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疑惑の航路

 疑問を問われミカエルは目を瞑り何か思案しているようだった。その様子を見てサバーブは畳みかける。


「私が疑問に思ったのはあなたが太陽系出身である事と鉱山、しかも掘削をしていたことがあることです。」


「そうだな。俺たちエキドナ星系出身ならいざ知らず、太陽系出身で鉱山労働はないな。」


「……。」


 サバーブやリランドの言う通り太陽系出身で鉱山労働をすることはあり得ない。

 連合の中心星系である太陽系出身者はほとんどの者が多額の金銭を持っている。かれらは鉱山労働の様な低賃金の労働をする必要はない人たちなのだ。


「加えて、あの海賊連中だ。連宋、海賊船のデーターを前面モニターに出してくれ。」


「はいよ。」


 連宋が操作パネルの上に手を滑らせると船橋ブリッジの前面モニターに海賊船の姿が映し出される。


「これはイラメカ帝国の駆逐艦と軽巡洋艦だ。どちらも二十年ぐらい前に戦場で見たことがある。」


「おいおいサバーブ、二十年前の宇宙船なら現役なんじゃ?」


「いや、リランド。二十年前の時点で数合わせとして使われていた。おそらく老朽艦だろう。世代的には二世代ぐらい前か?」


 サバーブの言葉にリランドは少し考えこむ。


「二世代前……その世代の船だとしたら辺境の海賊が持っている理由が判らないな。」


 二世代前の船ならまだ現役ともいえる船である。老朽艦だが練習用艦として使い続けている星系もある。

 現役ともいえる船を海賊に横流しする様な者がいる軍はまともな軍とは言えない。その様な軍隊は軍隊との規律が取れていないものになる。

 この場合、間違いなく太陽系軍の敵ではない。しかしイラメカ帝国は長い間太陽系連合と戦っている。

 よって、横流し品ではない。


「……イラメカ帝国と結びついた私掠船コルセアならどうだ?一番可能性が高いと俺は思うぞ。」


「そうだな。今のところそれが最有力候補だ。だが、私掠船コルセアだとすればなぜこんな辺境で海賊をやっているのかが判らない。あの艦艇ならもう少し太陽系よりの場所で海賊行為を行うはずだ。」


 この時代における私掠船コルセアは星系国家と深く結び付いている。かれらが海賊を行う事によって戦争状態にある相手の力を削ぐために行う。

 これは星系国家による通商破壊の一種なのだ。


「確かに……こんな辺境で通商破壊になるとは思えないな。」


「だとすれば、理由は何か?この航路はどのぐらい安全なのか?我々の航路の先にある遺跡も関係があるのではないか?遺跡にはいったい何が?判らないことが多すぎる。」


「なるほど、“疑惑の航路”と言う奴だな。」


「一つ二つの疑問ならある程度は看過できただろう。色々な事が関係していると判った今、見過ごせない状況に陥っていると言える。」


 サバーブの言葉にリランドが納得した様に頷いているとミカエルが閉ざしていた口を開いた。


「……やはり説明せねばならないか……。」


 自分を見ているサバーブやリランド、連宋の顔を見渡しながらミカエルは言った。


「自分の生まれはイラメカ帝国だ。」

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