新型砲発射実験視察
宇宙空間に浮かぶ新型砲。
その砲の側面からケーブルの様な物が数本出ており側に浮かぶ大型艦船に繋がっていた。どうやらエネルギーを伝達する為のケーブルの様だ。
流彗星号のモニター越しに案内役のブリッジが新型砲について説明を始める。
「今回ご覧いただく新型砲は我が社の総力を挙げて開発した物で従来の宇宙艦船用の砲塔とは一線を画す物になっております。では新型砲の延長上十km先の空間を拡大しご覧ください。」
ブリッジに言われた通りの場所を拡大すると大型の宇宙船、おそらく戦艦クラスだろう船が三隻浮かんでいた。
「今回の砲撃目標は先ほど退役したばかりの宇宙戦艦であります。」
宇宙空間に浮かぶ三隻の宇宙戦艦を見たリランドが驚きの声を上げた。
「あれはオケアヌス星系軍のE58型宇宙戦艦じゃ無いか!ついこの間まで現役だった船だぞ!」
「はい、リランド様の言うとおりでございます。オケアヌス星系軍においてE401型宇宙戦艦の就航を期に廃艦となった船です。今回、新型砲の威力を確認する為の標的に使う事となりました。……宇宙戦艦の状態を確認。」
ブリッジの号令と共に大型艦船から荷電粒子砲が発射され、プラズマの軌跡が宇宙戦艦に向かって伸びる。
加速された荷電粒子の塊は宇宙戦艦の少し前で拡散する。
「ごらんの様に宇宙戦艦は斥力フィールドによって守られています。では続いて新型砲の発射実験を行います。砲撃の準備は良いか?」
ブリッジは部下に砲撃の準備を確認している様だ。新型砲へ目を移すと先ほどまで接続されていた動力ケーブルが外され側にいた大型船もコロニーの方へ待避している。
「どうやら準備は整ったようです。……これより新型砲の発射実験を行う。目標は前方のE58型宇宙戦艦。発射用意、カウントダウン開始!」
「……カウントダウン開始します。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射!」
発射の合図と共に下面が真っ白に光ったと思うと新型砲の先から歪んだ黒い塊の様な物が撃ち出された。
流彗星号から見て新型砲の向こう側にコロニーがあったから黒い塊の様な物と判別できたが背景が宇宙空間であったならリランドの目をもってしても判別は付かなかっただろう。
黒い塊の様な物はまっすぐ宇宙戦艦の方へ向かって飛んで行く。
斥力フィールドは黒い塊に反応せずそのまま通過させる。そしてその黒い塊が目標の宇宙戦艦と衝突した時、驚くべき現象がおきた。
黒い塊が命中した場所を中心に三隻の巨大な宇宙戦艦がティッシュを丸めるかの様な姿に変貌する。
その変貌は極わずかな時間でありモニターを見ていた三人が驚きの声を上げる暇も無いほどの時間だった。
変わり果てた宇宙戦艦の映像を前にサバーブ達は固唾をのんで映像を見ていた。
「以上が新型砲の発射実験です。」
ブリッジの言葉に我に返ったリランドが質問をぶつける。
「この砲は連射が出来ないのか?あと射程距離は十kmなのか?」
「残念ながら……今の一回の砲撃で戦艦クラスの艦船に積載されているエネルギーの八十%を消費します。」
ブリッジは残念そうに首を振って答える。
「射程距離はこの砲の特性を考えると十km、実際には五kmでしょう。」
「特性?」
「この砲には重力子を利用する砲なのです。ご存じの通り重力子は周囲の物質と反応しやすい。その為宇宙空間での有効射程は五kmと考えられるのです。」




