですね」
「分かりました。その言葉を聞けただけで十分です。因みにもしヘルブラム機械帝国に移住して頂けるなら最高の待遇でお迎えいたします。お望みがあればほぼ全ての事を叶えられますし、爵位も侯爵までならすぐに叙爵出来ます。他にも条件などがあれば私に仰っていただければすぐに手配致します」
「もしそのような時があればよろしくお願い致します」
「お任せ下さい。……実はお聞きしたい事があるのですが」
「なんでしょうか?私に答えられる事でしたらいいのですが」
「ユノ隊長は独身と聞きましたが、婚姻を結んでいる相手はいらっしゃるのですか?」
「おりません。婚姻はおろか恋人すらいませんよ」
「なんと……。ユノ隊長ほどのお人であればそれこそ選び放題では無いのですか?」
「まあ、出会いはそこそこにはありますね」
「誰かと恋人関係になったり、結婚しようとは思わないのですか?」
「難しいですね。仕事柄危険が付きものですし、私を亡き者にしたい組織など沢山あります。立場上そういったいつ襲われるかも分からない毎日を過ごしているので、家庭を持つというのは難しいですね」
「となると、自分の身は自分で守れる人か無暗に手出し出来ない立場の人――それこそ王族や公爵くらいでないと駄目という訳ですか」
「単純な強さで言えばウチの隊員くらいであれば安心なんですがね。王族や貴族の方は私などでは地位が釣り合いませんし、見向きもしないでしょう」
「CODE零の隊員と同じだけの実力者となると世界広しと言えどもいないでしょうね。それと釣り合いに関してはユノ隊長であれば何の問題も無いかと。寧ろ相手の方が是非にと積極的に動くと思いますよ」
「そうでしょうか?私など戦うしか能の無い朴念仁ですからね」
「ご謙遜を。……ところで今は誰とも婚姻を結んでいないという事でしたが、ヘルブラム機械帝国の皇女様もそろそろ結婚相手を探す年齢でして」
ベルトイアがそう言った瞬間室内に漂う空気が一変した。今まで事態を静観していたご令嬢達は元より隊員やユキ、サクラまで険しい表情で、恐ろしいまでの気配を漂わせている。話の流れから俺に皇女を充てようとしているのは明白であり、彼女達にとってはそれは到底許せるものでは無いのだろう。特に袋に入れている刀を取り出そうとしているカスミとシオリには少し自重してもらいたい所だ。比較的――といってもほんの僅かだが――冷静なユキとアヤメが取りなしているが、そのまま頑張って押さえておいてくれるとありがたい。なんとか場を収める為にも上手い事話を持っていかなくては。
「そうなのですね。ですが皇女殿下とは面識がありませんし、私としても前述したとおりの理由で今の所は結婚などは考えていません。また、段階をすっ飛ばして婚姻を結ぶような真似も好きではないので王侯貴族の方々とは縁が無いかと考えています」
「なるほど」
『王侯貴族の方々とは縁が無いかと考えています』の所でサクラが泣きそうな顔になってしまった。自分はどうあがいても相手にされないと思ったのだろう。なんとか皇女殿下との縁談染みた話を無かった事にする為に言ったんだが、これは後でフォローしないとマズい事になるな。確実に。
横目でサクラの様子を見つつ相手の反応を伺っていると随分とあっさりした言葉が返ってきた。
「今はまだ時期尚早でしたね。プライベートに踏み込むような話題をしてしまいすみませんでした」
「いえ、気にしておりませんよ」
「では、長々と引き留めてしまいましたし、私はこれで失礼します。何れまたお会いしましょう」
「はい」
こうしてベルトイアとの駆け引きの応酬は終わりを告げた。もうね……ドッと疲れたよ。正直もう帰って寝たいくらい疲れた。だが、そうはいかないとばかりに少し離れた所で見ていた女性陣とジン、ゴロウがこちらへやってきたのでまだまだ終わりそうにないな。
「ユノお兄様……」
「あー、まあ色々と聞きたい事はあるだろけどそんな顔をするな」
サクラが俺の服の裾を掴んで泣きそうな顔で名前を呼ぶもんだから、思わず小さい子供にするみたいに頭を撫でてしまった。年頃の女性にするべきではない――しかも皇女相手に――けどあの顔を見るとね。
「サクラが思っている様な事にはならないから安心しろ」
「ですが、他国に移住する可能性があるとおっしゃっていましたよね。それに……私とは縁が無いとも」
「あくまで可能性の話だよ。仮にどこかの国に住むとしても和国を捨てた訳じゃないし、二度戻ってこない訳でも無い。サクラとも今生の別れになる事も無いし何時でも会えるんだよ」
「私は……私はそれでもユノお兄様と離れ離れになるのは嫌です。ずっとずっとお傍に居たいです」
「その気持ちは有難いけど、サクラは皇女様だろ。立場もあるし、将来もある。何れはどこかの王族か有力貴族と結婚する事になると思うし――」
「イヤです」
「えっ?」
「嫌です!私はユノお兄様以外の男性に興味がありませんし、ましてや結婚など考えられません。もしそのような事態になれば自死を選びます。そして、必要があれば皇女という立場も捨てます」
「捨てると言って簡単に投げ捨てられるようなものではないぞ、皇女という立場は」
「分かっています。ですが、どの様な手段を取ろうがユノお兄様のお傍で生きていけるなら絶対にやり遂げます」
まさかサクラがここまで考えているとは思ってもみなかった。少々重い感情を俺に対して抱いていると実感はしていたが、まさかこれ程とは。それに今の発言は非常にマズい。国の国家元首の娘がその立場を放棄宣言したのだから、シャレにならない。しかもこの場には貴族や政財界の子息子女が集まっているんだからこの発言は大きな波紋を呼ぶことになるだろう。どうにかして場を収めなければと思案するが中々良い案が思い浮かばない。どうしよう……と焦っているとアヤメが助け舟を出してくれた。
「サクラ、少し落ち着きなさい」
「ですが――」
「貴方の気持ちは十二分に理解できます。ですが、今の発言はこのような場でするべきではありません。そして皇女であろうとユノさんの隣で歩いて行く事は出来ます。今までユノさんが貴方の事を蔑ろにしたり、立場を疎んじて距離を置いたりしたことが一度でもありましたか?」
「……ありません。常に気に掛けてもらい、私が会いたいと言った時には予定を調整して必ず会ってくれました」
「では焦る必要は無いと思いますよ。結婚云々に関しても、皇王様に自身の考えを伝えた上で確りと話し合いをすれば済みます。好意を抱いている相手がユノさんならばおいそれと口出しは出来ないでしょう」
「…………そうですね。少し感情的になって焦ってしまいました。不用意な発言をしてしまい誠に申し訳ありません」
サクラが俺に向かって深々と頭を下げる。それだけで、周りにいる参加者には意図が伝わっただろう。皇女自ら頭を下げたのだからこの件に関しては口外禁止という意図が。
「俺は気にしていないから頭を上げてくれ。あと、サクラが俺の事を嫌いにならない限り今まで通り遊んだり、出掛けたりしたいと思っているよ」
「私がユノお兄様を嫌いになる事など有り得ません!」
「んっ、ならこれからもよろしくな」
「はい!」
なんとかなったか。アヤメのフォローがなかったら、大変だったろうから感謝だぜ。心の中で手を合わせて感謝の念を送っていると、何かに気付いたのかアヤメがこちらを見てきて、口を開いた。
「先程ユノさんがお話していたヘルブラム機械帝国のベルトイア氏ですが、どうにもキナ臭いですね」
「なにか気になる点でもあったのか?」
「今回の食事会に関しては参加者をかなり厳選しています。勿論他国からもいらっしゃっている方もいますが、どうしてこのタイミングで来たのかが引っ掛かりまして」
「タイミング……もしかして護衛に関する事か?」
「はい。和国に来訪される要人を護衛するとのお話でしたが、どこの国の誰が来るのかは未だに判明していません。……ですが、先のお話の内容も加味すると恐らくヘルブラム機械帝国の皇女殿下ではないかと推測します」
「となると、先を見越して俺と繋がりを作っておきたかったと言った所か」
「そうではないかと」
「まてよ……そうなるとあの話も帝国が絡んでいるのか?」
「どのような話でしょうか?お聞かせ願えますか」
「ああ。実は数週間前にユキと二人で買い物に出かけたんだが、その際に立ち寄った呉服店で俺の事を嗅ぎまわっている奴がいるらしいって話を聞いてさ。それとなく調べてはいたんだが、未だになにもわからず仕舞いだったんだが」
「帝国が絡んでいると見ているのですね。かの国であれば隠蔽工作完璧に行うでしょうし、そう簡単に尻尾は掴ませないでしょう」
「だな。全てを統合すると護衛対象が皇女殿下でベルトイア――帝国は何かしらの思惑を持って俺の情報を集めたり接触してきたという感じか」
「最悪の場合帝国と一戦交える可能性もあると考えます」
「正直に言えばあの国とは戦火を交えたくないんだけど、相手の出方次第だな。一応各方面には伝えておこうか。何事も無いのが一番なんだけどさ」
「ではお父様には私の方から伝えておきます。また有力者に関してもここに居らっしゃる方々から伝えてもらえばユノお兄様のご負担も減るかと思います」
「じゃあ、そっちは頼む。付き合いのある他国には俺から直接連絡を取る事にするよ」
「分かりました」
「今やれる事はこれくらいだし、後は状況に合わせてだな。……沢山話したらお腹が空いてきたし、少し食べようかな。まだ料理が残っていればいいけど」
「ふふっ、大丈夫だと思いますよ。さっ、行きましょう」
サクラに手を引かれながら、歩き出す。
思いもよらぬ出会いにより点と点が繋がり線になり、それは大きなうねりとなっていくだろう。今はまだ分からない事が多いが、全てが詳らかになった時彼は……そして彼等はどう動くのか。
様々な思惑が入り乱れるパーティーはまだまだ終わらない。




