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キャサリン・ウィルバー少尉

 キャサリン・ウィルバー少尉が流彗星号についての報告を受けたのは流彗星号がエキドナ星系内に帰ってきた時であった。他星系から戻る流彗星号を港湾局の監視装置が捉えていたのである。


「ウィルバー少尉、エキドナ星系に侵入する不審船を発見しました。まずは外周監視装置が捉えたこの映像をご覧ください。」


 そう言って下士官が提出した映像には斜め方向に進む宇宙船の映像が映っていた。斥力フィールドが星間物質と反応して白く輝いているが、至る所に破損の痕がある船の姿ははっきりと判った。


「妙な飛び方をしているな……この船の認識番号は?」


「はい。報告によると認識番号“TKOG-CTRY-DAG7”、船名“流彗星号”です。」


「流彗星号?!リランド准将の船じゃないか!しかし、あの船はブラジオン型の宇宙船だったと記憶しているが、この様な航行は可能なのか?」


「技術部によると可能だそうです。おそらく推進器のいくつかが破損した為、一基ないし二基の推進器で飛んでいる為この様な飛び方になっているとの事でした。」


「そうか……何にせよ彼らから事情を確認する必要があるな。宇宙港の事務所に向かう。」


 そう言うとキャサリンは制服を翻し港湾局を出て宇宙港へ向かった。


 ―――――――――――――――


 キャサリン・ウィルバー少尉、彼女は元々エキドナ星系軍主計局に務めていた新人であった。

 それが港湾局へ転属になった理由は彼女自身が反主流派となった軍閥企業の令嬢だった事とリランド・ダセルド准将の存在である。

 主流派と言われる軍上層部にとって煙たい存在であるリランドと軍閥企業の令嬢であるキャサリンを組ませる事で両者の自滅を誘ったのだ。

 だがそんな軍上層部の思惑に反して両者の組み合わせは思いの他うまくいった。

 その結果、キャサリンも歳を重ねるごとに実力を身につけ港湾局では実力者として名をはせていた。


「それでリランド准将、何があったかご説明願えますか?」


 宇宙港にある港湾局事務所でリランドは事情聴取を受けていた。

 リランドは当初、港湾局の事務官なら自分との知り合いである為、うまく誤魔化せると考えていた。ただし、その事務官がキャサリン少尉では無かった場合だ。

 リランドはキャサリンに長年コンビを組んできた経験から何かを誤魔化そうとしてもすぐに察知されてしまっていた。


(参ったな。まさかキャサリンが出向いてくるとは……さて、どうしたものか……。)


 リランドは頭の中で対策を考えるがキャサリンの言葉でその考えは中断してしまった。


「リランド准将。流彗星号が大破した事についてご説明をお願いします。」


「それについては港湾局に提出した資料を見てくれ……いや下さい。」


 キャサリンは少し微笑んで答える。


「准将、いつもの話し方で良いですよ。それで資料には暗黒宙域を航行とありますが目的をお聞かせ願えないでしょうか?」


「……いつもの様に異星人の遺跡探しだ。不思議な現象がある場所に異星人の遺跡がある可能性が高いと推察したのでね。」


「遺跡ですか……判りました。では確認のために流彗星号の航路データーをお願いします。」


 リランドがデーターチップを取り出すとキャサリンが座る机の前に置いた。キャサリンは中身を調べ問題がない事を確認する。


「では、最後の質問です。流彗星号に違法薬物もしくは密航者は居ませんね?」


 リランドにはキャサリンは此方の事情を探っている様に思えた。


(そうだな、カークランド提督の存在は秘密であるが密航者では無い。そして俺たちは違法薬物などを移送しているわけでは無い。)


 頭の中で整理し返答しようとした。だが、それは悪手だった。


「俺たちは……。」


「准将、あなたは何か隠していますね。」


「いや、俺は何も……。」


「では何故、答えるまでに若干の間があったのですか?普段のあなたなら何も無ければ間髪を容れず答えたはずです。違いますか?」


「……。」


 キャサリンは有無を言わさぬ様な迫力でリランドに迫る。


「では私が直々に流彗星号の中を調べさせてもらいます。良いですね?」


「はい。」


 リランドはただ頷く他は無かった。

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