表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは太陽が消える日を迎える

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/214

軍曹の日記その5

「あんた達だったのか……。」


 この台詞はこの私、スマート・エイブラが彼らに会って発した第一声だった。そもそも何故こんな事になったのか。

 それは最近、一昨日の事が始まりだった。


 ---------------


「スマート!緊急輸送の依頼が入った!報酬は通常の五倍だぞ!」


 私がリベル三世号のカーゴベイに積み込む荷物の点検をしていると、相棒のオリバーが鼻の穴を大きくしながら興奮した様子で飛び込んできた。


「緊急輸送?」


「ああ、今いるオケアヌス星系の惑星ドーリス軌道上にあるリバーヘッド重工業から積み荷を受け取りポルック星系まで運ぶ仕事だ。」


「ポルック星系?少し遠いな……それに今回積み込む積み荷はどうする?今回の積み荷はエキドナ星系の惑星ラドーンへ運ぶ必要がある物だ。ポルック星系とは正反対だぞ?」


 すると相棒のオリバーは顔の前に人差し指を立てて左右に振る。


「そこは抜かりはない。ラドーンへの積み荷はポルック星系への積み荷と比べて緊急性は低い。ポルック星系へ行くのなら代わりの手配や保証は向こうがやってくれるそうだ。」


「手配や保証を?……だがなぁ、一度受けた仕事を他の仕事方が良いからと言ってキャンセルするのはなぁ……。」


 渋る私にオリバーはにこやかな顔で肩を叩く。


「大丈夫だ。そもそも緊急依頼の依頼主は同じ星系軍だ。」


 ---------------


 私とオリバーは点検途中であった積み荷をそのまま放置し惑星ドーリスへ向かう。

 放置したのは積み荷を引き渡そうと依頼主である星系軍に連絡したのだが、『引き渡しよりも緊急の荷物を早く届けてくれ。』と言われそのまま放置となった。金額にするとかなりの額になるが、それよりも緊急で運ぶ物の方が重要らしい。


「なぁ、オリバー。リバーヘッド重工業の研究施設は前に食料品を運んだ事があるが、たしか検問が五つぐらいあったよな?」


「極秘研究の漏洩を防ぐ為とかで研究施設とはかなり離れているのに検問が多かったな。」


「しかも通常なら入港の為に幾つもの検問で手続きしなくてはならない”リバーヘッド重工業の研究施設”で直接入荷を行うらしい。一体何を運ぶんだ?軍の輸送艦の手配は出来なかったのかなぁ?」


「知らん。ただ、軍の輸送船はそれほど早くは無いからな。それに輸送艦は軍事用物資が満載されているからそれを下ろしてからになるとかなり遅くなるのじゃないか?」


「そんなものかね?」


 オリバーと話している内にリベル三世号は研究所の船渠ドックへ接舷した。


「……積み込む物はあれか?それほど大きくは無いな……形から見て何かの砲身に見えるな……。」


「おいおい、スマート!今リベル三世号が来たコースを見てみろ!」


 私はモニターにリベル三世号の通過コースを映し出した。


「まっすぐか!それと通路に一隻も艦影が無い。それほど早く運びたいのか?おいおい、この積み荷一体何なんだ?」


「積み荷の他に担当者とやらが一人同乗するから聞いてみるか?」


「……止めておこう。興味はあるが物を知ると厄介ごとに巻き込まれる可能性が高い。」


「確かにその通りだな……。お、担当者とやらがお出ましの様だぞ。」


 リベル三世号の船橋ブリッジのエアロックが開くと一人の男が立っていた。


「この度は緊急輸送ありがとうございます。わたしは開発担当の”ブリッジ”と言う者です。」


 にこやかに笑う好青年らしい男は私の方へ手を差し出した。


「ご丁寧に痛み入る。私はこの船”リベル三世号”の船長を務めているスマート。こちらが相棒のオリバー。」


「よろしく!」


 ブリッジは私と握手を交わすと空いている席に座った。


「早速ですが、荷物の積み込みが終わり次第、ポルック星系への発進をお願いしたい。」


 ---------------


 と言うのがポルック星系での受け渡し場所に来るまでに起こった事だ。

 そして、この場所に来て驚いたのは“株式会社サリーレ”の高速船と名高い”流彗星号”が受け渡しに現れた事とその流彗星号に乗っていたのがこの私を捕縛したリランド達だったという事だ。


「あんた達?どこかであった事があったか?」


 リランドには私に見覚えが無いのか首を傾げている。まぁ、一人の海賊の顔なんて覚えていないのも当然か……。


「気のせいだ。忘れてくれ。多分、どこかで見た事があったのだろう。積み荷と担当者を引き渡す。ここにサインをくれ。」


 “株式会社サリーレ”がリランド達の会社であるなら、彼らと私には奇妙な縁がある。

 私はサインをするリランドを横目に見ながら軽くため息を吐いたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ