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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは太陽が消える日を迎える

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試合に勝って勝負に負ける

 押したり引いたりの戦場で最初に動いたのは連合のモリヴァル元帥だった。

 モリヴァルは戦況が映し出されている大型パネルの前に艦長席に座りながら腕を組んでいた。


「ふむ、やはり動きがおかしい……やはり彼らは何か狙っている様だね。膠着状態を狙っているのか、それとも我々がしびれを切らして突出するのを狙っているのか……。やはりここは彼らの希望に乗ってみようじゃ無いか……。」


 指示を出そうと立ち上がりかけたモリヴァルに制止する声が発せられた。


「お待ちください、モリヴァル元帥閣下、それは危険です。閣下の身に何かあれば連合の損失であり、イラメカを利する事に繋がります。それに相手はイラメカ軍です。彼らは貴族主義の愚かな連中で高度な戦術を理解できる頭脳はないのです。」


「イーステンド君、連合の損失とは大きく出たねぇ。僕にそれだけの価値があるとは思えないのだが……と言ってもねぇ、このままの状態だと悪戯に時間が過ぎるだけだ。カークランドからの報告でゲートの存在が確認されている今、太陽系の防衛も考え直す必要がある。こんな所で時間を費やす必要は無いし費やすべきでは無い。」


「カークランドからの報告は信じがたい物があります。それにイラメカがゲートの技術を手に入れたとしても彼らに使いこなせるはずはないのです。」


「……イーステンド君、イラメカの連中を甘く見るのは危険だよ。それを考えるとこの場合は”イラメカはゲートを使いこなす”と考えるべきなのだよ。」


「ですがしかし!」


「まぁ、彼らがゲートを使いこなせるのかはすぐに判るさ。」


 そう言うとモリヴァルは艦長席から立ち上がると号令を発した。


「全艦全速前進!敵イラメカ軍を包囲殲滅する!右翼艦隊は進行方向そのままで艦を左四十五度回頭、左翼艦隊は進行方向そのままで右四十五度回頭。」


 指示通り太陽系連合の艦隊は艦首の方向を四十五度傾けた状態でまっすぐ進む。モリヴァルはしばらく何やら考えた後、通信兵に指示を飛ばす。


「キスカ中将に連絡、2100秒後所定の位置にジャンプせよ。目標となる敵艦は眼前にある。速やかに掃討されたし。」


「はっ!復唱します『2100秒後所定の位置にジャンプせよ。目標となる敵艦は眼前にある。速やかに掃討されたし。』」


「よし!砲雷撃戦用意!全艦速度を上げよ!」


 太陽系連合の艦隊はイラメカ帝国の艦隊を包囲し押し込めようと速度を上げる。イラメカ軍は先ほどとはうって変わって後退の速度を上昇させた。


「さて、ここからどうなるか……。」


 そう呟くモリヴァルに電測員からの声が上がる。


「艦隊後方に空間異常確認!」


 連合の艦隊が通り過ぎた場所に丸い円盤状のゲートが出現した。


「ゲート確認!敵艦隊出現します!」


 後方に大きく広がったゲートからイラメカの艦隊が次々に出現する。中には全長4、000m級の超弩級宇宙戦艦も存在する様だ。その弩級宇宙戦艦を見たモリヴァルは首を捻る。


「超弩級宇宙戦艦の出現が早い!どう言う事だ?」


「大方カークランドが誤ったデーターを送ったのだ!」


「いや、この場合、データーの誤りとするのは危険だ。誤りでは無く何かに原因があると考えるべきだろう。今はそれよりも……。」


 更に電測員からの声が上がる。


「前方敵艦隊反転!こちらに向かってきます!」


「鶴翼を分断するつもりだな……左翼右翼それぞれ前進!全歩敵艦隊の裏に回れ!」


 敵の強襲により分断された連合の艦隊は隊列を乱す事なく移動する。前もって四十五度回頭していた為か無駄のない動きで敵艦隊の裏側に廻った。

 それと同時に先ほどまで連合の艦隊がいた宙域に別の艦隊がジャンプアウトする。


「これで包囲完了、この戦い勝ったな。通信兵、相手に降伏勧告だ。」


 通信兵が相手艦隊に通信回線を開くと艦橋ブリッジの大型モニターに貴族然とした男が映し出された。そして大型モニターに映し出された男の口を開く。


「私はイラメカ帝国軍少将のウォーデンである。此度の貴官の勧告を受け入れよう。この戦い貴官の勝利だ。」


 妙な物言いにモリヴァルは眉をひそめる。


「『この戦い』だと?」


「そうだ。この戦いは貴官の勝利だ。だがイラメカ帝国は連合との戦い……勝負には勝たせてもらった・・・・・・・・よ。」


「?一体何を言って……。」


 大型モニターの前で少し混乱するモリヴァルに通信系から声がかかった。


「元帥大変です!太陽系が……太陽が消滅しました!」

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