探査目標は?
「リランド、シャツがはみ出ている。」
サバーブがそう指摘するとリランドは慌てて服装を整えようとした。慌てるリランドの脇をサバーブは通り過ぎざまに肩たたく。
「リランドおめでとう。いよいよ身を固める気になったのか……。だが婚前交渉はいただけないな。」
そうサバーブが一言いって離れようとした。
「ち……。」
「ち?」
「畜生!お前ら帰ってくるのが早いんだよ!」
「はい?」
リランドの叫びを聞いたサバーブと連宋はお互いに顔を見合わせ頭に疑問符を浮かべた。
リランドが降下してからサバーブ達が拠点に戻ってくるまで半日以上の時間が過ぎている。時間が経過からして早すぎると言う事は考えられないからだ。
「そこは私が説明しよう!」
サバーブ達が振り向くと両手を腰に当て胸を張るシルビィが立っていた。
「リランドが派手にやって来た事は現場を見れば自ずと判ると思う。」
そう言ってシルビィは歪んだ入り口の方へ目をやる。
「その後、リランドとキャサリンは荒れた現状を片付けていた。リランドは強化防護服を放り出していたのを戻していたりしていた。」
「「「「ふむふむ」」」」
いつの間にかサバーブ達の近くにオーガスタ博士や秘書のミュアも混じってシルビィの話を聞いていた。
「そうやって片付けていたが、通信が回復しないのと夕方になった事で食事を始めた。」
シルビィは拠点の外に置かれたテーブルを見る。
「丁度、あのテーブルで食事を取っていた。夜が深まるにつれ酒が進んだのかだんだん二人は良い感じになり奥の部屋に消えていった。」
「「「「ゴクリ」」」」
「彼らが奥の部屋に消えてしばらくすると君たちが帰ってきた訳だ。残念な事に一線を越えていたとは言えない状況だ。」
「「「「……」」」」
「オールドムービーで主人公がヒロインと進展しそうな時に邪魔が入る気分を味わったよ、畜生め。」
翌日、何事も無かったかの様にキャサリンは普通に食事の用意をしていた。メニューは昨日採取したワイバーンの薄焼きとベーコンエッグ、サラダそしてコーヒー、紅茶である。
それらを用意するキャサリンは心なしかうれしそうに見えた。
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朝食を終えたその場でオーガスタ博士の秘書ミュアは昨晩収集したデーターの解析結果を説明する為に拠点のパネルを操作する。
一人パネルを操作するミュアを不思議に思いサバーブは周囲を見廻すがオーガスタ博士の姿は何処にも無かった。
「……ところでオーガスタ博士は?」
「一晩中データー解析を行っていたのでその疲れから就寝中です。ですので今から私が昨日収集したデータの解析結果を報告したいと思います。」
ミュアがそう言うと拠点に置かれた大型スクリーンにデーターが映し出される。
「これが昨晩収集した対消滅のデーターです。ほとんど対消滅は一瞬で終了していますが中には少し長い間反応し続けた物があります。」
そう言ってパネルを操作するとスクリ-ンに惑星クラピアが映り該当データーが赤い線で表示される。
「これらのデーターに恒星リピーアとクラピアの重力の影響、通常物質の干渉を考慮すると反物質がやって来た方向が判ります。」
赤い線はその長さを伸ばすとリピーア星系外へ伸びて行く。モニターに表示されている惑星クラピアはリピーア星系図に切り替わり更に赤い線が延びる。
「この様に全て一定の方向のデーターが得られましたので反物質がやって来たのはこの方向で間違いないと考えられます。」
サバーブはミュアの示した方向を前に少し考え込む。
「連宋、この星系図とこの周辺の宙域図、流彗星号がダメージを受けた場所を重ねる事が出来るか?」
「OK、問題ない。重ねた宙域図を映すよ。」
連宋がパネルを操作するとリピーア星系周辺の宙域図が表示され、リピーア星系から延びる赤い線と流彗星号がダメージを受けた場所が表示される。
「なるほど、確かにオーガスタ博士が言った様に次の探査目標に反物質がありそうだな。」
宙域図の上で赤い線と流彗星号がダメージを受けた場所が極めて近い位置である事が示されていた。
サバーブ 「そう言えば倒れた樹木の代わりに木が生える時すごい音がしたのにリランドは気がつかなかったのか?」
シルビィ 「当然です。二人の邪魔をしない様に斥力フィールドで振動を弾いていましたから。」
サバーブ 「お前が原因か……。」




