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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは太陽が消える日を迎える

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IHC

 イラメカ六世の名を受けた元帥。名前をデモート・St・レタウェイ、イラメカ帝国でも歴史の長いレタウェイ侯爵家の嫡男である。イラメカ帝国の貴族の例に習うが如く金髪碧眼の美青年であった。

 彼にとって不運だったのは身分がそれなりに高かった事と彼よりも身分の高い将校が居なくなった事とイラメカ六世の存在である。

(度重なるイラメカ六世の不興を買ってデモート以外の元帥がいなくなっただけなのだが……。)

 その為、イラメカ六世の不興を買わない様に苦労するあまり、老化防止薬を使っているにもかかわらず実年齢とあまり変わらない四十代の姿に見えた。

 幸い四十代になっても渋いイケメンに見える為、元帥から降格されていない様である。

 そのデモートはイラメカ六世の要望に応えるべく各部署に対し指示を飛ばす。


「IHC、起動用意!衝突目標”地球”!シュトラール砲発射用意!」


 IHC、Immense Hadron Collider

 直訳すると”計り知れないほどの大きさの粒子加速器”となる。

 これはブラックホールの外周部を粒子加速器に見立てて降着円盤を構成する素粒子を更に加速させる装置であり、加速された素粒子がブラックホールに降下する時に発生する宇宙ジェットを目標に衝突させる。

 彼らイラメカ軍はブラックホールを利用したこの砲をシュトラール砲と呼んでいた。


 そのIHCの目標に地球が選ばれた。

 シュトラールの司令室内に状況を報告する声が次々と上がる。


「膠着円盤状の粒子の加速率五十%」

「宇宙ジェットの放出量拡大、拡大率二十%。」

「目標へのゲート展開準備完了しました。」


 報告を受けたデモートはイラメカ六世へ顔を向けると頭を下げた。


「陛下、地球への砲撃の準備整いました。」

「ご苦労、シュトラール砲発射せよ!」


 イラメカ六世の号令と共にゲートが開き宇宙ジェットの膨大なエネルギーが地球に襲いかかった。

 地球はその膨大なエネルギーを受け防衛システムを更に強く輝かせた。


「目標へのエネルギー照射確認。」

「照射完了まで十秒、九、八、七、六、五、四、三、二、一、目標照射域から外れました。照射を完了します。」

「目標の状況を確認せよ!」


 司令室では地球の状況を精査しようとした時、司令室に外部から通信が入る。


「外部から……地球から通信入りました。」


 通信兵の声にイラメカ六世は少し首を傾げた。


「誰からじゃ?」


「はっ!通信相手は”オーガスタ”となっております。」


「オーガスタ?メインスクリーンに出せ。」


 イラメカ六世が兵に命令するとメインスクリーン上に白衣だけを着て椅子に座り足を組むオーガスタの姿が現れた。


「な!」

「え?」

「はっ!」


 スクリーン上のオーガスタは不敵に笑う。


「どの様な連中か確認するつもりであるが……ふむ、やはり地球を炙るだけしか出来ない連中の顔はやはりたいしたことが無いね。どれも似た様な顔に見える。面白くもなんともない。」


 大胆不敵な発言を行うオーガスタを見てイラメカ六世は額に皺を寄せた。


「その方、大銀河皇帝たる予に対して無礼であるぞ。」


 その言葉を聞いたオーガスタは椅子の上で抱腹絶倒する。オーガスタが椅子の上で左右に動く度にスクリーンを見ていた兵士の頭も左右に動くが見えそうで見えない状況だ。

 しばらくするとオーガスタは目に浮かべた涙を拭きながら椅子に座り直す。


「いやー。笑わせてもらった。よりによって大銀河とは……イラメカ六世にはギャグのセンスがある様だ。」


「ぐ……それで何様だ。」


「最初にも言っただろう?地球を炙るしか出来ない間抜け・・・な連中の顔を見てみたかっただけだ。」


 その言葉に元帥であるデモートが言葉を荒げた。


「貴様!皇帝に対し無礼であるぞ!」


「ほう、無礼ね……なら手討ちにするかい?」


「良いだろう。首を洗って待っておれ!」


 メインスクリーンが切れるとデモートは即座に命令を発した。


「シュトラール砲発射用意!目標”地球”!」


 シュトラール砲の攻撃が再開された。


 ---------------


 通信が切れて何も映さなくなったメインスクリーンを前にオーガスタは大きく息を吐いた。


「さて、散々あおったからしばらくはこちらを攻撃するだろうな……。」


 その言葉に対し秘書のミュアは顔を青くする。


「は、博士、攻撃って……。だ、大丈夫なのですか?」


「まぁ、あの程度の攻撃なら防衛システムで防ぐ事が出来る。問題はその後、効果が無いと何時判るかという事だな。」


「そうなのですか?」


 オーガスタが安全を保証するがミュアは今ひとつ不安を隠せない様だ。


(……できるだけ長く持つと良いが。)


 そんなミュアを見ながらオーガスタは小さな声で呟くのであった。

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