疾風リランド
着陸艇から拠点の様子を見る。
爆発時に起こった衝撃波で周囲に生えていた巨大な木々がなぎ倒されており、シェルター型の拠点は埋もれている様だ。
着陸艇を発着させていた広場も土砂や瓦礫で埋まっており着陸できる場所はなさそうに見える。
「……完全に埋まっているな。連宋、他に着陸できそうな場所は無いか?」
「とんでもない熱量と衝撃波だったからね。この周辺では着陸できそうな所はなさそうだよ。」
「そうか……仕方が無い。影響のなさそうな場所に……どうしたリランド?」
サバーブがリランドの様子を見ると地面をじっと見つめていた。
「……この位の高さなら全く問題は無いな……。」
リランドはそう呟くと着陸艇の格納庫へ向かう。その後ろ姿にサバーブは声をかけた。
「おいリランド、地面は巨木が散乱しているぞ?大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、問題ない!」
そう言うとリランドは右手を挙げて答えた。
―――――――――――――――
着陸艇は高いと言っても高度九千メートルほどである。
プラネットダイバーであったリランドにとってこの位の高さからの降下は全く問題が無いと言っても良かった。
しかし、リランドが今まで降下した先はほとんど平坦な場所であったが、今回の様に巨木が乱雑に積み上がっている様な状況は初めてである。
「大丈夫といった手前、失敗は出来ないが……ま、なるようになるだろう。それよりも今はキャサリンが無事かどうか……。無事でいてくれよ。」
リランドは祈る様な気持ちで着陸艇から飛び込んだ。
強化防護服は風を裂く様な音を立てながら拠点へ降下して行く。
時々、降下時に起こる風で強化防護服が左右に滑る様に動くが、リランドははやる気持ちを抑え慎重に動きを調整する。
降下して四十秒、リランドは乱雑に積み重なる巨木の間を縫う様に着地した。
上空から見ると周囲の巨木が拠点に覆い被さっているのだが、巨木同士が支え棒の様に成りドームの様な状態に成っていた。そして全く奇妙な事だがリランドが着地した地面には短く刈り込まれた草がある。
しかしリランドの目には映っていなかった。彼の目には何の損傷も無く建つ拠点の姿しか映っていなかった。
リランドは拠点を目にするやいなや強化防護服から弾丸の様に飛び出し拠点へ全力疾走した。
「キャサリン!無事か!キャサリン!」
リランドは大声で叫びながら拠点の扉を引き開ける。拠点の扉は三重構造になった合金製だったがリランドの力によって大きな軋みと共にくの字に歪んでしまった。
引き開けた扉の向こうにはキャサリンが驚いた表情で立っていた。
「リランド?」
キャサリンを見つけたランドは駆け寄り両手でキャサリンの両腕を掴んだ。
「キャサリン、無事か?何処も怪我は?気分が悪いとか?」
「え、ええ、大丈夫よ……そうね、すこし腕が痛いぐらいかしら……。」
リランドは自分がキャサリンの腕を強く掴んでいるのに思い至った。
「す、すまない。強く掴みすぎた……。」
そう言うとリランドは張り詰めた糸が切れたのかその場で膝をついた。
「どうしたの?リランド、そんなに慌てて?」
「……いや、すごい爆発だったから……ワイバーンが何体も落ちる様な……拠点に戻ると周りの木が覆い重なる様に倒れているし……連絡もつかない。キャサリン、君に何かあったのかと思うと……。」
するとキャサリンは同じ様にかがみ込むとリランドの首に両腕を回した。
「大丈夫、ここはシルビィもいるから安全よ。なんともなかったわ。」
「そうだな……ここにはビィもいたんだ。」
リランドは安心したのか一息つくとは自嘲する様に笑う。
「どうやら俺はお前が……君がいなきゃ駄目みたいだ……。」
しばらく後の某会場にて
リランド 「こ、この光景は!」
シルビィ 「当然、記念日として記録しておきました。私は出来るAIですから。」
リランド 「なんてこった……こうなったら媒体を破壊するしか……。」
シルビィ 「大丈夫です。保存用、観賞用、貸出用とちゃんと三種類、人数分用意しています。」
リランド 「うがーっ!」




