宇宙ゲート その4
イラメカ軍の宇宙艦船の出現に海賊達が驚いている頃、宇宙ゲートの制御室では連宋がゲートを開く為の装置を起動させていた。
「動力伝達よし。これでゲートを開くことが出来る。でも、伝達の一部に障害があるからその部分のゲートには不具合が生じるね。」
不具合と聞いて作業を見ていたリランドが質問する。
「連宋、不具合とはどんな物だ?」
「わしも詳しくは判らないけどゲートの一部が不安定になる?的な?」
「不安定ね?……サバーブ判るか?」
動力の流れを観測していたサバーブが腕を組み少し首を傾げた。
「……そうだな。動力の不具合か……例えば『ゲートの空間が不安定なる』と行った事が考えられるかな?」
「空間が不安定?よくわからないが……。」
「不安定より波打つと行った方が正しいか?出力が上下する事で波打つ様に見える……そうか!だから均一であるはずの斥力フィールドがカーテンの様に見えたのか!」
サバーブは一人納得した様に頷いている。リランドは斥力フィールドと聞いて少し前のミカエルの疑問を思い出していた。
「あれか、ミカエルさんの疑問であった『何故カーテンの様に見えるのか?』の答えだな。」
「そうだ、リランド。遺跡の一部に不具合がある。どうやら動力の伝達が壊れているらしい。その為、ゲートを構成する装置にエネルギーが十分供給されない事で動力が不安定になっている様だ。」
「そうか……それで、その不具合の部分はどのくらいの大きさだ?」
「それはこれから判る。連宋、ゲートを開いてくれ。」
「了解!ゲート展開する。」
連宋の操作でゲートを構成する遺跡が起動する。遺跡内を光がめまぐるしく動き宇宙ゲートを展開させる空間では銀色の円盤が出現する。
「円盤が一部波打っているな。大きさ的には四分の一ぐらいか?」
やがて円盤からゆっくりと光が伸び円筒状のゲートが作り出された。
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突然の宇宙ゲートの出現にイラメカ軍の弩級宇宙戦艦プルーニアの艦橋内では戸惑いの声が上がっていた。周囲が響めく中、船長席に座る金髪碧眼の男は苛立ちを隠そうともしない。
「宇宙ゲートの出現か……ウォーデン大佐、話が違うのでは無いか?」
「ヴァナルガンド少将、報告書には『ゲートの出現日時は不確定である』との旨が記載されておりましたが?」
「ふん!無駄撃ちのウォーデンは言い訳だけは立派だな。そんな事だから同じ相手に負け続けるのだよ。」
「……。」
ウォーデンは何も言い返す事が出来なかった。事実として同じ相手、サバーブ・Q・デジトには敗北を続けていた。その結果が今の地位だ。
「まぁ良い。それよりも宇宙ゲートが出現した。ならば詳しく調査をする必要があるだろう。」
「はっ!では直ちに調査班を編成し……。」
すぐさま調査班の編成をしようとするウォーデンの言葉をヴァナルガンドは手を上げて止めた。
「それでは遅い。それに責任者となり得る者が行かなくてどうするかね?」
「ではどの様に?」
「君が行きたまえ。……おお、そうだ!この艦と接続しているロートル戦艦……おっと今は補給艦だったな。そのロートル補給艦はおぬしの部下であるロートル中佐が艦長であったな?丁度良い。」
「……了解しました。これより宇宙ゲートの調査に赴きます。」
敬礼をするとウォーデンは足早に艦橋を出て行った。その彼の背中に誰かを嘲笑する様な声が当たる。ウォーデンとヴァナルガンドは士官学校時代からお互い反目しあっていた。
そのウォーデンがヴァナルガンドの副官になっているのは、降格したウォーデンに今の自分を見せつける為だけに副官に任命した為である。
(……俗物が。)
ウォーデンは嘲笑を物ともせず足早にガングルトへ向かった。




