プロローグ
ソロリティ星系
G2V型の恒星ソロリティを中心に大小合わせて十二の惑星を持つ星系である。
太陽より少し小さい惑星だが、生命居住可能領域の中に三つの惑星を持つ星系である。
三つの惑星はそれぞれ、パルーム、モータビア、デゾーリアの三惑星があり、同じ生命居住可能領域の中でも恒星ソロリティからの距離が微妙に異なっている為、惑星の気候が異なっている。
その中でもパルームは恒星ソロリティからの距離が地球と似た様な位置にあり気候も地球とほぼ同じであり、行政区や居住区が集中している。
それに対してデゾーリアはモータビアと違い少し外側にあり惑星全体の気温が少し低く極点の氷は厚く高山には多くの氷河が存在する。その為、惑星の水圏は小さく50%つまり海と陸地が半分半分である。居住可能な三惑星の中でも最も外側にあり陸地の面積も広い為、ソロリティ星系軍が置かれ星系への侵入者を常に見張っている。
そして少し内側にあるモータビアは惑星全体の気温が少し高いので極点に氷がほとんど出来ない。その為、惑星の九十%が水に覆われている海洋惑星である。
この三つの惑星の中でも恒星ソロリティに近い惑星であるモータビアに”ソロリティ学園”はあった。
モータビアには地球で言う大陸の様に大きな大地は存在しない。その為、ソロリティ学園はモータビアの中でも最も大きい島、ラコニア島に建設された。
ソロリティ学園は創立二百年を超える名門中の名門である。幼稚園から大学校までの一貫教育を旨とした併設型の教育機関であり、この時代では珍しい女子しか入学出来ない学園であった。
太陽系連合やその周辺星系国家からの入学者の多くが上流階級と言われる地位の出身者であるためお嬢様学校としての名前が通っていた。
ラコニア島にあるのはソロリティ学園の施設の他は学園生相手の商店(当然女性しかいない)と衛星軌道まで繋がる宇宙エレベーターしか無い。
宇宙エレベーターから一人の女性が慌ただしく降り立つとオートモービルに乗り学園へ向かった。その女性は学園に着くやいなや校舎に駆け込み学園長室のドアを勢いよく開けた。
「グレイス学園長大変です!」
「何ですか、シスターミリアム。実に慌ただしい。あなたも生徒を導く立場にあるのならもう少し落ち着きを持って……。」
グレイスは書類にペンを走らせながらミリアムに苦言を呈した。
「あのキャサリン・ウィルバーがやってきます。」
ミリアムの言葉を聞きグレイスの手が止まる。
「それは本当の事ですか?」
「間違いありません。私も先ほどエレベーター内で緊急のメールを受けました。学園長の方にもその内知らせが入ると思います。」
グレイスは少し息を吐くと椅子に背中を預ける。
「キャサリンが卒業して八年ですか……。まだこの学園には彼女の事を知る生徒も多い。騒ぎにならなければ良いのですが……。」
そう言うと再びため息を吐いたグレイスは自分の予感が外れる事をただ祈るばかりだった。




