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三匹が宇宙をゆく!ーおっさんの悠々自適なセカンドライフだったと思うのだが何か違う気がする。ー  作者: 士口 十介
おっさんたちは源の星へ行く

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ワイバーン

 着陸艇から降下したリランドの操る強化防護服(アーマースーツ)は折り重なる巨木の間を器用に避けていった。

 降下の様子をモニターで観測していた連宋は感嘆の声を上げる。


「流石リランド、器用なものだ。」


「連宋、感心するのは良いが着陸できそうな場所は他に無いのか?」


「無いね。この近くは木々が折り重なる様になっているし、他は倒れなかった巨大な木々がある。クラピア自体陸地が少ないのもあるが、ここからかなり離れないと着陸できそうな場所は無いね。」


 元々着陸地としていた場所はカークランド提督がクラピアに不時着した時に木々をなぎ倒す事でできた平地である。

 人の手が入っていないクラピアは巨大な木々が生い茂っている為、同じ様になぎ倒さない限り着陸艇が着陸できる様な平地は存在しないのである。

 サバーブは着陸艇を自動運転オートパイロットに切り替えると腕組みをした。


「どうした物かな……。せめて通信が回復すれば状況が判るのだが……。」


「何だ?サバーブ君。着陸できないのか?それならば行って欲しい場所があるのだが?」


 腕組みをするサバーブにオーガスタが声を掛けた。


「先ほどの爆発で何体かのワイバーンが墜落しただろう?それを回収したい。出来ればシーウォームのサンプルも欲しい。」


「……サンプルですか。最初のサンプルが結構大きかったので格納庫にあまり空きがありません。ワイバーンもシーウォームもあまり大きなサンプルは採取できませんよ?」


「問題ない。私が欲しいのは体組織のサンプルだから乗せる事が出来る分だけで十分だろう。」


「判りました。ではサンプル採集に向かいます。」


 サバーブは自動運転オートパイロットを解除すると着陸艇の機首をワイバーンやシーウォームが浮かぶ海域に向けた。


 ---------------


 海中からシーウォームとワイバーンのサンプルを引き上げたオーガスタは早速サンプルの分析に入った。

 シーウォームのサンプルは対象があまりにも巨大であった為、皮膚組織の一部と体表面を覆う粘性の物質しかサンプルとして回収できなかった。

『流彗星号ならば……。』などとオーガスタは呟いていたが現場で立ち会った連宋は聞かなかった事にした。

 オーガスタはシーウォームのサンプルを皮膚組織の一部と粘性物質を保存容器(容器と言ってもバスタブぐらいのサイズである)に格納するとワイバーンの分析を始めた。

 丸ごと二体がある上、足りなくなったら付近の海域から採取すれば良い為、大胆に切り分けている様だ。


「ふむふむふむ、この組織の分析は……なるほどなるほど。この分析結果なら……。そうだ!」


 オーガスタはワイバーンのサンプルを手に何やら呟いていたかと思うと着陸艇に備え付けの簡易キッチンの方へ向かった。

 彼女が移動してしばらくするとビスケットを焼く様な香りが漂ってきた。


「連宋、この香りは何だ?」


「何だろう?オーガスタ博士が簡易キチンへ行ったから何かを作っているのか?」


「いや、博士はワイバーンの分析中だろう?」


「ワイバーン……嫌な予感がする。」


 連宋の予感通り、オーガスタは少し厚い長方形の物が山盛りになったトレイを持ってきた。山盛りになったそれは丁度良い色に焼き上げられたパンの様な物に見える。


「良い色だろう。さあ、みんな食べてみてくれ。」


 オーガスタはサバーブや連宋にトレイを突き出した。


「……オーガスタ博士、これは?」


「ワイバーンの薄切りを焼いた物だ。旨いぞ。」


 そう言うとオーガスタは胸を張る。サバーブと連宋は”薄切り焼きワイバーン”の山をじっと見つめていた。

 二人が焼きワイバーンの山の前で躊躇しているとオーガスタの後ろから声がかかる。


「それ食べないのですか?」


 オーガスタ博士の秘書であるミュアが”薄切り焼きワイバーン”を片手に持ちザクザクと音を立てながらかじっていた。

 その様子を見たサバーブと連宋は意を決して”薄切り焼きワイバーン”を口にする。


「む!これは!」


「う、旨い!」


 驚いた表情のサバーブと連宋を前にオーガスタはカラカラ笑う。


「そうだろう、そうだろう。私はワイバーンの成分と細かい多孔質の構造を見た時、直感的に感じたたね。これは焼くと旨いと!」


「博士ー、美味しいですね。こんなに美味しいのはオケアノスで食べたクラーケン以来ですね。」


「クラーケン?オケアヌスの保護動物だった様な……。」


「まぁまぁそれは置いておいて……サバーブ君、もっと食べたまえ。」


 ”薄切り焼きワイバーン”の山を前に簡単な食事会が始まった。焼きワイバーンの山がなくなる頃には日はすっかり暮れ夕方の赤い光りが辺りを照らしていた。

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