学園見学 その2
「メイシー先生、お久しぶりです。」
学園の案内をするのは学園の教員であるメイシー教諭でありキャサリンとは顔見知りの人物でもある。
「よく帰ってきました、キャサリンさん。ずいぶんご立派になったご様子ですね。こちらが旦那様ですね。ようこそソロリティ学園へ。」
メイシー教諭はリランドに向かって優雅にお辞儀をする。その優雅さは”流石はソロリティ学園だ”と思うほどであった。
「そしてこちらがお子様の“シルビィ”さんですね。まぁ、実にかわいらしいお子様ですね。目鼻立ちもはっきりしていますし将来は美しく成長なさる事でしょう。」
メイシー教諭の言葉に対してビィはさも当然だと言いたげに圧倒的なドヤ顔を晒していた。
「あら?私の言葉がわかるのかしら?シルビィちゃん?」
不味いと思ったのか、声をかけられた瞬間ビィは反射的にプイッと横を向く。
((!!))
リランドとキャサリンの二人の背中に冷や汗が流れる。
「まぁ、ある程度言葉がわかる様ですね。これは将来有望なお子様です。当学園には幼少期より様々なカリキュラムをご用意しております。シルビィさんには幼少期よりの入園をお勧めいたします。」
メイシー教諭はビィの事を賢い子供だと判断した様だ。その事にほっと一安心するリランドとキャサリンだった。
最初にリランド達が向かったのは学園校舎の教室の一つである。
と言うのも、今の時間は授業中であり実際の授業風景を見てもらおうと言うメイシー教諭の配慮であった。
メイシー教諭の思ったとおり教室ではそれぞれの生徒のカリキュラムに合わせた授業が行われていた。その様子を見たリランドは頭に浮かんだ疑問を口にする。
「生徒は授業中なのか……すると、先ほど沿道で見かけたのは?」
「あれは大学校生ね。ソロリティは希望すれば大学院まで進級出来るわ。私の知り合いも何人か進級したのでその人達が歓迎してくれたのよ。先ほども見知った顔が見えたし……。」
「ああ、そう言えばソロリティには大学校もあったな……。」
リランドの呟きにメイシー教諭がその内容を補完する。
「はい、ご存じの通りソロリティ学園は一貫教育を基本としており、幼稚園から大学院まで長い期間での教育も行っており大学校も大学院も存在します。私どもとしてはキャサリンさんには是非大学校へ進級なさってほしかったのですが……。」
「残念な事に家の方針で星系軍に勤務しなければならなかったのよ。でもそのおかげであなたに会えたのだから……。」
そう話すキャサリンは両手をリランドの首に回す。
「キャサリン……。」
「……ゴホン。夫婦仲がよろしい事は良い事ですわ。キャサリンさん……ここは学園であるという事をお忘れにならない様に。」
リランドとキャサリンが周囲を見回すとメイシー教諭だけで無く教室からも興味深そうに二人を見つめる多くの目があった。
「次の場所へ行こう、キャサリン。子供には目の毒だよ。」
リランドはするりとキャサリンの腕を外す。
「……それでは次の説明に移ります。次はソロリティ学園の各施設についてお話しします。どうぞこちらへ……。」
リランドとキャサリンはメイシー教諭の案内で体育館の方へ向かった。体育館へ向かう二人の背中を教室から以外にも廊下から見ていた者が二人いた。
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「ジェシーさん、見ましたか?今の“ダリアの君”の表情……。」
詩奈は勝負あったとばかりに勝ち誇った顔になる。
「くっ!“ダリアの君”のあの様な表情……リランド、侮っていましたわ。」
「あれは所謂、“メス顔”と言う表情ですわね?」
追い打ちをかける詩奈をジェシーは睨みつけた。
「まだです!まだ決まった訳ではありません。後を追いますわよ!」
「判りました。お供いたしますわよ。」
仕方が無いという様に詩奈軽くため息を吐く。
かくして二人はリランドとキャサリンの後を再度追いかけるのであった。




