流彗星号発進せよ!
「使用可能な遺跡宇宙船!?」
居合わせた将校達から驚きの声が上がった。
今まで先史文明人である異星人の遺跡から出土した物で使用可能な物は極めて少なくそれも日常品の様な物がほとんどである。
それが宇宙船となるとどれほどの価値があるのか誰も推し量る事は出来なかった。
しかし驚きの声ばかりではない。
居合わせた将校の中には怒りに手を震わせている者も少なからずいた。
「……何故もっと早くその様な物があると公開されなかったのですか?公開していればこの様な事態には……。そうすればあいつだって……。」
その将校の言葉に何人かの将校も同意する様に頷いている。カークランドはその将校へ顔を向けるとゆっくりとした口調で話しかけた。
「仲間や身内を失った貴公の心情は察してあまりある。だが私は貴公の見当違いをたださなくてはならない。」
「見当違いですか?」
「左様。物が物だけに情報は秘密裏に開示されレプリカ船という物も開発中だ。」
カークランドの言葉を聞いてリランドは小声でサバーブに尋ねた。
「……サバーブ。レプリカ船て?」
「前に購入したブラジオン型をビィが改造しただろ?あれだ。」
「あれか……。」
単なる鈍足輸送船であるブラジオン型宇宙船もビィの改造……と言うよりも”魔改造”と言った方が正確だろう。
その魔改造により”流彗星号”と遜色ないとは行かないが通常の艦よりも頭一つ飛び抜けている性能になっていた。
「性能が著しく落ちたレプリカ船でも三隻がやっとである。それだけ異星人の技術の再現は難しいのだよ。」
「三隻も……それがあればイラメカの牽制になったのでは?」
「それも正しくないな……。イラメカは流彗星号の存在に気がついているよ。」
カークランドの言葉に将校は驚きを隠せない表情をした。
「少し前に拿捕したイラメカの超弩級戦艦があっただろう?」
「たしか”プルーニア”でしたか?イラメカ最大の戦艦だと記憶しています。」
「ふむ、結構。そのプルーニアだが実は流彗星号に対応する為に出てきたというのが参謀本部の分析だ。ま、彼らからしたら記録にない船が自分達の調査しているゲート近くに出没する。しかもその船が高速船であり攻撃力も備えているとあれば彼らが警戒するのも当然だろう?」
「……。」
「だがその様な船があるにもかかわらずイラメカは攻めてきた……つまり抑止力にならないと言う事だ。わかるね?」
「……はっ。了解しました。」
将校はカークランドの説明を無理矢理納得させたのか引き下がった。
「それで先ずは流彗星号の乗組員を紹介しよう。」
カークランドはサバーブ達に目配せするとサバーブ達三人は前に進み出た。
「紹介しよう。彼らが今回もミッションのキーとなる流彗星号の乗組員、サバーブ、リランド、連宋の三人だ。彼らは元連合軍や星系軍の軍人であり経歴に問題は無い。」
今度は別の将校の一人が声を上げた。
「提督一つよろしいでしょうか?」
「なんだね?」
「彼らを選抜した理由をお聞かせ願いたい。と言うのも能力的には元軍人より現軍人の方が高いのでは無いでしょうか?」
「なるほど。確かに現軍人の方が高いかもしれない。しかし、流彗星号は遺跡宇宙船である。この宇宙船に登録された乗組員はこの三人であり、我々の技術ではそれを変更する事が出来ない。」
「なるほど。了解しました。」
素早く引き下がる将校を見てカークランドは軽く頷くとサバーブ達の方へ顔を向けた。
「では流彗星号の乗組員諸君には最初の命令を下す。”流彗星号発進せよ!”」
「「「イエス!サー!」」」




