海賊の正体
リランドと連宋を小惑星の影に下ろした後、流彗星号は小惑星の周りを一周すると元の位置に戻る。その動きは動力点検の為に船を動かしたかの様に見える。
サバーブの操船を見たリランドはその操船技術に脱帽した。
(エンジンの変わった宇宙船を寸分の狂いも無く元の位置か……海賊連中も動力点検だと思っただろう。ま、実際点検も兼ねているのだが……。)
「ジャミングで相手が識別できないな。連宋、接近してくる連中の強化防護服を見ることが出来るか?」
「ちょっと待ってくれ。確かこの強化防護服に付属しているオプション装備が……。」
連宋が装備する強化防護服のバックパックの一部が開きオプションのドローンが数機飛び出す。成人男性の拳よりも少し小さい大きさのそれは極僅かにスラスターを吹しせながら動き強化防護服の一団に接近していった。
「よし、捕らえた。リランド、相手の映像を送るよ。」
連宋より送られてきた映像はリランドの強化防護服内のモニターの一部に映し出された。リランドは強化防護服の内側、自分の右手の近くにある操作パネルを使い映像を拡大する。
「……紋章や部隊章が外されているがこれはイラメカ帝国軍の強化防護服だな。外見から判断すると数年前に連合内部に侵入した部隊の物に似ているな。おそらく隠密行動に特化したものだろう。」
「イラメカ帝国?何故そんな連中がこんな所に……?」
「いや、不思議じゃない。中央から目の届かない辺境に何らかの工作をするのは敵対国の常套手段でもあるからな。」
「第五次星間戦争か?おいい、勘弁してくれよ……。」
「それにここは異星人の遺跡があった暗黒空間の近くだ。ミカエルさんの言っていた他の遺跡もこの近くにあるのかもしれないぞ。案外、それの探索もやっているのかもな。」
「おいおい、イラメカが異星人の遺跡を探索しているのか?あの遺跡がイラメカの手に渡ったら……。」
「その辺りは大丈夫だろう。サバーブもそのことについては気にしていないみたいだ。」
「サバーブが?そんなものなのか……ところでリランド。イラメカ海賊はどうするんだ?数は八機、一分隊はあるぞ。」
「当然、殲滅あるのみ。知っているか連宋、一番奇襲しやすいタイミングって言うのを?」
連宋は首を傾げわからない様子だ。
「奇襲しようとしているその瞬間だよ。つまり今だな。」
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息を殺すようにゆっくりと流彗星号に強化防護服の一団が近づいてゆく。全部で八機あり、それそれが一定距離を保ち紡錘形を成していた。
「よし各自推進機を停止。慣性で目標に近づけ。途中、決して光を見せるな。」
「了解!やっこさん生意気にジャミングをしているな。が目視で捉えてしまえば関係ねえな。」
「さぁーてどんなお宝を積んでいるのかな。へへへへへ。」
「いつも通り積荷と船を奪って船員はその場で放置。楽な商売だね。」
「おいおい、お前ら海賊が板についてきたんじゃないのか?」
「流石にこの商売を長くなってきましたからね……そういうスマート軍曹も……。」
「軍曹はよせ、ジェノバ。ここではその呼び方は禁止だ。ニームも笑ってないで……。」
その時、スマートの近くを移動していたニームに光の塊が当たる。光の塊はニームの着る強化防護服を飲み込み爆光に変えていった。
「敵襲だと!?」
スマートが驚く間に一機また一機と撃墜されてゆく。
「敵襲だ!全員防御姿勢を取れ!くそっ!一体どこから!!」
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