連絡方法
あのカークランド家の遺産を狙う者がいると言う事実だけでサバーブやリランド、連宋は憤りを覚えた。この時、三人の心はすでに決まった。
三人はお互いの顔を見合わせ頷き合うとサバーブがカークランドの方を見る。
「まず、カークランド提督の生存を周知させるべきなのですが……そうしない理由は何かあるのですか?」
カークランドは目を閉じると少し考えている様な姿で立っていた。
「相手の出方を狭めると言う理由もあるが、最大の理由は遺産を狙う者が誰なのかあぶり出すという点にある。」
「あぶり出す?提督の力をもってしても遺産を狙う者が誰なのか判らないのですか?」
サバーブの言葉にカークランドは大きく首を振る。
「君たちが思うほど私は力を持っている訳ではないよ。確かに私は連合宇宙軍の提督まで上り詰めた。連合宇宙軍の人脈は使える。だがそれだけだ。それ以上の力を持つ者、それこそ大財閥の連中からすると吹けば飛ぶ様な者に過ぎない。国家、太陽系連合やイラメカ帝国、蓬莱国などの権力者の前では大財閥の彼らも頭は上がらない。」
「……だが少なくとも私たちは敵では無い?」
「ああ、だから君たちに協力を求めたのだ。君たちは二十年も前の救難信号をたどってやって来るほどの人物だ……それに私はこれでも人を見る目はあるつもりだよ。」
そう言うとカークランドは大きく頷くとサバーブ達の方へ握手を求めるかの様に手を伸ばした。
「よろしく頼むよ。諸君。」
カークランドが伸ばした手をサバーブ、リランド、連宋がガッチリ掴む。
「了解しました。最善を尽くします。」
―――――――――――――――
流彗星号の船橋には正面中央に操縦席があり、中央に向かって右隣に航法席、左隣に火器管制席、操縦席の後ろの少し高い位置に船長席、両脇に二つのゲスト用の席がある。
他には航法席の隣と火器管制席の隣にそれぞれを補助する為の座席があった。
今、サバーブは操縦席、リランドは火器管制席、連宋は航法席に座り椅子を船長席の方へ向けている。カークランドはゲスト用の席の一つに座り、キャサリンは船長席に座りその膝の上にはビィが抱きかかえられていた。
全員が着席する中、最初にサバーブが口を開いた。
「最初に確認しておこうか……ビィ、斥力フィールド発生装置と推進器の換装は何処まで進んでいる?」
「斥力フィールド発生装置の換装は終了、推進器も二基の換装は終わって後一基、一時間というところだわ。外部装甲と火器の類いはあと数分かかるかしら。」
「なら船に問題は無いな。では次にカークランド提督の令孫であるアリシア嬢に連絡をする方法だ……。」
次に議題を進めようとするサバーブにビィが口を挟む。
「ちょっと良いかしら?この場には流彗星号と関係の無い人がいると思うのですけど?」
そう言うとビィ自身を抱きかかえている本人、キャサリンの方へ振り向いた。
「あら?ビィちゃん、そんな事を言っても良いのかしら?ビィちゃんはどうやってアリシアさんと連絡をすると考えているのかしら?」
「それは当然、“そろりてぃ”とやらに行って連絡するほかは無いでしょう。」
ビィの返事を聞きキャサリンはにっこり笑う。
「ではビィちゃんは大の男四人がソロリティを訪れてアリシア嬢に面会を申し込むつもりなのね?しかも提督は生存を明かさないのでしょう?それは信用出来る人たちなのかしら?」
「あ……。」
二人の会話を聞いていたリランドが頭を掻き少し息を吐く。
「“うさんくさい男がやってきた“としか思わないな。」
キャサリンはリランドの意見に軽く頷く。
「それにソロリティは関係者以外の男性は星系内にも入れない様に厳重に監視している星系なのよ?流彗星号が超越した性能の宇宙船でも、常に星系内の侵入を誤魔化せるとは思えないわ。」
「確かに流彗星号には監視の目を誤魔化し続ける機能はありません。だとすれば、どの様にすれば良いのでしょうか?」
問いかけるビィにキャサリンは顔を近づけた。
「私に考えがあります。関係者以外は入れないのだから、関係者になってしまえば良いのですよ。」
そう言うとキャサリンは軽く微笑むのだった。




