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挿話:スター誕生!

 ミカエルを乗せた宇宙船は地球にある最大の都市、セントラルへ到着した。目的であるオーディションの受付を行っているスタジオはセントラルの一角あるのだ。


 辺境であるエキドナ星系から地球までの距離は長い。その為、長距離宇宙船を乗り継いでの旅になる。長旅の疲れから大抵の者がしばらく休むことになる程の距離だ。

 リニアから颯爽と降り立ったミカエルの足取りは軽く全く疲れていない様に見える。


(長旅だが疲れていない。それにオーディションの締め切りまで時間はまだある。)


 衛星軌道上にある宇宙港からセントラルまではリニアを使い宇宙エレベーターで降下するとセントラルの中央駅に到着する。セントラルでは車などは地下道を使い地表を移動する事は許されていない。その為、駅へ着いたら後は歩きだ。

 幸い目的地であるスタジオは駅からそう遠くない位置にあり、歌手のマイクを模した特徴的な建物は駅から見ることが出来た。


 セントラル中央駅から赤い煉瓦の通りが放射状に延び、その通りの中央には木々が植えられている。今は初夏らしく青々とした木々が茂っていた。

 その木々の木陰でストリートミュージシャンが歌を歌い、大道芸人がパントマイムを見せていた。

 ここは明日のスターを夢見る者たちが集まる街なのだ。


 ボストンバックを肩から下げたミカエルは優美な微笑みを浮かべ歌を口ずさみながら軽やかに歩いて行く。

 時々その微笑みに見とれた者や歌に気を取られた者がミカエルの方を注視するがこれからの事を考え期待に胸を膨らませているミカエルは全く気付いていなかった。


 ―――――――――――――――――――――


 その事務所は連合の中心地である太陽系、それも地球の一角にあった。


 レン・ジェンダリー・ミュージック・スタジオ


 この音楽スタジオは人類が隣の星系に到達した頃に設立された音楽プロダクションである。創立からすでに三百年以上が経過し老舗と言われる存在になっていた。

 驚くことにスタジオは地球上、つまり地表にあった。そしてそのスタジオが入るビル自体がスタジオの持ち物であり、スタジオの為に存在しているビルでもある。

 そんな老舗の事務所を率いているとも言える名プロデューサー“ハンニバル・ショーン”は苦虫をかみつぶしたような顔をして居合わせたスタッフに応募者の履歴書を叩きつけていた。


「ワァッ?ユーたちの目はどうなっているノデスカ!!サムウェアの賞を取ったとか実に下らないことをライトしてるじゃなぁーィ!!こんな事で明日を担うシンガーがゲットできると思うーのか?アンダースタァーンド?」


 しかしスタッフの一人が履歴書を拾いながら呟く。


「ですが……例えばこの人物、ギャラクシー・レコード新人賞を取った“エルビ・フォルセン”はルックスも良く有望な新人と……。」


 スタッフの話の途中でハンニバルは大きな声を張り上げた。


「ノーッ!!ユーは何もわかっていまセン!ソングに必要な物は賞ではありまセン、歌いたいと言うハート!そう、歌いたいと心の底からあふれ出るパッションが必要なのデス!!」


 ハンニバルはスタッフ連中に自分の考えをぶつけると窓の傍に行き、道を行き交う人々を眺めため息を吐いた。


「……今音楽業界には光がありまセン。それはホワーイ?」


 一人のスタッフがおずおずと自分の考えを述べる。


「……絶対的なスターがいないから?」


「Gooooood!ユーはよく判っていマース。ユーの言う通りスターがいません。いるのはスターとは名ばかりのメッキの星しかいませン。一挙一動が人々をひきつけてやまない。人々を明日へ引っ張って行くようなスター。そんなスターが……。」


 ハンニバルは道を行き交う人々の動きがおかしいことに気が付いた。

 人の流れが途中でかなり遅くなるのだ。ある一定の距離まで来ると急に流れが遅くなる。それに流れが変わる場所が徐々にこのビルに近づいてきている様な気がする。


「何が起こっている……。」


 何かの予感を感じたのかハンニバルは部屋を飛び出すとビルの入口に向かう。

 ハンニバルが入口に到着した時、丁度その人物がビルに入ってくる途中だった。


 “待ち人来たれり”


 後にハンニバル・ショーンはそう語る。

 これが後に屈指の大スターと言われたミカエル・J・ソーンとの最初の出会いであったと。

誠に申し訳ありませんが今年の投稿はここまでです。

次回は1/5の予定です。

それでは皆様、良いお年を。

来年もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミカエルさんすげぇ
[良い点] テンポよく一気読みしました [一言] 更新は年が明けてからとのこと,良いお年をお迎えください
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