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死を望むあなたへ  作者: ねこネコ猫
11/38

Ep:10

 親善試合から二日経ち迎えた今日は妖魔討伐作戦実行日。参加する面子は俺達とケールカ王国の監視役が二名となっている。監視役と言っても討伐確認と、もし何らかの不測の事態が発生した場合軍本部に連絡する役目なので監視という言葉は不適切かもしれない。といって他の言い方があるわけでも無いし、一々文句を言う事でも無いので受け入れています。

 話が逸れたが妖魔出没地点近辺までは車で移動し、そこからは徒歩で移動という形になる。車ですぐ近くまで行こうとすれば容赦なく攻撃を受けてしまうからね。しかも車内で身動きもろくたら取れないし。てなわけで前述した形が定番となっている。

 そして今は移動中の車内で暇を持て余してるんだけど……。ブリーフィングも事前に済ませているし、装備の確認なんて今更過ぎてする訳も無く。只々暇です。そんな心中を慮ってかスズネが声を掛けてきた。

「隊長。暇そうな顔をしていますね~」

「うっ。顔に出ていた?」

「はい。良かったら僕とお喋りしませんか?」

「おう。いいぞ」

「今回の妖魔ですがクラスが上がったばかりなのですぐ終わりそうですよね」

「それは分からないぞ。前に報告してもらった際に力を求めているって言ってただろ。順を追って強くなるなら然したる問題は無いんだけど、急速に強くなろうとしているなら少しマズいんだよね」

「というと?」

「妖魔には短期間で大幅に能力を上げる術があるんだ。やり方は最悪と言わざるを得ない方法でさ。もし件の妖魔がその方法を取っていたとしたら真剣に戦わざるを得ない」

「……そこまでですか。もしもの場合は助力しますね」

「あぁ、その時は頼むよ。頼りにしているからな」

「えへへへっ。まっかせてください!」

 はにかみながらググっと力こぶを作って見せる。可愛い。ああ、単純に可愛いが……秘密を知っている身としてはそれでいいのかとも思う。実際ゴロウやジンはやや冷めた目で見ているし、女性陣はあざといと言わんばかりの視線を寄越している。だが、可愛いは正義なんだ。だから問題ないはず。

「ちょっとスズネ。隊長に近寄りすぎです。少し離れて下さい」

「なに~?文句があるならシオリだって近くに来ればいいじゃん」

「あなたが邪魔で近寄れないんです。ほら退いて下さい」

「嫌です~。どうしてもって言うなら力ずくで退かしてみれば?」

「ほぅ。言質は取りましたよ」

 言うが早いか刀の鯉口を切り、腰を落とし臨戦態勢を取る。

 おいおい、車内で得物を振り回そうとするんじゃないよ。というか、すぐそばに俺がいるんだから物騒な真似はよしてくれ。マジで。

「シオリ。そこまで。流石に刀を振り回すのは遠慮してくれ。それとスズネはシオリと場所を交換な」

「え~、どうしてもですか?」

「一時的にな。また変われば良いだけだろ?」

「うぅ、分かりました。シオリ、すぐに交代してね」

「はいはい」

 こういったやり取りは割と普段からあって、例え事前に席順を決めていたとしても問題が起こったりするから参ったもんだ。その点ジンやゴロウは助手席だろうが運転席だろうが文句一つ言わないので有難い存在である。女性陣の争いについては俺自身も諦めているし、それこそマズイ状態になりそうな場合以外は軽く口を挟むだけにしている。だって下手に間に入ると怖いし。昔の話になるけど一度だけ血で血を洗う惨劇が繰り広げられた事が有るんだ。あの時はにっちもさっちもいかなくって実力行使で収めたけどシオリもカスミもスズネもアヤメも半死半生だったなぁ。正に悪夢そのものだったけど、そのおかげ……と言っていいかは分からないがそれ以来程々で終わるようになったので不幸中の幸い?怪我の功名?なのかなと思っている。シオリと他愛無い会話をしつつ、頭の中で過去の回想をしたりしたわけだがそういうのは相手にも伝わってしまう様で。

「むぅ、隊長。いま別の事を考えていませんでしたか?」

「悪い、悪い。ちょっと昔の事をな」

「そうですか。私との会話は楽しくありませんでしたか……」

「ごめん。シオリとのお話は楽しいよ。ただふと過去の事が頭を過っただけだよ」

「ならOKです。先程の話の続きですけど今回は隊長お一人で戦うのですよね。大丈夫ですか?」

「んー、妖魔と戦うのは久々だけど問題ないだろ。腕が落ちている訳じゃないし、所詮はクラスunknownに成り立てだしな。もしかして、勝てるかどうか心配だったの?」

「いえ、隊長なら絶対勝ちますし心配するのも烏滸がましいです。ただ、軍務大臣が何かしらの嫌がらせをしてくるのでは?と少し気がかりで」

「流石にそれは杞憂なんじゃないか?下手したら国が滅ぶし、自身の命を懸けてまで足を引っ張ろうとはしないだろう。そこまで脳味噌が詰まってないとは思いたくないよ」

「だといいのですが……」

「まっ、何があろうと任務を完遂するだけさ」

「はい」

 なんて会話をしつつ時間は流れていく。

 暫しの時間を置いてようやっと目的地に到着し、車から降りた後は徒歩で妖魔の確認地点まで移動開始。

 妖魔が居る場所は分かっているのでそこまでは小走りで駆け抜ける。大体二十分くらいだろうか。体感でそれくらいで目標を視認出来たのである程度距離を置いて向かい合う。

「ほう。強い気配を七つ程感じたがお前達だったのか。……差し詰め俺を討伐しに来たと言った所か」

「その通りだ」

「ふんっ。どの様な手練れを送り込もうが結果は知れた事。わざわざ命を散らしに来るとは愚かなり」

 力を求めてるって話だったから狂戦士染みた手合いだと思ったが随分と理性的だ事。タイプとしては武人系なのかな?強者との戦いを望み、死線の上で踊るという狂気じみた事を熱望する只管に戦いを求め彷徨う亡者。終わりは無く、命の灯が消えるその瞬間まで戦闘を楽しむだろう。その事は相手の目を見れば嫌と言うほど分かる。ある程度は想定していた事だが実に厄介だ。この手の手合いは正直苦手。

「おいおい。もしかして怖気付いたのか?もしそうなら帰んな。俺は戦う意志の無い奴に興味はねぇ」

「いや、俺はお前を討伐しに来た。御託は良いからさっさと始めるぞ」

「くっくく。その意気や良し!――獲物は刀か」

 相手の言葉に呼応するように鞘から刀身をスラリと引き抜く。

 そこに現れたのは何の変哲もない刀身。波紋は(のた)()・鍔は刀匠鍔・柄は糸巻柄・常組という至って平凡極まりない刀。だが、唯一異質なのは刀身から僅かに揺らめく白紫の放射体。分かりやすく言えばオーラとでも言おうか。見る者を圧倒するような、それでいて全てを無に帰すような不思議な力を感じるだろう。こう言った武器を総称して人はこう呼ぶ。妖刀と。

「…………その刀普通じゃねぇな。なんで人間のお前が平気な顔して持ってられるんだ?」

「別にこれは使用者に不利益を与える類の妖刀では無い。といって俺以外が使おうとすれば――まあそれなりに酷い目には合うだろうけどな」

「その刀の銘はなんという?」

雪花紫雨(せっかしぐれ)

「成程。それ程の業物を持つ者と戦えるとは何たる幸運。これも天の導きか」

「はっ。妖魔が天を仰ぐか。冗談にしては笑えないぞ」

「何とでも言え。……さて、前口上はこの辺りで良いだろう」

 そういうと一気に殺気を剝き出しにして、こちらに鋭い視線を送ってくる。常人であれば良くて気絶、心身が弱い者であれば最悪死んでいるだろうという程の強い力だ。これは中々に楽しめそうかもな。そう心の中で呟いた瞬間には敵は眼前まで迫り、横薙ぎに剣を振っていた。

「おっと」

「チッ」

 刀の腹で力を受け流しつつ、攻撃の軌道を斜め上へと逸らしつつ返す刀で上段から逆袈裟に斬る。

「フッ!」

「チッ」

 が半身になり躱されてしまい、こちらに隙が出来てしまった。このまま相手からの反撃があるかと思ったが、後ろに二歩分ほど下がり気を伺うようにこちらを見ている。反撃してくるようなら下からの斬り上げで脚を吹っ飛ばしてやろうと思ったのに読まれていたか。伊達にクラスunknownはやっていないな。

「お前、今の動き普通の剣術を嗜んできた人間では無いな」

「今の攻撃くらい誰でも出来るだろう?」

「どの口が言うか。――だが、面白い」

「はぁ……。喋っている暇に死んでしまう、ぞ!」

 タッと僅かな音を残して相手の懐に飛び込み袈裟斬りをすると見せかけてクルリと身体を左側へ反転させて相手の背後に回り、突きを繰り出す。狙いは心臓。確実に殺せる一撃……だったが、瞬時に身を屈め必殺の突きが躱されてしまった。人間が出来る速度の動きでは無いし、反応速度も然り。人外である妖魔だからこそ為せる動きを見せたかと思えばしゃがみ込んだ姿勢のまま脛を薙ぐ剣閃を放つ。バックステップで避ける?否。躱しきれない。上に飛び避ける?否。軌道を変えて斬り上げをしてくるだろ。逃げるのは不可能。であるならば――。

「なっ!?」

 妖魔が驚きの声を上げるがそれも致し方ないだろう。何故なら横薙ぎに振られた剣を足で踏んで止めたのだから。人外の膂力を持って放たれた一線を人間が足で止めるなど不可能。だが現実は地面に切っ先がめり込む程の力が加えられ動きを止めている。CODE零の隊長であるユノもまた人外の領域に足を踏み入れているのだ。正に化け物同士の戦い。常識もセオリーも何もかも塵芥となる人ならざる者たちの饗宴。しかして、戦いはまだ始まったばかり。更に苛烈に、更に凄烈に繰り広げられる事だろう。

 果たして最後に立っているのはどちらなのか?それは神のみぞ知る事である。


 another view point


 目の前で繰り広げられる戦いを見ていた隊員たちは一様に真剣な眼差しを向けていた。

 なぜならこうして隊長の戦いを目前で見るのはなにせ数年振りなのだから。この機会を逃せば今度はいつ見られるのか分からないとあってはその真剣さにも納得しようものだ。張り詰めた空気が満ち、誰一人言葉を発さない。そんな中横薙ぎに振られた剣を足で踏んで止めた光景を見て思わずと言った感でカスミが口を開いた。

「凄いですわね。まさか足で止めるなんて」

「隊長は剣術は元より体術も極めているからねぇ~。普通じゃあの速度で迫る刃を止める事は無理だよ」

「スズネの言う通りですが、一歩間違えれば足の裏を斬り落とされる行動ですわよ。反応速度・判断力・完璧なタイミングの三拍子揃っていなければ成し得ないですものね」

「まあ、それが出来るからこその隊長なんだけどね~」

「そうですわね。……でも思ったのですが隊長であれば最初の一合で勝負は付いていましたよね?こんなに長々と戦う必要はあるのかしら?」

「いつも通りなら抜刀からの一閃で終了だけど、何か思う所があるんじゃない?僕達には考えも及ばないようなさ」

「そうかしら?」

 カスミとスズネが二人揃って首を傾げていると、横で観戦していたジンが口を挟んできた。

「あ~、別にそんな高尚な考えのもとで戦っている訳じゃないぞ。チラッと聞いたんだけど単純に最近あまり運動が出来ていなかったからそれの解消の為に少し時間を掛けて戦おうって言ってたし」

「「それいつ聞いたの?(ですの?)」」

「昨日の夜に隊長と少し晩酌をした時にな」

「はぁ?なにそれ!聞いていないんだけど」

「昨日の夜は今日に備えて早めに就寝したはずですが?」

「ちょっ、怖いって。圧が凄いから一旦離れろ。……ふぅ。晩酌は俺から誘った訳じゃなくて隊長が中々寝付けないからって事で声を掛けられたんだ。それで小一時間程付き合っただけだよ」

「隊長から誘ったんだ……。う~、それなら僕も誘ってくれれば良かったのに」

「そうですわ。ジンみたいな男臭い人よりも私の方が楽しくお酒を飲めるはずです」

「ちょっとまて、カスミ。その発言は流石に聞き捨てならないぞ。そもそもお前達が一緒だと何時間も飲む事になるだろ。だからこそ俺に声が掛かったんだよ」

「「…………」」

「分かったなら隊長の戦いに集中しろ。ほら今良い所だぞ」

 その言葉通り熾烈な戦闘は終盤に差し掛かっているようだった。

 片腕を斬り飛ばされ、隻腕になっても激情を瞳に宿し戦意は一切衰えていない。例え片腕になろうとも最後まで相手を殺しにかかる様はある意味狂気じみている。そして今まさに残った腕も疾風の如き斬撃で地に落ちた。両腕を失った妖魔は果たして口で剣の柄を固く噛み、戦闘を続行する。距離を取った両者が向かい合いその場に静寂が流れる。妖魔の方は体力・気力・そして残された力もごく僅か。恐らく次の一合で勝負は決まるだろう。今まさにその火蓋が切って落とされた。


 another view point


「ふぅ~」

 短く呼気を吐き出し、心を落ち着かせる。今まで戦って思った事だが相手の技術はまだまだ拙く、動きにも無駄が多い。力押しする場面も多々あり正直強さとしてはギリギリクラスunknownに届くかどうかと言った所だ。だが、四肢が欠損してもなお衰えぬ戦意には正直驚きを隠せなかった。大抵は腕なり脚なりを無くせば攻撃手段がほぼ無くなってしまうのでそのままお終いになるパターンが多いけど、こいつは口に剣を加えるという荒業を持って継戦を示した。実に面白い。こんな相手と戦うのはいつ以来だろうか?年甲斐も無く心が躍るのが分かる。あぁ、もっともっと戦いたい。脚を斬り落とし、歯を砕き戦える手段を無くした時、それでもまだ諦めずに攻撃してくるのだろうか?あぁ、あぁ、この時間が終わってしまうのは口惜しい。だけどどんな物事にも終わりと言うのは必ずやってくる。それは望む、望まないに関わらず。

 張り詰めた空気が限界まで来た時……両者が一斉に間合いを詰めた。

「シッ!」

「フッ!」

 一瞬の交錯を経て二人の立ち位置は真逆となった。僅かな時間を置いてズズッと上半身が斜めにズレていき音を立てて地面へと落ちる。残されたのは立ち尽くす下半身と、溢れ出す真っ赤な血のみ。

 その光景を後ろを振り向き確認した後、血払いをし納刀。無言のまま上半身だけになった妖魔に近づき後は消え去るのを待つのみ……だったはずだがここで思いがけない問いが妖魔から投げかけられた。

「お前の様な強い奴と戦えて良かった。――冥途の土産に聞かせてくれ。お前にとって強さとは何だ?」

「…………俺にとって強さとは()()()()()()()()()だ」

「成程。そう言う事か。お前は――」

 最後の言葉は風に流され俺の耳に届くことは無かった。だが言わんとした事は分かる。ああ、そうだ。だからこそ俺は妖魔討伐をしているんだ。

 消え往く妖魔の身体を見ながら心の中で呟くが、その想いは誰にも届くことは無く虚空へと消え去る。サラサラと風に乗って妖魔の身体が消滅し、最後に残ったのは大きな原石のみ。こうしてケールカ王国に出現した災厄を齎す妖魔討伐は完了と相成った。


 が、そこで話は終わらない。監視役が原石の確認をしたり、軍本部への連絡をしたりとせわしなく動いているからだ。そんな中俺達だけお疲れっした~と帰るわけにもいかんでしょ?和国なら兎も角さ。んな訳で一通り終わるまで待ちの一手と言う感じです。

「お疲れ様でした。素晴らしいお手並みでしたね」

「んっ。ありがと。でもあれくらいならアヤメでも余裕だろ?」

「可能か否かであれば出来ますが、あそこまで洗練された動きは出来ません」

「そこまで言われると照れるな」

「……差し支えなければでいいのですが、最後に妖魔と言葉を交わしていましたが何かありましたか?」

「あ~……まあなんだ。改めて自分の目的を再確認したって所だよ」

「そうですか」

「顔に出ていたか?」

「少し思い詰めた感じでした。私でよければ何時でも相談に乗りますのでお声を掛けて下さいね」

「そうするよ。――なあ。仮に俺が軍を退役したらアヤメはどうする?」

「勿論隊長と一緒に退役します」

「即答だな。アヤメならそのままCODE零の隊長になれるんだぞ。待遇も良くなるし、何より美人がトップを務める隊なんだから入隊希望者が続出するぞ。悪い条件では無いと思うけどな」

「そんなものは塵芥に過ぎません。私が居るべき場所は隊長の隣であり、いつか死を迎えるその時までお傍に居ります。……隊長にとってはご迷惑でしたか?」

 涙を溜め、上目遣いに聞いてくるがこの世の終わりも斯くやという表情で言われれば可愛いなどと言う思いは一切湧かない。ここで返答を間違えれば確実に彼女は自害するだろうという確信を持てる。それ程までに今の発言は重い。

「迷惑では無いよ。寧ろ嬉しく思う。……そうか、そうだな」

「もしや退役するおもつもりで?」

「いや、今すぐにどうこうという話じゃないよ。ぼんやりそんな事を思っただけさ」

「然様ですか」

 全てを見透かすような目でこちらを見て、そう言の葉を紡ぐ。恐らく俺の言葉に隠された意味まで理解しているのだろう。本当にアヤメには敵わないな。などと思っていると横合いからひょっこりとスズネが顔を出し声を掛けてきた。

「何を話しているんですか?」

「ちょっとな」

「――あの、隊長はどこかに行くつもりなんですか?」

「なんでだ?今の所はそんな予定は無いが」

「ふ~ん。もし他の国に拠点を移したり、軍を退役するなら僕も()()に着いていきますから!何があろうと……必ず」

「何を当たり前のことを仰っているんですの?隊長あっての私達です。もし、何処かがそれを阻むとすれば跡形も無く消し去ればいいだけでしょう」

「んっ、カスミの言う通りだね。軍だろうが、組織だろうが、国だろうが、神だろうが隊長と引き離そうって言うなら破壊して殺すのみ。ねっ」

 漆黒よりもなお昏い瞳で言うスズネは地獄の使者だろうが裸足で逃げ出す程の迫力がある。事実カスミやスズネが言っている事は何一つ間違ってはいない。言葉通り全てを無に帰する事が出来る力を持っているのだから。例え世界が相手だろうと一切躊躇する事なく、笑いながら破壊の限りを尽くすに違いない。何故そこまで彼女達が隊長――ユノ――を慕うのか、いや狂信・盲信(もうしん)と言っても過言では無い程に想いを寄せているのか。それは今はまだ語る事が出来ない。ただ、彼等・彼女等には共通の目的がありその為に生きているという事はこの場で明言させて貰おう。

「なんにせよ俺が何か動くときはお前達に必ず報告するから、軽挙妄動は控えるように。……話は変わるが妖魔討伐も無事終えたので明日からは休暇となる。各自好きな様に動いてもらって構わない。酒を飲むでも良し、遊びに行くでも良し、買い物に行くでも良し。好きにしてくれ」

「分かりました。となると明日からはユキさんも一緒に隊長と行動するという事ですね?」

「そうなるな。結構不自由をさせてしまったから数日はユキと一緒に観光でもするつもりだ」

「成程。了解致しました」

「となるとその間は隊長と別行動になるんですね。う~、耐えられるかしら?」

「耐えるしかないよ。それともシオリはユキさんに私も混ぜて下さいって言えるの?」

「無理に決まっているでしょ。もしそんな事を言ったら…………」

「うん。終わるね。色んな意味で」

「「はぁ~~」」

 カスミとの問答を終えてすぐに小声でヒソヒソと喋っている声が聞こえてきたが、なんともまあ。そこまでユキは短気でも短慮でもないんだがなぁ。まあ少しだけ不機嫌になるかもしれないけど。とは言ってもいつも一緒に居たがる隊員達を数日間もほったらかしにする訳だし、なにかしらのフォローはしておこうか。休暇も大分長い事取れるわけだしな。

 エイラとも久し振りに顔を合わせたいし、アルマとも話したい事もある。それに、未だ火種が燻っている軍部もなんとかしたいと思っている。やる事は多々あるが、出来る範囲で頑張っていこう。決意を新たに見上げた空は遥か彼方まで蒼で染まっていた。

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