スターの帰還
ウエストランド星系を出て三日後、流彗星号は出発地であるエキドナ星系の惑星ハイドラ軌道上に浮かぶ宇宙港レルネー1まで帰ってきた。
流石にミカエルがこの船に乗っている事を広めていない為、前回の様な人が大勢集まる騒ぎにはなっていない。
レルネー1の一角でサバーブ達はミカエルやハンニバルの両者との別れを惜しんでいた。
「ありがとう。おかげで当初の感動を取り戻せたよ。」
「ミーからもお礼を言わせてくだサーイ。ミーはもっと長くかかるかと思っていたが……。こんなにスピィディとはハッピーな誤算ですヨ。」
ハンニバルは相変わらず怪しい言葉でサバーブ達に語りかける。
「ミカエルもどんどんインスピレーショが湧いてくるみたいデス。新アルバムのリリースも間違いありまセーン。……これもYou達のおかげね。」
そう言いサバーブやリランド、連宋と固く握手を交わすとプライベート宇宙船アバロン号が停泊する桟橋へ歩みを進めた。桟橋へ向かう二人の後ろからサバーブが声をかける。
「ミカエルさんも、又何時でも来てください。なんたってあなたは流彗星号の船長なのですから。」
振り返ったミカエルが右手を握り振り挙げて答えるとサバーブ達も同じ様に右手を挙げた。ミカエルは右手を挙げたままサバーブ達の方を横目で見る。そして大きく頷くと手を振りながらアバロン号へ移動していった。
それから程なくアバロン号は太陽系への帰路につく。そのアバロン号の後ろ姿を見ながらサバーブはしみじみと呟く。
「行ってしまったな……。」
リランドは少し寂しそうにするサバーブの肩を軽く叩く。
「そうだな。しかし俺たちには次の仕事がある。早く出発するべきだぞ。」
そのリランドの後ろから少し怒った様な声がかかる。
「……リランドはレルネーに戻ってきたのに挨拶も無しにすぐに出かける不人情な人なのですか、そうですか。」
リランドが後ろから聞こえた声の方向へ恐る恐る振り向くとキャサリンが腕を組み立っていた。その後ろにはシルビィを何かを期待する様な表情で立っている。
「えーっと、キャサリンさん。これには深い訳がありまして……ええ、重要案件があるのですよ。」
「……。」
汗を掻きながら色々と言い訳をするリランドをキャサリンが見つめたまま視線を外さない。
「あの……キャサリンさん?」
「……。」
「えっと……。」
「……。」
キャサリンは尚も視線を外さない。そのキャサリンの後ろに立つシルビィが頭を下げてお礼を言っている様な姿になる。それを見たリランドははっとした様な表情になった。
「……ただいま。キャサリン。」
その言葉を聞いたキャサリンはにこやかに微笑む。
「お帰りなさい。リランド……。」
そんな二人の姿を見たサバーブと連宋は二人に聞こえない様に小声で話す。
「あれはどう見ても……だな?」
「わしから見ても間違いは無い。リランドは何時まで待たせているんだろうね?」
「全くその通りだ。」
いつの間にか側に来たシルビィが二人に同意する。
「あやつは若返っているのに何をしているのだろうな?前は四十代だったから親子ぐらい差があると考えていたのかもしれないが、今は三十代と言って良い。これだと年の離れた兄弟といった差なのだがね。」
そう言うとシルビィは両腕を広げて肩をすくめる。
「どちらにせよ彼らの事はなま暖かく見守るしか無いと思いますよ。」
シルビィの言葉にサバーブと連宋の二人は同意する様に頷いた。




