カークランドとの交渉
カークランド財閥の本拠地である惑星国分水の軌道上へ来ていた。
国分水はリゾート惑星、天水分星と同じ水戸星系にある惑星であり天水分星とは違い惑星全球の40%が水域で残りが大きな大陸秋津大陸である。
その国分水の軌道上に浮かぶ宇宙コロニー秋津コロニーに財閥が経営するカークランドカンパニーの本社が、地上の秋津大陸にカークランド本家が存在した。
サバーブ達はまず最初にカークランドカンパニーを訪れたのである。
何時もの様に連宋が管制室との通信を行いコロニーへの接舷許可を求める。一通りの手続きを終えた連宋はサバーブの方へ振り向いた。
「サバーブ、接舷許可が下りたぞ。まず何処に行く?」
「そうだな……ここに来てアリシア嬢に会わないと流石に不味いよな……。」
サバーブの脳裏には先日のリランドの一件が浮かんでいた。一言も挨拶無しに出航しようとした時のキャサリンの姿とアリシア嬢を重ねてみる。
(間違いなく不興を買うだろうね……。)
不興を買うだけならまだ良いだろう。次に想像できるのはその事をカークランド提督に訴えると予想でき、その事はカークランド提督の不興もかう事になり頼み事が上手く行くとは考えられない。
従って”アリシア嬢と先に面会する”一択となるのである。
「……仕方が無い。私はアリシア嬢と会ってくる。リランドと連宋は先にカークランド提督との話をしておいてくれ。」
そう言うとサバーブはコロニーの桟橋へ接舷する為に流彗星号を操縦する。その時のサバーブの顔は時々口笛を吹き少し上機嫌そうであった。
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リランドと連宋がカークランド提督と面会した時、提督は少し不機嫌な様子だった。その目の前に座ったリランドは軽くお辞儀をする。
「……カークランド提督、この度はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。」
「アアそうだね。私はこの後、孫との夕食があったのだがその時間が少し短くなるぐらいで特に問題は無いよ。」
カークランドは口では問題ないと行っているがその顔は実に不機嫌な様子である。
「……どころでサバーブ君はどうしたのかね?」
「サバーブならアリシアお嬢さんの所へ寄ってから……。」
(あ、それは不味い、リランド!)
連宋が思わず止めようとしたが既に遅かった。
「そうか……孫に会いに……。」
リランドと連宋の目にはカークランドから黒い波動が流れている様に映った。
(……これが提督と言われた人物の胆力!)
カークランドの前に座るリランドと連宋の二人はその胆力に圧倒され固唾をのむ。
両者とも荒事には慣れているがカークランドの出す圧に気圧されていた。そしてその圧が極限まで高まりそうになる気配がした時、カークランドの端末が呼び出し音を奏でる。
無言のままカークランドは端末の回線を開いた。
「……。え?あっそう。なら全員でゆっくりと夕食を取ろう。そうしよう。」
そこには数秒前の人物は既に無く、孫バカの爺さまがいるだけであった。
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サバーブ、リランド、連宋の三人はカークランド本家で少し遅くなった夕食を取っていた。始終和やかな様子で話は進む。数時間前の驚嘆する様な圧は何処にも無い。
「ふむ、それでサバーブ君達が見つけた遺跡は……なんだったかのう、アリシアや。」
「宇宙ゲートですわ。お爺さま。」
「そうそう、その宇宙ゲート。その情報を連合に伝え広めれば良いのだな?サバーブ君。」
「はい。その通りです。もし仮にイラメカがゲートを十全と行かなくても利用できるのならば脅威になるのは間違いの無い事です。」
サバーブの返答を聞いたカークランドは頷きながらも少し首を傾げた。
「だがサバーブ君。君もそれなりに地位があったのでは無いか?その地位をもってすれば何も私に頼らなくても……?」
カークランドの疑問はもっともな事である。サバーブは連合での最終的な階級は大佐である。大佐ともなればそれなりの繋がりはあるはずなのだ。
「残念な事に私は撤退戦で昇進した者であまり評価は高くないのですよ。」
「ふむ。撤退戦も重要なのだが……それを軽視するのは全く嘆かわしい事だよ。だが任したまえ、この件は必ず連合内に周知させよう。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「お爺さま。私からもお願いしますわ。」
「うむ。任したまえ。ははははは。私もサバーブ君に頼みたいことがあるからね。」
孫に頼まれて上機嫌なカークランドの爺さまであったが、ただでは転ばない様である。




