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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは太陽が消える日を迎える

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脱出

 流彗星号が脱出するルートの隔壁がゆっくりと閉まってゆく。


「連宋、隔壁へのアクセスはできるか?」


「さっきからやっているんだが……反応がない……。」


「反応がない?回路が閉じられているのか?」


「いや、閉じられていると言うより止まっている……詰まっていると言ったところか?」


「詰まって?……そうか!フィールドの範囲外の部分は時間の流れが遅くなる、つまり情報の伝達速度が落ちているのか!」


 サバーブの言葉を聞いてリランドが疑問を投げかける。


「それならフィールドの範囲を広げれば良いんじゃ無いのか?」


 リランドの疑問に連宋が答える。


「いや、フィールド発生器への回路にも接続できないから広げる事も停止させる事も出来ない。」


「くそっ!八方塞がりか!」


 リランドは両拳を机に叩きつけた。


「いやまだだ、まだ間に合う!」


 サバーブはそう叫ぶと操縦桿を握りしめ出力スロットルを全開にした。

 流彗星号は閉まりつつある幾つもの隔壁の間を疾走する。それでも隔壁が閉まる速度の方が少し早い。


「リランド!目の前の隔壁に重力子砲グラビトン!」


重力子砲グラビトン?そうか!」


 流彗星号から発射された重力子砲グラビトンは目の前の隔壁を巻き込み大きな穴を開けその場に黒い物体として漂う。

 その重力の塊と言える黒い物体は消えるまでの刹那の時間、流彗星号自体を引き寄せる。流彗星号はその反動とも言える効果により更に加速した。

 しかし無理な加速は流彗星号自体に歪みをもたらす。


「サバーブ!エンジン区画の接合部に歪みがでている。下手をするとエンジンが引き千切られるぞ。その前にエンジンを切り離しパージする事になるぞ!」


「……問題ない、次の隔壁で最後だ!脱出まで持てば良い。」


 だが時間は非情である。流彗星号の目の前で隔壁が閉じようとしていた。


「不味いぞ、サバーブ!隔壁の隙間がほとんど無い!」


「連宋!エンジンを切り離しパージ!」


 連宋が端末を操作すると四基のエンジンが切り離され剣の様な本体だけの姿になる。


「これならあの隙間も抜ける事が可能だ!」


 サバーブの言葉通り流彗星号は閉じようとする隔壁の隙間をくぐり抜けた。流彗星号の後ろではイラメカの要塞がブラックホールの重力に引かれ下降している。

 船橋ブリッジではサバーブが安堵のため息を吐いた、


「何とか脱出できたか。連宋状況は判るか?」


「……今のところ流彗星号は時速250kmで外側に向かって動いている。だからブラックホールに落ちる事はない。」


「時速250kmだと!それでは脱出まで百年近くかかるぞ!」


 そう言うとサバーブは頭を抱えた。そのサバーブを見たリランドが連宋に尋ねる。


「連宋、その結果は間違いないのか?」


「間違いない。何度も再計算した。」


 リランドも連宋も肩を落とし意気消沈した。三人が意気消沈する流彗星号の船橋ブリッジにシルビィの声が響き渡る。


「困った人達ですね……今回は仕方がないでしょう。」


 その言葉と共に船橋ブリッジに白い霧の様な物が発生した。


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