復活する大樹
オーガスタは一通り説明し終わると秘書のミュアに指示を出す。
「ミュア、観測したガンマ線の強さと観測位置……特に放射開始位置と終了位置が重要だ。それを全てまとめてくれ。」
「判りました。観測は何時まで行います?」
「当然、ガンマ線の放射現象が終わるまでだ。データーが多い方がより正確な位置情報を得られる。」
「……デスよね。判ってましたよ。今夜も徹夜かぁ……。」
サバーブはオーガスタとミュアの会話の中に引っかかりを感じた。更に詳しい話を聞くため口を開こうとした時、拠点の方から何かが裂かれる様な大きな音がした。
「?何の音だ?」
サバーブは着陸艇を操作すると機首を拠点の方角へ向ける。着陸艇のコクピットからは押し倒された大樹を突き破り新たな木々が大きく成長する様子が見えた。
その木々はサバーブ達が見ている間に大きく成長し大樹となり大きく枝を伸ばす。枝には無数の葉が生い茂っており、葉が増えるにつれて倒れていた大樹が枯れる様に痩せ細りやがて細かい破片となり消えていった。
その様子を観測していたオーガスタは感嘆の声を上げた。
「ふむ、ダイナミックな物だな。倒れた木々を養分としてあっという間に成長しエネルギーを受け取るのか……。」
「すごい成長速度ですね博士。こんな成長速度は他に例がありませんよ……。」
「地球の砂漠では植物が一日にして生い茂る事がある。それにアスパラガスは一日で10から20cm伸びる。これはそれを派手にした様な物だな。」
「いや博士、アスパラはcmだけどこれはmですよ。」
「まぁそうだがな……サバーブ君、これで拠点へ着陸できる様になったのでは無いか?」
オーガスタに問いかけられてサバーブは目からウロコが落ちた様な表情になる。
「そうですね。着陸艇を拠点へ移動……観測は大丈夫ですか?」
「大丈夫。観測は拠点を基準に行っている。着陸艇の位置が変わっても基準は変わらないので問題は無い。」
「了解しました。これより拠点に帰還します。」
そう言うとサバーブは着陸艇を拠点へ向かわせた。
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拠点を覆っていた大樹は周囲の新しい木々に養分として吸収されたらしく枯れ木となっていた。着陸艇が近づくとジェットノズルからの噴射で細かく粉砕され風に乗り周囲に飛び散っていった。
サバーブ達は着陸艇を拠点前の広場に着陸させると変わり果てた拠点の扉の前に立ち尽くしていた。
「なぜ拠点のドアがこんな状態になっているのだ?判るか連宋?」
「いや、わしにはさっぱり?誰かが引きちぎっ……リランドの奴か?」
「あいつ以外考えられないが……とりあえず入るか……。」
サバーブ達が苦労して拠点の扉を外し中へ入ると、奥の扉の前でシルビィが手にカメラの様な物を構えているのが見える。
「あいつ何やっているのだ?おい、ビィ!」
サバーブが大きな声を上げるとシルビィはびくりと肩をふるわせるとこちらを向き人差し指を立て唇に当てる。それと同時に奥の部屋から何やら慌てて動き回る物音が聞こえた。
「……記録はここまでか。せっかく人類の良い記録を得られると思ったのだが……。」
シルビィが何やら呟いていると奥の部屋から服装の乱れたリランドが飛び出してきた。
「や、やぁ。サバーブ、連宋、お帰りィ。」
「「「「……。」」」」
「いや、思ったよりハヤカタナ?」
「「「「……。」」」」
「キャサリンはここにはイナイゾ?気分が悪くてヤスンデイルンダ。」
「「「「ああ、お察し……。」」」」
リランドの態度から全てを察したサバーブ達はリランドを生温かく見るのであった。。




