海賊として処理
リランドは捕縛した強化防護服の武装を解除してゆく。
「手持ちの武器はこのぐらいか?連宋、中の奴が武器を持っていないか精査してくれ。」
連宋の強化防護服は探知に特化しているため、強化防護服一つぐらいならお手の物である。
「口径1mm光線銃ぐらいだね。」
「1mmか、おもちゃだな。問題ないな。」
「リランド、こいつをどこへつれてゆく?」
「そうだな……下の船倉は空だからそこで良いだろう。サバーブに連絡して船倉を開けてもらえ。」
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リランドは流彗星号の下部船倉に捕縛した強化防護服を積み込むと光子騎兵銃を構えた。
「強化防護服から降りろ。船倉には空気があるから降りても問題は無い。降りなければ無理やり引きずり出すぞ。」
リランドの操縦する強化防護服が海賊?の強化防護服の装甲を引きはがす為に手を伸ばそうとすると、強化防護服のバックパック部分が開き中から赤茶色の髪の男が手を上げて出てきた。
「判った!降参する!だから撃たないでくれ!」
「連宋、こいつを縄か何かで縛ってくれ。」
「やれやれ、リランド君は人使いが荒いなぁ……。縛るのは作業用のワイヤーでいいか……。」
連宋が緊縛用のワイヤーを持ちゆっくりと男に近づいて行く。その姿を見たリランドは構えていた光子騎兵銃を下ろし強化防護服から降り様と膝をかがめた。
その瞬間、男は連宋に襲い掛かろうとした。どうやら連宋を人質に取りここから脱出するつもりの様だ。
次の瞬間、強化防護服から降りたリランドが見たのは地面に組み伏せられる男の姿だった。
「相変わらず隙が無いねぇ。言っとくがそいつは俺たちの中で格闘戦を最も得意としている奴だぞ。」
「あの戦い方に群青色の強化防護服、それに金髪!やはり“連合の青い悪魔”か!!」
男の言葉を聞き組み伏せている連宋が口笛を吹く。
「リランド、悪魔とはすごい言われようだね。でこいつはどうする?」
「縛り上げてどこかの部屋に放り込んどくか。レルネーに戻ったら海賊として突き出せばそれなりの賞金にはなるだろう。」
「了解!」
連宋は手に持ったワイヤーで男を手早く縛り上げた。
「わ、私はイラメカ帝国軍所属、スマートぐ……大尉である。連合軍リランド准将に条約に基づく保護を要求する!」
「と、言っているがどうする?リランド?」
「でもなぁ。俺は今軍人じゃない。だから准将ではない。考えたら面倒くさいな……そうだ、聞かなかった事にしよう。こいつは海賊だ。嘘を言っている可能性が高い。きっとそうだ。」
「な、なんだって!!!」
「妥当な線だね。よいしょっと。」
連宋が相手の服を掴み絞め技を行うと頸動脈を絞められた為か一分も待たずしてスマート大尉とやらは気を失った。
「相変わらずすごいな、その技……柔術だったか?」
「まぁ、柔術は小さいころから修行していたからね。とりあえず自称大尉さんはどこに放り込んどく?」
「俺の隣の部屋が空いていたな。そこでいいだろう。」
かくして捕虜となったイラメカ帝国軍のスマート大尉は海賊として当局に突き出されることとなったのである。
これが彼の運命を変えるとはこの時誰も予想さえしていなかった。




