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オリエンテーリング

 ソロリティ学園では三年生になるとオリエンテーリングと称してソロリティ星系内の各惑星や星系外周部を廻る行事がある。

 往々にしてその行事は三年生が卒業間近となった時期に行われる。今年の三年生も例年(と言ってもここ数年なのだが)通り各惑星を廻るオリエンテーリングが計画されていた。

 事件が起こったのは、ソロリティ学園の生徒を乗せた船が星系外周に差し掛かった時である。

 これまで同様、星系外周部にソロリティ学園の生徒を乗せた船が星系外周部に差し掛かった時、航宙管制用自動応答装トランスポンダー置に応答しない船籍不明の宇宙船が急速接近してきた。

 船籍不明の船の接近に合わせ、生徒達が乗る船の船内放送が緊急事態を告げた。


「緊急警報!緊急警報!当船に船籍不明の船が急速接近中!乗客は直ちに避難を行ってください。また乗務員は乗客の避難誘導を行ってください。繰り返します、当船に船籍不明の……。」


 船内放送を聞いた三年生が緊急警報に右往左往し避難行動もままならない様子を見せていた。その反面、乗務員は妙に全て落ち着いており生徒達を避難させようと声をかけている。

 実はこの襲撃自体はオリエンテーリングの一種でありこの様な場合にどう行動すべきかを訓練する為に数年前から企画されている物なのだ。


「ど、ど、どうしましょう。アリシア様、緊急警報ですわ!」


「落ち着きなさい、ソフィア。そして周りをよく見るのです。」


「アリシア様、落ち着けと言われても……それに緊急警報、ひょっとして海賊かもしれませんわ!」


「「「「ヒィっ!海賊!!!!」」」」


 ソフィアの“海賊”といった言葉に反応した他の生徒が青い顔で右往左往し収拾が付かなくなってくる。


「ソフィア。乗務員を見なさい。とても落ち着いた姿でしょう?」


「え?あ、言われてみれば……でも乗務員は慣れているからでは?」


「それはないですわね。彼らはソロリティ星系内を航行する船の乗務員ですよ。去年、ソロリティ星系内で起きた海賊事件は幾つあったかしら?」


「……たしかここ数年一件も無かったはずですわ。」


「では一度も災難に遭遇しなかった乗組員があそこまで落ち着いた行動が出来るかしら?むしろ海賊の襲来を知っていたのではなくて?」


「あ……。」


 アリシアの言うとおり乗組員は事前に海賊の襲来を知らされている。その為、混乱無く避難誘導が出来るのである。


「この後どうなるのか……もう少し様子を見ましょう。」


 アリシア達は乗務員に誘導されるまま宇宙服が納められているロッカールームに移動する。


「皆さんはここで宇宙服に着替えてください。相手は海賊です。万が一の場合に備え宇宙服を着用しておきましょう。着用が終わったら船内で一番安全とされている場所、中央船室へ移動します。」


 宇宙服に着替え終えたアリシア達が中央船室に移動を始めると通路の横から武装した集団が現れ銃を突きつける。隊長らしい者が端末の画面を見ながら一人一人確認して行く。


「……アリシア・カークランドだな?ご同行願おう……。」


「アリシア様……。」


 ソフィアが心配そうな顔でアリシアを見つめる。


「大丈夫、しばらく捕まっていたらすぐに解放してくれるわよ。」


 アリシアは武装した者たちに囲まれ接舷された船籍不明の宇宙船へ移動する。途中、隊長らしい男が部下に指示を出す。


「こいつは、貴賓室に入れておけ。」


「こんな劣「黙れ!口答えするな!」」


 小声で文句を言いそうになった者が隊長らしい男に殴り飛ばされる。


(あら?少し変ね?……でも、ここはソロリティ星系内、問題があっても星系軍が対処できるでしょう。)


 その判断が彼女に選択を誤らせた。その選択も部下の言葉や彼らの装備を詳しく知っていれば誤る事は無かったかもしれない。

 しかし、アリシアには先程の部下の言葉は小声で聞き取る事は出来なかった。装備についても詳しく知っているわけではなかったのである。


 ソロリティ学園の関係者がアリシア嬢の拉致に気付いたのは拉致されてから半日以上経過した後だった。

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