あとしまつ
流彗星号に帰投し船橋に戻ったリランドはサバーブや連宋とハイタッチを交わすとシルビィに詰め寄った。
「おい、ビィ!何だあの爆発は!俺の強化防護服の斥力フィールドがすごい勢いで削れていったぞ、危うく宇宙で丸焼けになるところだったぞ。」
モニター上のシルビィは呆れた様な表情になるとため息を吐いた。
「初めから言っていますよ?私は流彗星号での安全圏は五百万kmと言いました。強化防護服での安全圏は考慮していませんよ?」
「確かにそう言っていた……だが、あの爆発は何故だ?俺はゲートのエネルギー循環を阻害する為にリングだけを狙っただけだ。遺跡全部を破壊する目的での攻撃では無い。」
”遺跡自体は破壊できない。”その前提で再利用を考慮しエネルギーの循環を阻害する狙撃だったのだが、出来ないはずの破壊が出来てしまった。
リランドは破壊できた理由が知りたいのである。
「それはリランドさんがエネルギー伝達用のリングを破壊したからですよ。そこからエネルギーの一部が漏れ現地の構造物と反応し連鎖的に爆破が拡大したのです。」
「その結果があの爆発か……なるほど。」
納得した様に頷くリランドの近くで答えを聞いたサバーブが少し首を傾げた。
「ビィ、遺跡で扱っていたエネルギーは一体どの様な物だったんだ?」
モニターのシルビィは首を横に振った。
「残念ながら人類はそのエネルギーを扱った物は作っておりません。よって、そのエネルギーについて教える事は禁則事項に抵触します。」
「扱った物を作っていなければ教える事は出来ないのに、宇宙ゲートに関してある程度の情報があるのは何故だ?」
「ゲートを稼働させるのに必要なエネルギーは人類が使用している反応炉でも代用できます。そしてゲート自体はジャンプドライブの応用です。その為、ジャンプドライブを活用できる人類はゲートの情報に関してある程度の情報が解禁されていると言う事なのです。」
「……ある程度に使用しているエネルギー源が入っていないと?」
「そう言う事です。」
サバーブとシルビィの会話に疑問を持ったのかリランドがサバーブに尋ねる。
「サバーブ、ゲートのエネルギー源に関しての情報は必要なのか?」
「必要だ。リランド、今回の件は流石に報告しないと上手くないだろう?特にイラメカ帝国がゲートについて知っていたと言う事は防衛上の観点からも報告する必要がある。」
「ゲートを使ったイラメカ帝国の侵略か……十分あり得るな。」
「それともう一つ。あれの後始末がな……。」
そう言うサバーブの視線がモニタ上に映し出される三角形の船に移った。
「ゲートで首を切られたイラメカの弩級戦艦か……生存者がいるのか?連宋、どうなんだ?」
「電波が出ているところから考えて生存者はいるね。それに切り取られたのは前方部分でエンジンと動力炉はゲートの向こう側みたいだ。」
「つまり?」
「連中は動く事が出来ない。動力炉と切り離されているから予備電源を使っていると思う。その予備電源が喪失すれば後は……。」
「死あるのみ……か。で、どうするサバーブ?」
リランドはサバーブの方へ顔を向けた。サバーブは軽くため息を吐くとやむを得ないという表情になる。
「……カークランド提督に口添えしてもらう他は無いな。あの人なら情報が歪まずに伝わるだろう……。」
「サバーブ、何か気になる事があるのか?」
「……後始末を頼むのは良いのだが、代わりにどんな要求をされるのかと考えるとね……。」
カークランドからどの様な要求があるのか?依頼か?依頼であった場合その難易度は?
それらを想像するだけでサバーブは頭を抱えるのであった。




