リランドの提案
船倉で装備のメンテナンスをしていると考えていたサバーブの予想とは異なり部屋の真ん中でリランドは腕組みをし、唸りながら立っていた。
「どうしたリランド?こんな所で何か考え事か?」
「ん?サバーブか……。何、流彗星号の船倉は二つありどちらも広いだろ……。」
リランドの言う通り、流彗星号の船倉は船員の部屋をはさんで上下に二つあり、それぞれが元の流彗星号の船倉と同じぐらいの広さがある。
その為、星系間の輸送の仕事を行う場合でも船倉に荷物が満載されたことは無い。
「輸送に使う船倉をどちらか一つだけにして、もう一つを流彗星号の装備を充実させるために使った方が良いのではないかと考えていた。」
サバーブはリランドの言葉に大きく頷き同意する。
「そうだな。この間からの輸送量を考えると下部船倉だけで事は足りるな。」
「この間の……ダイソン何とかに行った時の惑星を覚えているだろう。あの時、俺たちはあの惑星に着陸しなかった。」
「まぁ、着陸できないことは無いがその為に斥力フィールドを展開するのはエネルギーの無駄遣いだからね。」
斥力フィールドを装備している船は斥力フィールドを展開することで大気圏突入および大気圏内の航行が可能だ。しかしこれはあくまで可能なだけであり、大抵の船は大気圏に突入したりはしない。
斥力フィールドはフィールドにぶつかる粒子を弾く時にエネルギーを多く消費する。そのため常に粒子がフィールドにぶつかる大気圏内では宇宙空間を航行する時よりも大量のエネルギーを消費する事になる為だ。
「で、俺は考えた。もし流彗星号に着陸艇、大気圏離脱も可能なシャトルタイプが装備されていたら着陸できたのではないか?……とね。」
リランドの提案をサバーブは一考する。
確かに着陸艇があれば活動範囲も広がる。だが、着陸艇が必要になることはそれほど多くないように思えた。それに着陸艇、それも大気圏を離脱することが可能な物は値段も高い。今の“株式会社サリーレ”では購入は難しいだろう。
「確かにいいアイデアだが購入のための費用はどうする?そこまでに余裕は無いぞ?」
するとリランドは返事を予想していたのかにっこりと笑い親指を立ててサバーブの肩を数回叩いた。
「費用は大丈夫だ。ほら、この間持って帰った薬品があっただろう。」
「あ、そう言えばそろそろ鑑定結果が出るはずだな。」
サバーブの返事にリランドは大きく頷く。
「あの時の事前見積もりでも結構な額だった。あれを頭金にすれば中古の着陸艇は購入可能だ。」
サバーブ達がダイソンスフィアーから持ち帰った薬品の数は全部で八カートン、その中には薬品が二十本入った箱が十個収められている。全部で千六百本と言う数の未知の薬品が手に入っていた。
「あれか……たしかスタトレの職員は最低一本百クレジットと言っていたから十六万クレジットか。中古着陸艇の頭金なら可能だな。」
「だろう?どう思うこのアイデア?」
「そうだな……いるかどうかは微妙な線だが……連宋も交えて考えてみるか。」
リランドは右手をサバーブの方へ突き出し親指を立てた。
「大丈夫、連宋なら同意済みだぜ。」
「やれやれ、無駄にならなければいいが……。」
しかし、後々着陸艇が必要になる事が待っているとはサバーブには全く知りようが無かった。




