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キャサリンの驚き

 人は思ってもいない方向に力が加えられるとバランスが崩れる事がある。

 キャサリンは思ってもいない重力と言う力が働いた事で体勢を崩してしまったのだ。


「大丈夫か?キャサリン。……すまない、この場所に重力がある事を言い忘れていた。」


「すみません、ありがとうございます……。」


 リランドに助け起こされたキャサリンは少し何かを考えている様だった。


「搭乗口は極軽い重力だが中に入ると通常と同じ1Gの重力があるから気をつけて。」


「リランド准将、これは……。」


 何かを言おうとしたキャサリンをリランドは片手をあげて制止を促す格好をした。


「キャサリン、何か尋ねたい事があるかもしれない。だがそれは船橋ブリッジへ移動した時にしてほしい。」


「……判りました。」


 ―――――――――――――――


 流彗星号の船橋ブリッジに到着したキャサリンは自分の知っている宇宙船との違いに唖然としていた。


 まず流彗星号の外見はブラジオン型の輸送船の様に見える。外から見た片方の外殻には無数の穴が開いており激しい攻撃に晒された事を物語っていた。四基の主推進器メインエンジンも三基が大破している。

 であるなら、船の中の船室や通路にも被害が出ている事は必定だと考えていた。

 しかし、実際流彗星号に入ってみると通路に被害は全く見当たらない。船室はまだ見てはいないが通路に全く被害が無いのなら船室の被害も微々たる者だと想像出来る。

 そして流彗星号の通路の性能もキャサリンが唖然とする原因だ。

 通路に重力制御がなされている。おそらく各部屋にも重力制御により1Gの重力環境下を再現しているのだろう。

 この技術は戦艦クラスの船に搭載されているだけであり、その範囲も限られた物だ。流彗星号の様に小さい船に搭載可能であると聞いた事が無かった。


 そして明らかに普通とは違う船橋ブリッジ。元々の船自体が船橋ブリッジを改造していた様だがこれは改造というレベルではすまない様に思える。

 本来のブラジオン型の船は船橋ブリッジが狭い。乗組員が移動に手間取るほどの狭さだ。

 しかし、流彗星号の船橋ブリッジは広い。各座席への動線が確保されているので移動も滑らかに行える。

 加えてこの船の船橋ブリッジには船長席があった。

 ブラジオン型の輸送船は動かす為に必要な乗組員は三名であり、その三名を何時間かごとに交代させる事で長距離の移送を行う船だ。つまり船長席はないのである。


 そして気になる事はもう一つある。


 船長席があると思われる場所に椅子は無い。船長用のコントロールパネルがあるだけである。その座席があると思われる場所の頭上には通風口と言うには少し大きい口が開いていた。おそらく船長室に繋がる出入口なのだろう。


「リランドさん……この船の乗組員はリランドさんを含めてここにいる三人で間違いは無いでしょうか?」


「あ、ああ。乗組員は三名だ。それに間違いは無い。」


「では乗組員以外の人はどちらに?」


「それは……。」


 三人以外の人物について話すかどうかためらうリランドであったが船橋ブリッジの出入口から声が掛かった。


「それは私が説明しよう。」


 一同が出入り口の方を見ると声の主であるロイ・カークランドが立っていた。


「……誰でしょうか?でもどこかで見た事がある様な……?」


 キャサリンの言葉にカークランドは微笑みながら答える。


「私の名前はロイ・カークランド。一応、連合軍で提督をしていた者だ。お嬢さんぐらいの若い世代の人には面識が無いかもしれないが……。」


「ロイ・カークランド……!神の手のロイ!」


 キャサリンは意外な人物の出現に驚きの声を上げた。


「神の手か……若い人にも私の異名を知ってくれてうれしいよ。」


「いえそんな……カークランド提督は教科書にも載っていましたし……。」


「そうか、それで……。実は言うと、私がここにいる事を彼らに秘密にする様に頼んでいるのだよ。」


「そうだったのですか!と言う事はこの船はカークランド提督の……いえ、カークランド家の実験船なのですね。」


「実験船?いやこの船はカークランド家の持ち物では無いよ。」


「え?カークランド提督が船長では無い?」


 その時、船橋ブリッジの照明が薄暗くなり、船長室への出入口にスポットライトが照らされる。

 そしてゆっくりと船長室から船長席が下りてきた。


「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ。船長はこの私!キャプテンビィなのです!」


 スポットライトに照らされ着ぐるみを着た幼児が船長席に立っていた。


「え?えええええええええええええええええええええええ!」


 キャサリンが流彗星号に乗り込んで一番の驚きの声が船橋ブリッジに響いた。


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