探索の準備
巨大な地図が円状に連結されている世界。
連結部にある宇宙船用の港に接舷した流彗星号だったが、一行は今後の方針について打ち合わせを行っていた。
会議室と化した船橋ではサバーブが真剣な面持ちでリランドや連宋、ミカエルと向き合う。
「……さて、異星人の遺跡に着いたのは良いが今後どうするかだ……。」
サバーブの問いかけにミカエルが先陣を切る。
「まず空気があるのか、そしてその空気に危険性がないのかが知りたい。」
「連宋、観測結果は?」
「流彗星号の周囲の空気は0.3気圧程度、空気に病原体などの危険性は確認されていないよ。外へ出て活動するなら全員宇宙服を着ていたほうが良いと思う。リランドは強化防護服と言う線もあるが大きいから全体行動は難しいだろう。」
「仕方がない。俺は宇宙服にとどめておくか……だが各自の武器はどうする?」
リランドの問いかけにサバーブが答える。
「ここは未知の場所だ。何があるか判らないから武器は持っていったほうが良いだろう。私は騎兵光線銃を使う予定だ。あとサバイバルナイフと医療用キット、食料、寝具は各自持っておく必要があるな。移動はどうする?」
「移動にはわしのドローンを使ったらどうか?四人程度なら運べるから問題はないと思うよ。リランド、強化防護服のジェットパックは使っていいか?」
「ジェットパック?何に使うんだ?」
「ドローンの補強だよ。ジェットパックを使えば積載量を増やせるからね。」
「ジェットパックか……ちょっと大型になるな。しかし、目的の位置が判らないからそのぐらいは必要だな。まさかこんな遺跡だとは思ってもいなかったよ。」
「「「全くだ。」」」
サバーブの言葉に三人が異口同音に同意する。
彼らが想定していた異星人の遺跡は大きくても宇宙ステーション、例を上げると”レルネー1”程度の大きさだった。
しかし現実はそれとは比較にならない広さの遺跡だ。
今現在”流彗星号”が停泊している港のある接続部でもちょっとした大陸ぐらいの大きさの施設である。大陸なら建物があるのである程度は探索の範囲を絞り込むことが出来るがここは大陸ぐらいの大きさの施設だ。
右を見ても左を見ても似たような光景が続いている。その施設の連なりを見てサバーブは軽くため息を付いた。
「一体どのくらい探索に時間がかかるのか見当もつかないな……。」
「それに食料の問題もある。自分が用意したのは装置を見つけてから必要となる分だ。多少余分にあるとは言え足りるかどうか……それが問題だ。」
ミカエルの言葉に連宋は自分の案を返した。
「それに関してなんですが、あの巨大な地図のような世界には地球型の動植物がいるみたいです。それらの中から食料を調達できないかと考えています。」
リランドは連宋の情報に喜びを隠せないでいる。
「地球型の動植物か……これは嬉しい誤算だな。必要になったら俺が取ってこよう。狩りか……腕が鳴るな。」
「食料の問題もあるが兎も角、探索を始めないことには何も手に入らない。手始めに接舷している場所から探索を開始しようじゃないか。」
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半日後、連宋が改造したジェットパック付きドローンに四人が乗り込み探索を開始した。
まず探索するのは流彗星号が接舷されている港?の施設だ。港だけで”レルネー1”の数倍の大きさがある。
サバーブ達はこれから探索にかかる時間を考慮し、まずは手近な施設から探索を開始した。
彼らが施設の中に入ると同時に港湾の施設自体が動き出す。
<生命の退去を確認>
<接舷された宇宙船を確認します……確認終了。恒星間航行輸送艦と判断。各部の老朽化が著しいため緊急補修に入ります。>
<船内備品を確認。一部老朽化のため修繕対象。船体を含め緊急補修対象とします。>
サバーブ達の知らない間に緊急補修と言う名の魔改造が進んでゆくのであった。




