超エステマシーンの罠
本来ならば何ヶ月、最悪年単位の探索が必要と思われていた事案がわずか半日で解決してしまったのだ。
予定よりも早く見つかったことに何の不満もない。この部屋に来るまでの間にいくつかの薬品を入手している。それだけでも戦利品としては十分な戦果だ。
「……。」
突然サバーブが何を考えたのか両手で自分の頬を平手打ちにした
「……よし!無事見つかったのだ。今はそのことを喜ぼう!」
サバーブの言葉にリランドや連宋、ミカエルははっとした表情になる。紆余曲折有ろうが無かろうが見つかったことに変わりがないのだ。
「そうだな。目的の物が見つかった、後は使うのみ!」
「おう」「ああ」「うむ」
そして四人同時に銀色のカプセルに手をかけた。
「「「「ん?」」」」
四人全員がカプセルのふちに手をかけたことでお互いに顔を見合わす。
「四人同時に使用するのは不味くないか?」
四人が異口同音に唱えしばらく沈黙する。
その時間は極僅かな物であったかもしれない。沈黙の後サバーブが口を開いた。
「まず整理してみよう。私一人が使用した場合。途中で問題があり私が死亡するとどうなる?」
リランドが少し周囲を見渡し答えた。
「その場合は誰も帰ることが出来なくなるな。俺もそうだが連宋も船の操縦は出来ない。ミカエルさんが出来るのはオートマチック操縦だけでしたっけ?」
「自分に出来るのは港を設定して自動のボタンを押すことぐらいだ。」
リランドはミカエルの言葉に頷き次の条件を提示する。
「では俺が使用した場合。同じように問題があったとすると……?」
今度は連宋がリランドの条件に答える。
「帰ることはできる。でもリランドが入ること自体に問題がある。ここの様な未知の場所で戦闘があった場合、戦力の大幅低下は死活問題に繋がり帰ることが出来ない可能性が高くなる。そしてわしが使用した場合は……。」
連宋はサバーブの方へ顔を向けるとサバーブが肩をすくめて答えた。
「愚問だね。そもそもこの宙域での宇宙船の操縦をナビゲーター無しですること自体が無謀だ。」
三人の話を聞いていたミカエルがため息を吐く。
「やれやれ、では自分が入るしかないのか……。」
そう言ってミカエルはカプセルに入ろうを蓋に手をかける。しかし、その行動はサバーブの声によって止められてしまった。
「ミカエルさん。それも問題があります。」
「問題?何の?」
「カプセルが問題なく無事使えた場合。我々三人がカプセルを使っている間、ミカエルさんは一人で待つことになります。その間何があっても我々には対処できません。逆でも同じですし一人ずつでも同じことになります。」
結局、四人同時に使用する他は無い様だ。
ミカエルはカプセルの傍に立つと設置されているパネルを操作し始めた。
「やはり自分が見たものと同じ物の様だ。このパネルの“∧”を押せば数字が増え、“∨”では数字が減る。数字一つで一歳分若返る。」
サバーブはミカエルの言葉を一つひとつ確認してゆく。
「これは異星人の遺跡で見つかる数字だな。確かにこの“∧”を押せば数字が増え、“∨”では数字が減る……。」
そんな中リランドは一人ぶつぶつ言っている。そのリランドに連宋は声をかけた。
「どうしたリランド?何かわからないのか?」
「数字をいくつにするか……二十か三十か。それが問題だ。ひょっとしたら三十五と言うのもありか……。」
どうやらリランドは何歳に若返ろうか悩んでいるようだった。しかし三十五と言う数字の選択はサバーブの頭をひねらせた。
「三十五?それだと十三歳だぞ?ハイスクールからやり直すのか?」
「若い方が体を鍛えるのに有利なんだよ……でも三十五も若返るのはやり過ぎか……。」
リランドは大人しく二十と言う数字を選ぶ。三十歳の若返りで二十八歳、つまり就職してある程度経験を積んだ頃に戻ると言う計算だ。
「自分は六十歳だから三十五を選ぶのだが問題はないだろうか?」
六十歳と聞きサバーブ達は驚きの表情でミカエルを見つめた。ミカエルの外見年齢は八十歳以上に見えるのは鉱山での過酷な労働が原因らしい。
「その場合だと我々がしばらくの間待つことになりますが問題はありません。」
サバーブの言葉にミカエルは安堵の表情を浮かべた。
全員の希望若返り年数が決まった所でサバーブが皆の顔を見渡す。
「よしそれでは皆でカプセルを使ってみようじゃないか。」
サバーブの号令とともに全員が服を脱ぎカプセルの中に入る。カプセルの稼働スイッチは扉を閉じると自動的に入る様だ。中で横になり目を瞑ると時間がかからず意識が遠くなってゆく。
ただ、あることを考慮していなかった事は誰も気が付かないでいた。




