迫る危機
惑星クラピアへ向けてとある場所から猛烈なスピードで接近している物があった。
それはほんの小さな物体。大きさにして成人男性の握りこぶしよりも少し大きいぐらい。
宇宙空間を進むそれは隕石と呼ばれる物に酷似していた。
隕石と呼ばれるそれらの多くはクラピアの外側の惑星ベガスや恒星リピーアに衝突するのだが、ベガスは恒星リピーアを挟んでクラピアとは反対の位置にあった。その為、クラピアへ接近する事になったのである。
サバーブ達がその隕石が何であるかを知っていたとすれば接近を阻止しただろうが、サバーブ達はその隕石の接近を知る由も無かった。
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出発まで更に一悶着あったがレルネー1をなんとか出発して1週間後、サバーブ達は惑星クラピア上に設置された調査用の拠点にいた。
場所は難破したカークランド提督の船があった場所、その跡地に簡易研究所とも言えるシェルター型の拠点を設置しているのである。
その拠点からオーガスタ博士は連日、調査の為に動植物のサンプル捕獲に出かけていた。
「見たまえ!サバーブ君。海に住むシーウォームと言うべきあの巨大生物がいる場所を!」
サバーブは着陸艇のコクピットから眼下に広がる景色を見る。オーガスタ博士の言った場所を捉え注意深く観測する。シーウォームが潜んでいる場所を中心に堤防の様な地面の隆起があったり、陸地の一部が削り取られた様に見えた。
「丸く削られていますね……。これは浸食か何か?」
「おそらくシーウォームの影響だろうね。」
「……これほどの影響がありますか?」
「推定全長数百メートルはある個体。それが海をかき分けて飛び上がるのだ。当然着水の時にはそれ相応の影響が出るだろう。」
「それが私が見た地形の変化ですか?」
サバーブがそう言うとオーガスタは大きく頷く。
「そしてあの生物だが、地形の変化からあの場所から動かないという事も判る。それと……お、あれは今回の捕獲対象か!」
今回の捕獲対象、大きな鳥の様な生物、”ワイバーン”と仮の名前がつけられた生物である。その生物の集団にサバーブが操縦する着陸艇が接近する。
上から見るその生物の表面は白く輝きつるりとしていた。しかし、その生物はサバーブが着陸艇を近づけても何の反応も無かった。
サバーブは更に着陸艇を接近させてみる。
「……何の反応もありませんね……動物では無い?」
「そう言う場合はサンプルを捕まえるしかあるまい。リランド君、どれか捕獲できそうな個体は無いか?」
「右下の小さな奴が狙えそうだな。サバーブ機体を少し右に……OK!捕獲する。」
着陸艇の備え付けられた銃座から捕獲用のネットが飛び出しワイバーンに絡みつく。
「捕獲完了。……しかし、小さいと言ってもかなりの大きさだな。」
「その割には重量が無いな、リランド、格納庫へ積み込めるか?」
「……暴れられたら厄介だが……暴れそうに無いな。積み込みは大丈夫だろう。サバーブ、しばらく着陸艇を静止させてくれ。」
「了解。」
サバーブは素早く操作すると”ワイバーン”を確保したままの着陸艇をその場で静止させた。
その様子を見ていたオーガスタ博士が軽やかなステップで格納庫へ向かう。未知の生物を前に期待に胸を躍らせている様だ。
だがその時、惑星クラピアに向かっていた隕石が彼らの上空に到達した。




