開戦の予想
大型モニターの映像が消え何時ものニュース映像に切り替わる。
サバーブ達はお互いに顔を見合わせ頭を抱えた。
連宋は少し呆れた顔でニュース映像に目を移した。
「イラメカの奴ら本気で降伏すると考えているのかな?今のあの演説で降伏するとは考えられないだろう?」
サバーブも同意見の様で大きくうなづく。
「イラメカの貴族連中にはいるかも知れないが、少なくともイラメカ六世はそう考えていないな。あの様に傲慢な台詞を言う場合、目に愉悦が浮かぶ物だがイラメカ六世にはそれがなかった。」
リランドは腕組みをするとサバーブの方へ顔を向けた。
「愉悦か……と言う事はイラメカ六世は?」
「戦争になる様に動いているな。」
「と言う事は連中の準備は完了したと言うことか?連合はどう対応するのか?ダイアフォースの連中の慌て様から考えるとイラメカの動きを掴んでいなかったのか?」
サバーブはイラメカ関連のニュース映像を見ながら思索を深める。
「……少し腑に落ちないな。イラメカ軍は大規模演習に見せかけて侵攻を目論むと言った何時もの手法だが、イラメカ六世のあの自信に満ちた表情は何だろう?」
サバーブの言葉に周囲の人々がサバーブをじっと見つめる。
「何時もの大規模演習に合わせて連合も宇宙艦隊を集結させている。このままだと何時もの小競り合いで終わるのだが……」
ニュース映像はイラメカ軍が大規模演習を行なっている星系の宙域図が表示され、その宙域図を前に専門家らしい男がイラメカ軍の動きを解説していた。
「確かに連合の艦隊が集結すればその動きに……。しかし!」
「「「「「しかし?」」」」」
大勢の声に自分を見つめる周囲の視線に気がついたのかサバーブは周囲を見回した。
「……リランド、連宋、ここでは何だから別の部屋で……。」
別室へ移動しようとするサバーブに周囲から不満の声が上がった。
「えぇー、ここまで話してそれは無いですよぉ!」
「こんな所で話を切られると気になって仕事が……。」
「確かサバーブ取締役は連合でも参謀だったとか?」
「それなら尚のこと今後の予想が聞きたいですね。」
不満の声を上げる従業員を前にリランドはサバーブの肩を軽く叩く。
「仕方ないぞ、サバーブ。これも福利厚生の一環だ。」
サバーブはリランドの方を振り返りため息を吐くと背筋を伸ばした。
「仕方がないか……。話を戻すと、イラメカ軍は何故一週間もの時間を連合に与えたのか?降伏勧告と言う今までに無い事をやりながら連合の集結を待つのは何故か?」
サバーブは連宋の方へ振り返る。
「連宋、先ほどの宙域図を出せるか?何か問題があるか?」
「問題ない……宙域図を表示させるよ。」
大型モニターに表示された宙域図を前にサバーブは解説を続ける。
「艦隊の規模から考えるとイラメカ軍のおよそ三割もの艦隊が集結している。イラメカ軍の艦隊数に関して多少誤差があるかもしれないが、まず間違い無いだろう。」
サバーブの言葉を聞いたリランドが腕組みをすると唸り声を上げる。
「むむむむむ、三割か……軍の半分は防衛用だから予備戦力を考えるとイラメカ軍が動員できる艦隊数に近いな。」
リランドの言葉にサバーブは大きく頷く。
「そうだ、だからわからない。連合の艦隊を集めるイラメカ軍の目的は何なのか……。」




