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ロイ・カークランド

 住居はやはり脱出カプセルを改造した物らしく壁は金属製であり玄関の扉はエアロックになっていた。

 サバーブたちはエアロックを操作し中に入る。

 エアロックの先は短い通路になっていて部屋と接続している。部屋は小さなアパートの一室ぐらいの大きさで端の方にベッドが置かれていた。

 所々に補修した跡のあるベッドの上にその人物はいた。体調を崩したのか上半身だけ起き上がりこちらを見ている。

 手入れされた白髪に深く刻まれた皺がその人物の年齢を物語っていた。


 サバーブ、リランド、連宋の三人はこの顔の男をよく知っていた。サバーブたち三人が少年だった頃、連合宇宙軍で提督を務めていた男である。


 ”ロイ・カークランド”別名”神の手のロイ”

 軍医でありながら戦場で数々の功績を挙げ提督の地位に就いた人物だ。

 彼が率いる部隊は恐るべき勝率を誇っていた。だがその様な事はロイ・カークランドを語る上では些細な事だ。

 ロイはどんな戦場であっても患者を見捨てる事は無かった。その上、ロイは患者を死なせた事は一度も無い。

 どんなに重傷でも、助からないと思われた者でも彼の患者となった者で死亡者はいない。

 それ故に“神の手のロイ”と呼ばれていた。

 また彼は星系宇宙軍を定年で引退後、星系間輸送で巨万の富を得、カークランド財閥を築き上げたと言う側面も持っているいわば伝説とも言われる人物である。

 彼の立身出生の話は様々な人の手で小説、映画、演目などとなり多くの人々に知られていた。

 その為、サバーブたちの年代の憧れであり目標とされる人物なのだ。


 その“神の手のロイ”がサバーブたち三人の前に居るのだ。


「こんな格好で失礼する。私はロイ・カークランド。昔はそれなりの地位に居たが今はしがない遭難者だ。」


 そう声に出すと両手を広げ、肩をすくめた。


「は、初めまして。わ、私はサバーブ・Q・デジト。元宇宙軍大佐であります。」


 そう言ってサバーブは体をガチガチにしながら敬礼をする。


「私はもう退役した身。敬礼は不要だよ……だが宇宙軍大佐か……君は出来る人なのだね。」


「き、恐縮であります!」


 サバーブに続いてリランドも自己紹介を始める。


「お、いや、自分はリランド・ダセルド。元エキドナ星系軍准将であります。」


「准将!それは素晴らしい。」


「はっ!光栄であります!」


 リランドも緊張した面持ちで敬礼をする。そのリランドに続くのが連宋だ。


「自分は布留・連宋、元連合宇宙軍情報部少佐であります。」


「ほう、情報部!わたしも作戦中はよくお世話になった物だよ。情報部の少佐だから立派な物だよ。」


「過大な評価、ありがとうございます!」


 そして連宋も他の二人と同じようにロイに対して敬礼をする。


「ふふふ、まいったね。単なる遭難者であるこの私に対しての対応。身に余る光栄だよ。」


「いえ、提督は伝説とも言える人物ですので。なぁ?」


 連宋はサバーブとリランドの方へ顔を向ける。二人は連宋の言葉に同意するかの様に頷いた。


「伝説か……あれは少し誇張された……グッ。」


 話の途中でロイは胸を押さえ口から血を吐いた。


「「「提督!!」」」


 近寄ろうとする三人をロイは手を突き出し押しとどめる。


「いや問題は無い。何時もの発作だ。」


 ロイの言葉にサバーブは尚も近づこうとする。


「しかし!」


「少し前に罹った風土病の様な物だ。……死者を出した事が無いだけ・・が自慢の私の最初の死者が自分自身とは……。」


 ロイは少し皮肉めいた表情で目を閉じる。


「!!」


 サバーブが近づくとロイは息絶え絶えになっており症状がかなり危険な状態だという事が素人目にも判った。


「提督を流彗星号に連れて帰るぞ!」


 サバーブの言葉に連宋は大きく頷いた。


「だが、無理にベッドから動かすのは不味くないか?」


「む、確かに……。」


 その隣でリランドが自分の胸を叩いた。


「問題ない。その場合はこのカプセルごと運べば良い。連宋、流彗星号に連絡だ!」


「了解!」


 連宋は急いで着陸艇に戻ると流彗星号に残ったビィに連絡を試みた。


「連宋殿!丁度良いタイミングです。」


「丁度良い?何かあったのか?」


「はい、地上走査は終わったのですが海賊連中が流彗星号を囲みまして……。」


 地上と同じ様に流彗星号にも緊急事態が訪れていた。

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