死の光線
サバーブ達が乗る着陸艇は一見すると普通の着陸艇の様に見える。
しかし、流彗星号の備え付けの機器であると言う事はシルビィに魔改造されていると同意語なのだ。
この着陸艇もその例にならって魔改造が施されていた。その魔改造がサバーブ達の命を救ったとも言える。
オーガスタ博士が格納庫へ向かおうとした時、着陸艇の遙か上、惑星クラピアの軌道上でまばゆいばかりの危険な光りが発生した。
その危険な光りは高度を下げるにつれ強さを増し同時に危険度を著しく上げていた。
着陸艇内に非常用の警報がけたたましく鳴り響く中、連宋の声が上がる。
「惑星軌道上に高出力のガンマ線確認!着陸艇、斥力フィールド自動展開!」
「ガンマ線だと!?どう言う事だ?……連宋!どこからの攻撃か?」
「座標は不……いや、待て、これは!ガンマ線発生源、現在降下中!このままだと”ワイバーン”か着陸艇のどちらかに当たりそうだ!!推定時間は八分!」
「この船も対象か……不味いな……。」
着陸艇が魔改造されているとは言え何処まで耐える事が出来るかはサバーブ自身は知らなかった。
サバーブはあれこれ思案すると連宋の方へ顔を向ける。
「連宋!ここから一番近い大きな”ワイバーン”はどれだ?その下に着陸艇を移動させる。」
「そうか!”ワイバーン”を盾にするんだな。ここから一番近くて大きい奴は……この着陸艇の大きさが……よし!こいつだ!左後方七百mの位置だ!」
連宋の声を聞くやいなやサバーブは着陸艇を急速反転させると巨大な”ワイバーン”の下に潜り込ませた。
「発生源接近中、”ワイバーン”との接触まであと十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、接触!」
連宋の接触の声と同時に着陸艇の上からまばゆいばかりの光りと熱が辺りにまき散らされ命中したワイバーンを一瞬の内に消し去る。
「ガンマ線最大出力を確認!衝撃波来ます!!」
一呼吸置いて衝撃波が着陸艇を襲う。衝撃波は爆光から生き延びたワイバーンを巻き込み着陸艇共々攪拌する。
「ワイバーンの影にいてもこの威力か!なんて威力だ!」
そう呟くとサバーブは荒れ狂う大気の中で着陸艇を巧みに操る。先ほどまで周辺を飛んでいたワイバーンも何匹かぶつかり合ったのか海に落ちている様だ。
「流石に何匹か落ちたかこれではシーウォームの餌だな……。」
リランドが海面を見つめるその先をオーガストが指さす。
「ワイバーンだけでは無い。あの海中のシーウォームにも影響が出ている様だぞ。」
何匹か海に浮かぶワイバーンに混じってシーウォームの細長く巨大な体が浮かび上がる。
「高出力のガンマ線による物だな。海中でこれなら地上は……。」
オーガスタの指摘にリランドは唖然とした表情になる。サバーブ達がサンプルの捕獲に出かけている間、キャサリンとシルビィは地上の拠点で留守番として待機していた。
着陸艇内にリランドの声が大きく響く。
「キャサリン!連宋!地上基地との連絡はどうなっている!」
「……駄目だ、通信が乱れて繋がらない。電磁波障害が起きているのか?」
「くそつ!こうなったら強化防護服で着陸すれば……!」
慌てて着陸艇から出発しようとするリランドをサバーブが止める。
「待て!リランド。今出撃すれば二次災害の恐れがある。それに脱出するにしても着陸艇は必要だ。今から地上の拠点へ緊急着陸を敢行する。」
そう言うとサバーブは着陸艇の操縦桿を握りしめた。




