Ep:?
やあ、お久し振りだね。元気にしていたかな?
私は……そうだな、相変わらず暇を持て余していたよ。あれから幾つもの物語を読んだけど、どれもありきたりでパッとせず、胸に巣食う好奇心を刺激することは無かった。
言葉通り暇潰しにしかならなかったね。
毎日が退屈で、暇で唯一の楽しみである読書もハズレが続いて鬱々としていたんだけど、それも今日で終わりだ。なんでかって疑問に思うだろう?
うん、うんそうだろうね。
ここで焦らしてもいいんだけど、時間も惜しいし答えを言っちゃうよ。
昨日の事なんだけど、図書回廊を何の気なしにウロウロとしていたら、真っ黒の装丁が目立つ一冊が目に入ったんだ。こんな装丁は初めて見るし、こう――ピンと来るものがあったんだ。
手に取ってみるとズッシリと重く、ざっと数千頁はあるだろうか。しかも一冊で完結しているわけでは無く背表紙には一と書かれているので、続きがあるのは明白。
となると、全部合わせると数万頁になる超大作という可能性が高い。
珍しい装丁と、圧倒的なボリューム。これは否応なく期待が高まると言うもの。
だが、惜しむらくは今すぐ読めないという事だろうか。少しばかりやらなければいけない事があるので、読書欲をグッと抑えて、この溢れんばかりの欲求を明日爆発させよう。
はぁ……明日に早くならないかな。
なんて事があった訳だよ。そして今日に至るというね。
さて待ちに待った読書タイムがいよいよ始まると思うとドキドキしてくるね。飲み物やお菓子の準備も万端だし、時間は有り余っている。
邪魔するものは一切無いし心置きなく没頭できるだろう。
そうして最初の頁を捲り始めた。
これは長い長い物語の始まりである。