違うところから見える景色
流彗星号はゲート発生装置である遺跡を通り過ぎしばらく進むとスラスターを吹かせ反転した。
サバーブは目の前にゲートが現れれば何時でも発進できる体勢である。
と言うのもオーガスタの分析によるとゲートが開くのは約五十時間ごとであり逆算するともうまもなくだと予想できるからだ。
流彗星号のメインスクリーンには前方の景色が映し出され、恒星リピーアが小さく光るのが見えていた。
サバーブは太陽系連合で操縦士としての経験が豊富な為か余裕がある様に見える。そのサバーブにオーガスタは声をかけた。
「クラピアを出発してそろそろ三十時間。サバーブ君はこの様な事態になれているのかあまり緊張していないね。」
「イラメカとの戦時中は緊急発進など日常茶飯事でしたからね。一々緊張などしていたら命が幾つあっても足りませんよ。」
「なるほどなぁ。……ここはイラメカから少し離れているから出会う心配は無いか……。」
「と言いますが、ゲートの先はイラメカでは無く反物質が辺りを漂っていると予想される宙域です。ある種の緊張感はありますよ。」
サバーブはそう言うと目の前にあるメインスクリーン、恒星リピーアが映る宙域の映像に集中した。
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周囲十六箇所の宙域に浮かぶ小惑星を観測していた連宋から声が上がる。
「小惑星からのエネルギー反応確認。ゲートが起動するぞ。」
メインスクリーンには十六ある小惑星が虹色の光りで繋がる様子が映し出されていた。その光りは徐々に強くなりそれと同時に恒星リピーアの光が歪んで見え始める。
「重力場増大。ゲート出現します!」
連宋が言い終わらないうちに恒星リピーアの輝きは消え去りその向こうに何もない暗黒の空間が映し出された。小惑星の光りが虹の様に輝き輪の様に繋がっている。
明らかに宇宙ゲートが出現したのがメインスクリーンに映し出されていた。
ゲートの出現を確認したサバーブは流彗星号のスロットルを全開にする。
「流彗星号全速前進!連宋、斥力フィールドの強化を頼む。」
「了解、ゲート突入と同時に……いや強化するよ。」
ゲートの向こう側から漏れ出る反物質が流彗星号の斥力フィールドに弾かれ輝き光りの尾の様になる。
流彗星号がゲートの輪を超えるとメインモニターに漆黒の画面が広がる。その画面を見たリランドが驚愕の声を上げた。
「真っ暗だ、何もない空間、ここは何処だ!」
リランドの言うとおり流彗星号が虹色の輪を越えた先には何も見えない暗黒の空間が広がっていた。
時々、流彗星号の後方から反物質らしい物質が斥力フィールドに弾かれ光を放っている。
「前方……暗黒空間、小天体あり。後方……青白く輝く天体あり。左手方向………暗黒空間、前方と同じ。右手方向……何だろう?小さな渦巻き状の物が見えるな。」
連宋が船外モニター-を確認しながら流彗星号の周囲の映像をメインスクリーンに映し出す。
「天頂方向……何もなし。下部方向……何じゃ?こりゃ!!」
驚きを通り越して驚愕の声を上げる連宋。同じ様にメインモニターを見ていた一行も驚きのあまり声を出せずにいた。
その中で、一人シルビィだけが冷静な口調で見た物を説明する。
「ふむ。これは銀河系を天頂方向から見た映像だな。」
彼らが乗る流彗星号の真下には数多の光りが渦巻く様に見える銀河が広がっていた。




