表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ


「うわぁぁぁぁぁぁぁ、、、死ぬ、死ぬ、死んじゃうぅぅぅぅぅぅ!!!」


 轟雄一、18歳の陸上部。趣味はゲームとアニメ鑑賞の陰キャなオタク。


 ジャージ姿で現在死に物狂いに絶叫しながら走る彼は、自分が今置かれている現状を理解する事が全くもって不可能であった。


「なんで俺こんな訳の分からん怪物に追われてんの!? つーかここどこぅ!?」


 突如見知らぬ森の中に迷い込んで不安と恐怖のあまり泣きそうになり、背後から近づく足音が付近に住む住民だと思って喜んで振り返った。


だが、そこにいたのは全長4メートルを越すであろう蟷螂(カマキリ)のような怪物で、しっかり目を合わせてしまった彼はこうして追われる羽目となった。


 顔は汗と鼻水と涙でぐしゃぐしゃ、足は既に荒れた森の中を3キロは全力で走っているため限界が近い。


 が、それでも立ち止まれば死ぬということを彼はよく理解していた。


何故なら、その蟷螂型の怪物は鎌のような両腕でまるで紙を着るかのように面前の木々を切断しながら彼を追いかけているからである。


「あんなのに切られたら……、俺の身体輪切りパイナップルみたいになっちゃうぅぅぅ!」


 そんなのは御免だと思うのと同時に、ここが日本ではないどころか、自分が暮らしていた世界とは別世界なのではと考え始めていた。


「あんなバケモン、俺が住んでた世界中のどこにもいないはずだよな。すると、ここは異世界なのか!?」


 となると、オタクであり特に異世界転生・転移モノ狂信者轟にとってはこの上なく嬉しい出来事だが、自分が置かれた現実に肉体よりも先に精神が限界を迎えそうだった。


「これが噂に聞く異世界転移ってやつなの!? 俺がいつも見てるアニメとかラノベとかと全然展開違うんですけどぉぉぉぉぉぉ!!?」


 彼が好んで見ていたジャンルは、無双系やざまあ系のいわゆる「主人公最強」モノがほとんどだったのだが……


「魔法とかスキルが使えないのはまだしも、身体能力もそのままとか何のために俺は異世界転移したんだよぉぉぉぉぉぉ」


 そうして現実というものはやはり残酷なんだなぁという現実にいよいよ心身の限界が近づいてきたところで、木々の切れ目から森の終わりが見えてきた。


「やった、出口だ! 人がいるかも!!! 異世界ってことは強くて可愛い巨乳っ子もきっといる!! あ、でも俺女の人となに話せばいいかわかんねー! とりあえず誰か助けてぇ!!!」


 そんな彼の淡い期待は、森を抜けた直後打ち砕かれることになる。


「撃ち方構え!!!」


 前方、およそ200メートルほど先には集落を囲うためだろうか、重厚な石造りの壁が森の対面に建造されており、その上には白い甲冑を纏った大男と10人ほどの弓兵がが火矢を構えてこちらに狙いを定めていた。


「ー-あの人達、後ろのバケモンを撃退するつもりか? いや、でもこのままじゃ……」


 そう、怪物は彼を追ってここまで来たのである。


 このまま怪物ごとあの壁に近づいて行けば、、、


「あれ、、、俺矢に射られてバケモンより先に死ぬんじゃね?」


 それともう一つ、彼には懸念事項があった。


「俺がこのまま直進すれば、最悪あの人達も死ぬかもしれない…… 他人に迷惑はかけたくない!」


 そう一人で呟くと、彼は限界が近い中、森から出てすぐに走る向きを90度変えた。


 すなわち、壁と平行になるように走り出したのである。


「ー-よし、これなら、あいつも俺を追ってくるし、俺も矢に撃たれることもないはず……」


 そう思っていた彼だったが、現実とは思い通りに事が運ぶ方が少ないのである。


「キィエエェェェェェェェェェ!!!」


 蟷螂は、森を出ると彼ではなく大きな両腕の鎌を空に掲げながら壁の方に直進していったのだ。


 彼は、後ろを振り返って唖然とした。


「あんのバケモン、なんで俺じゃなくてあっち行ってやがんだ!」


 蟷螂は彼に目もくれず一直線に壁へ進んでいったため、壁と蟷螂の距離は既に100メートルもなかった。


「蟷螂と一緒に森から出てきた阿呆がいる。こちらから離れているがそいつには当てるなよ」


「了解! いつでも撃てます!」


「っ撃てぇぇぇ!!!」


 壁の上に立つ大男が怒号を挙げた刹那、火矢が蟷螂に向かって一斉に放たれた。


 蟷螂は両腕の鎌で矢を何本か弾いたが、一発が腹部に突き刺さった。


「キィシャアアアアアアァァァァァァ!!!」


 矢が肉に刺さる痛みと肉が燃える痛みで、暴れてはいるものの蟷螂の動きが一旦は止まった。


「よし、効いてるぞ。次の矢、撃ち方構え!!!」


 そう大男が指示した直後だった。

 

「撃ち方辞めっ!!! あの阿呆、なんでこっちに近づいてやがる!?」


 大男の視界には、苦しむ蟷螂の後ろからさらに苦しそうな轟が走ってくる姿が映っていた。


「そっちに行くんじゃねぇぇぇ!!! お前の相手は俺だろうがぁぁぁ!!!」


 轟は、叫びながら満身創痍のまま蟷螂に突っ込んでいったのである。


「隊長、これでは矢が撃てません!」


「ったく、しょうがねぇなぁ。」


 そう言うと、隊長と呼ばれた大男は背中に携えた真紅の長弓に手を伸ばした。


「後始末が大変だからお前らに任せて撃退しようと思ったが、そうは言ってられねえな。俺が仕留める」


 彼は、矢じりの先端に赤い巻物が付いた矢を一本矢筒から取り出し、蟷螂に向かって長弓を構えた。


「爆ぜろ」


 ー-ヒュンー-


 そう言って放たれた矢は、音速に近い速さで蟷螂の眉間に突き刺さった。


 「あれ、なんか壁の方が光ったぞ? お、バケモンの頭になんか突きs」


 次の瞬間、刺さった矢じりから炎が噴き出し、凄まじい轟音と共に蟷螂の全身はバラバラにはじけ飛んだ。


「がっっっ、、、ぐっっ、、、げほぉぉぉぉぉぉ……」


 蟷螂のすぐ近くまで来ていた轟は、爆発の衝撃で森の入り口近くまで吹っ飛ばされた。


「ひぎゅう……」


 何度も地面に身体を打ち付けられ、全身草と土まみれになったところでようやく轟の身体は止まった。


「やべぇ、全身の感覚が無い…… マジで死ぬかも……」


 頭を強く打ってはいたが、ガシャガシャと音を立てながら誰かが近づいてきているのを感じ取っていた。


「やれやれ、少しやりすぎたか? おい阿呆、大丈夫か。おーい、しっかりしろ、おーい……」


 朦朧とする意識の中、轟が最後に見た光景はバラバラにはじけ飛んだ蟷螂の死体と、顔を覗き込みながら何か話しかけている大男の姿だった。


「ー-ああ、あのバケモン、死んだのか…… あの人達も全員助かってたらいいな……」


 その言葉を最後に、轟の意識は暗闇に沈んだ。



 


 




 


 初めまして、ぱた天と申します。数ある作品の中から私の作品をお読みいただきありがとうございます。


 拙い文章なので改善点も多々見られると思いますが、これから日々努力していく次第でありますので、応援の程よろしくお願いいたします。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ