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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは太陽が消える日を迎える

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情報漏洩

 イラメカ帝国の手により太陽が消え人類初の入植地であるバーナード星系の惑星エドワードが無人の星になってから一週間の時間が過ぎようとしていた。

 連合の中心地でもある太陽系から太陽が消滅し地球がブラックホールに飲まれようとしていても連合の軍部は手をこまねいていた訳では無い。

 着々と撃退作戦の為の艦隊を太陽系からそう遠くないラーン星系に集結しつつあった。

 周辺の星系から戦闘可能な全ての船が集結を要請され、ほとんどの船が要請に応じた。と言うのもイラメカ帝国に支配された社会を想像すると応じずにはいられなかったという所だろうか?

 要請に応じた船が並ぶ中に流彗星号の姿もあった。


 ―――――――――――――――


 流彗星号の船橋ブリッジでは集結する様々な宇宙船をサバーブはモニター越しに眺めていた。


「……意外に船の種類が多いな。コストも安いブラジオン型が一番多いと思ったがそれほどでも無い。むしろ他の形、ダーツ型の高速艇やソード型の護衛船の方が多いか……。」


 サバーブの言葉にシルビィが他の船の検索結果を伝える。


「一般参加の船は商人の護衛船が多いようですね。彼らにしてみれば自由な商売が脅かされる可能性が高いですからね……。」


 シルビィの言葉にリランドが大きく頷く。


「差別意識の強いあの国でまともな商売が出来るとは考えられないからな。貴族が代金を踏み倒すと言った事があると聞くしな。」


 サバーブがリランドの意見に同意する様に頷いていると連宋の声が上がる。


「サバーブ、リランド!入電だ!地球から……オーガスタ博士からだ!」


「地球?」


「オーガスタ博士?」


 サバーブとリランドがお互いに顔を見合わせ、首を傾げていると連宋はメインスクリーンに通信映像を投影した。


「ふむ。無事繋がった様だな。流石は私であり流彗星号であると言っておこうか。」


「当然の事ですね。」


 メインスクリーンに映し出されたオーガスタの賛辞をシルビイは当然のことのように受け取った。

 オーガスタがメインスクリーンに映し出されている事を疑問に思ったのかサバーブが質問を投げかける。


「オーガスタ博士、一体どの様な方法で通信を……?それに地球からの通信にしては遅延がない様に思われますが?博士は地球にいるのでは?」


「何、簡単な事よ。小型ゲートで反物質エネルギー伝達に使えるのなら通常の電波が使えない事は無いでしょう?単純に通信用の小型ゲートを製作し流彗星号と通信回線を結んだだけですよ。」


 オーガスタは通信革命とも言える事柄を事もなげな様子で伝えた。そのオーガスタの説明をシルビィが補足する。


「当然、流彗星号にもその方式での通信システムは存在します。オーガスタ博士が通信システムを開発された事で流彗星号の機能の一つ、禁則事項の一つが解除されたと言う事です。」


「禁則事項の一つか……。」


 驚きの声を上げるサバーブ達を放置しオーガスタは話を続けた。


「そんな事よりもいくつか不味い事が起こりました。」


「「「不味い事?」」」


 オーガスタの言葉にサバーブ達三人はモニターの方へ顔を向け異口同音に尋ね返す。


「まず一つ、地球はこのままだと後三十日足らずでブラックホールに落ちます。」


 オーガスタの話を聞いたサバーブが頷く。


「なるほどブラックホールにね……。って、落ちて大丈夫なのか?」


「落ちるだけなら大丈夫ですね。現状、ブラックホールからの重力の影響はカットしています。ただ事象の地平に斥力フィールドが接触した場合、高確率で一方通行のワームホールになるでしょう。おそらく地球はそのワームホールをくぐる事になるかと……。」


「ワームホールですか……それは一体何処に出口が?」


「さて……。そこまでは私でも流石に判らないわね。当初の計算ではブラックホールの近くを通り過ぎる予定だったけどイラメカの攻撃で軌道がずれてしまって……。でもまぁ、修正できない事は悩んでも仕方が無いでしょう?それよりも次の問題。」


 オーガスタは端末を操作するとイラメカ軍の宇宙要塞とブラックホールを周回する軌道をモニター上に映し出した。


「これはイラメカ要塞の軌道ですがブラックホールの周囲を廻る周回軌道になっています。と言う事は連中の要塞はブラックホールからの干渉を受けているはずです。しかし、起きているはずの干渉が起きていません。」


「干渉?一体どんな?」


「具体的に言いますと、時間の遅延。具体的に言いますと一秒が三年ぐらいの感覚になると思います。」


「一秒が三年!」


「ですが彼らにその遅延は見られません。」


「では地球と同じ様に斥力フィールドで?」


「従来の方式であるなら重力子、重力の干渉は防ぐ事が出来ません。重力の干渉を防ぐ事が出来るのは私が開発した新型の斥力フィールドだけです。」


「え?と言う事は……。」


「状況から考えると誰かが斥力フィールドの情報漏らしたと……。丁度、不審な行動を取る研究所の役員がいたので締め上げると……。」


「情報漏洩が発覚したと。」


 スクリーンに映るオーガスタは黙って頷いた。


「何てことだ!そいつが情報を漏洩させなければ……。」


 怒りに満ちた表情のサバーブを横目にリランドが疑問符を浮かべる。


「重力子の干渉を防ぐ……と言う事は重力子砲グラビトンを防ぐと言う事か?」


重力子砲グラビトン?名前からすると重力子を塊にして打ち出す物だな。……なるほど、それは良い事を聞いた。」


 重力子砲グラビトンの話を聞いたオーガスタは名案が浮かんだとばかりに不敵に笑った。

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